アカデミック・キャリアパスで研究者が切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
セス(Seth Gordin)のブログより:

批判するのはあまりにも容易いが、シニカルなだけでは物事は好転しない。
It's too easy to criticize hope And in the end, cynicism is a lousy strategy.



人の発言を、提案を、アイデアを、作品を批判するのは実は難しいことではありません。しかし、ただひたすら批判するだけでは相手はつぶれてしまいます。相手がつぶれても短期的には自分に被害はないでしょうが、長期的には廻り廻って自分にそのネガティビティーがぶりかかってくると私は考えています。ではポジティブになればよいのでしょうか。

私はポジティブよりもう半歩進んで、少しだけクリエイティブに”批判の後には、オルタナティブ(代わりの提案)を忘れずに”を心がけています。これは決して義務ではないですが、オルタナティブのない批判(=cynicism)は戦略的には良いとは言えません。

オルタナティブがないのなら批判も控える。批判したければ(時として批判すること自体が何となく楽しいのは認めますが)必死で相手のために(そして自分のために)オルタナティブを考えましょう。


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羊土社「実験医学」で執筆しています「プロフェッショナル根性論」関連のコラム「第6回 人生のプライオリティーを決める」がアップロードされました:

1979年のハーバードビジネススクールの学生のうち

・3%は将来の目標を紙に書いていた
・13%は将来の目標を持っていたが,紙には書いていなかった
・84%ははっきりとした目標を持っていなかった

さて10年後の彼ら/彼女らの収入を見てみると、続きはこちらで




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ともにプロジェクトに取り組んでいるMITでPh.D.をとった若手の博士の質問力の凄さ

質問せよ、その人が答えられなければ、別のエキスパートを紹介してもらえ。納得する答えにたどり着くまでこれを繰り返せ


について書きました。

彼女の質問するエネルギーは相変わらず強烈で、この木曜と金曜日は午後3時間以上、合計6時間以上マンツーマンで質問に答えることに費やしました。彼女の質問をガイドに私も問題の本質を考え直すためのよい機会を持てたと感じています。よい質問に答え続けることで自分の考えがまとまり(結晶化)し金曜日にオフィスを出るころには、自分の頭の中がかなりスッキリしました。

なかでも、キーとなった質問は「2年で5億円の研究費を与えられれば(金に糸目をつけなければ)、あなたは自分の研究領域で何を(what)どのように(how)研究するか」でした。ほとんどの研究は限られた予算で成果を出すように日々工夫していますが、逆に予算がないことを、最も重要な課題に取り組まない理由にしがちです。そして、そのうち「すべきこと」と「できること」をすり替えてしまうようになります。ですから、「5億円の研究費」で「すべきこと」をとことん考えることは、自分が本当に重要な問題に取り組んでいるのか、(または、本当に重要な問題の方向に向けて進んでいるのか)を改めて考える上で非常によい思考トレーニングになりました。予算の枠をはずして(しかし、期限の枠ははずさず)研究すべき対象と方法を再検討するトレーニングを定期的に持つことは、通常予算の限られたアカデミアの研究者には必要ではないでしょうか。

あともう一つ彼女の質問のスキルで優れたところは、私が質問に答え続けてそのうち、本質に迫る答え(結晶)にたどりついた時には、本当に喜びと感謝に満ちあふれた表情をすることです。頭の中がスッキリし、相手にも感謝されることこそ回答者の最大の贅沢です。

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AはAuthentic (Be Real) 、BはBrief (Be Simple) ....そして、 J はJapan(Be 20/20)



20/20とは”20枚のスライドを一枚20秒のペース”で6分40秒でまとめたコンサイスでクリスピーなパワーポイントプレゼンテーションのフォーマット. Astrid KleinとMark Dythamが2003年に東京で立ち上げたデザイナー/クリエーターのためのミーティング”Pecha Kucha (ペチャクチャ,)”で使われ始める。デザイナーはよくしゃべりプレゼンテーションが長くなりすぎる傾向があったため、20/20のフォーマットを取り入れたらしい。

ーPecha Kucha: Get to the PowerPoint in 20 Slidesー




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フューチャリスト・パネル:「次の30年のライフサイエンスにおける問題とは」と題したシンポジウムに参加してきました。フューチャリストとしてパネルに選ばれたのは:
   フィル・シャープ(MIT/ノーベル賞受賞者)
   ジム・コリンズ(ボストン大学)
   ドリュー・エンディ(MIT)
   アラン・クレン(テンポバイオ)

各フューチャリストの話したことで印象に残ったことは:
ーフィル・シャープー
次の30年はナノテクノロジーがライフサイエンスを牽引するプラットフォームになるだろう。しかし30年前に現在のライフサイエンスの姿を全く予想できなかったのと同じように、今から30年後のライフサイエンスの姿を予想することは出来ないだろう。

ージム・コリンズー
次の30年はバイオロジストとケミストの時代になる。今から30年後にはライフサイエンスの複雑性の、そのわずかしか我々が知り得ないことを我々は知るであろう。

ードリュー・エンディー
次の30年もバイオテクノロジーがライフサイエンスの中心であろう。バイオテクノロジーのオープンソース化が次の30年の課題。その取り組みのひとつが彼のBioBricks Foundation.

ーアラン・クレンー
ライフサイエンスのヘルスケアー(医療)への応用はゆっくりであるが次の30年間に確実に進むので、楽観的であると同時に、忍耐力が要求される。

以上、フューチャリスト・パネルの意見をまとめることは簡単ではありませんが、ライフサイエンスの次の30年とは:
・バイオロジー/エンジニアリング/ケミストリーの融合分野でイノベーションが起こる
・しかし、そのイノベーションが実際に役に立つようにパッケージされるまでには途方もない時間(〜20年)がかかるのでオプティミスチックであると同時に、その間サーバイブするために必要な資金を注入する法的なサポートが必要
・無味な競争によるテクノロジーの囲い込みを防ぐためにバイオテクノロジーのオープンソース化を真剣に検討する必要あり。

などが参考にすべきフューチャリストからのメッセージです。




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人間力を磨くことが、仕事では大切であるといわれて、日本では久しいようですが、「人間力」を英語でどう表現するかなかなかよい言葉が見つかりませんでした。

若干ニュアンスは違うかもしれませんが、Wharton Schoolで Leadership Programの教鞭をとるStewart D. Friedman教授の提唱する”Total Leadership”が”人間力”に相当するのではないかと思っています。この本は読んでいないのですが、アマゾンの紹介文から察するに

Now more than ever, your success as a leader isn't just about being a great business person. You've got to be a great person, performing well in all domains of your life -- your work, your home, your community, and your private self.


Total Leadershipは:
仕事(work)、家庭(home)、地域社会(community)、個人(private)
の4つの領域でのパフォーマンスを総合的にまとめあげたものだと考えられます。

(卵が先か、鶏が先かの問題にもなりますが)人間力(Total Leadership)は仕事/家庭/地域社会/個人の4つの分野でのWin-Winである"four-way wins"を実践することによって磨かれ、また人間力(Total Leadership)は"four-way wins"を達成できる能力であると定義することもできます。

このように人間力(Total Leadership)とは簡単に身に付くものではないし、生涯をとおして磨いていくたぐいのものであり、決して新人の採用基準に取り入れるようなものではありません(参照:「人間力」を磨けなどと言っている場合ではない:本田 由紀氏)。

以前、

「人間力」という言葉は”哲学用語”である。


と書きましたが、Total Leadershipは曲がりなりにも人間力を「仕事/家庭/地域社会/個人間の4分野間での"four-way wins"」を実践できる能力とアプローチ可能な形に落とし込んでいるところは評価できると思います。

ニューヨークタイムズに連載のキャリアに関するブログShifting CareersでFriedman教授のLeadership Programを受講した学生がTotal Leadershipの素晴らしさを語っています。

total leadership

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先日プロ研主催のパーティーに参加させていただき、多くの若い研究者の方々とキャリアについて意見を交換することができました。とくに印象的だったのがほとんどの方が”キャリアに攻め”の姿勢であったことです。

大前研一氏が、日本のビジネスパーソンは(そしておそらく研究者も)35歳まではどんどん成長してグローバルにみてもトップクラスであるが、35歳から50歳までの15年間で伸びか急速に鈍くなり、他の国のビジネスパーソンに抜かれてしまうという意味のことを書かれていたと記憶しています。ポストの少なさと流動性の低さのために、組織では35歳以降はほぼ全員が待ちの姿勢になり、大きな失敗をせずに辛抱して10から15年待つという厳しい持久戦を生き抜く”内向き”の能力が試されるため、どうしても”キャリアに対する守りの姿勢”が形成されてしまうとのこと。

”守り”自体は決して悪いことではありませんが、同時期を攻めの姿勢で過ごしてきた人との競争になれば、少なくとも精神的にはずいぶん不利になるのではないでしょうか。

学生のうちにしておくべきことーGeekなページー」の一番に大失敗があげられています。

背負っている物が少ないうちにする失敗は、その後の財産になります。


学生のときの失敗は35歳ぐらいのときには肥やしになっているというのは本当でしょうが、35歳から40歳ぐらいでの失敗は50の時の肥やしになっていると思います。50歳になったときに運良く失敗なしにやってこれたら、失敗が怖くてその後の人生を歩めなくなるかもしれません。

最後に私の座右の銘の一つチャーチルの言葉を引用させていただきます:

Success is the ability to go from one failure to another with no loss of enthusiasm.
                  ーSir Winston Churchillー



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いかにアイデアを思いつくかは、研究者やアーティストだけでなく、広い意味でクリエイティブな仕事についているものにとっては永遠の悩みです。研究のアイデアがいつか枯渇するのではないかとか、締め切りまでに新しい企画のアイデアが出てくるだろうかという不安や恐怖を感じたことのある人は多いのではないでしょうか。

この不安/恐怖と戦うために、私が信じていること/好きな考えは「ハードワークすれば必ずアイデアにたどりつける」という信念です。

例えば、コカコーラの元CEO Roberto Goizueta はコカコーラを全米1の企業にしたビジネスパーソンであると同時に、そのCreative Thinkingの実践者でもあったGoizueta氏の言葉”頭が熱くなり、汗をかくまで考え抜く”には共感します。

作家の夢枕獏さんにもインスパイヤーされました。夢枕獏さんは14本の連載をもち、年間原稿用紙1000枚近い原稿を書き、締め切りまでに新しにい原稿のアイデアを出さなければならないという”生みの苦しみ”がいつもある日常を生きているひとです。夢枕獏さんをもってしてもアイデアを簡単に出す方法なんてものはないようで、ラジオ版学問のすすめで聴いた彼のモットーは:

     ”脳が溶けるまで考えるー夢枕獏ー”



だそうです。

この生みの苦しみを恐れない耐性をつけることが、アイデアを生み出すためにすべき大切なトレーニングのように思います





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ボブウッドワードの「攻撃計画ーブッシュのイラク戦争(Plan of Attack)」より:

チェイニー(副大統領)は最悪のシナリオを検討する役を買って出た。公にはされなかったが、暗い面に目を向け、陰惨なおぞましいシナリオを考えた。....考えられないようなことを考える覚悟が必要だと...指揮官(ブッシュ大統領)に次ぐ地位の人間はそうでなければならない

"be prepared to think about the unthinkable. It was one way to be an effective second in command"



アタックリーダーにはオプティミズムが絶対に(少なくともある程度は)必要であると思います。しかし、ナンバー2というポジションはもしかするとオプティミズムとはなじまないものなのかもしれません。”考えられないようなことを考える覚悟”(be prepared to think about the unthinkable)を持つことと、オプティミズムとは両立しないのではないでしょうか。リーダーに代わってダークサイドに常に目を向け、リーダーがオプティミズムを失わないようにするのがナンバー2の重要な機能であると考えられます。

したがって、リーダーが引退したときに、ところてん式にナンバー2がリーダーの地位に就いたときにしばしばミスマッチが起こるのでしょう。



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日本の若者の理系離れがニューヨークタイムズのワールドビジネス欄で取り上げられています:

High-Tech Japanese, Running Out of Engineers
TOKYO ― Japan is running out of engineers.
By MARTIN FACKLER (May 17, 2008)

日本の若者は、自分父親の世代がやってきた”もの作り”のような地味な仕事よりも、アメリカ人がやるように金融や医学などの高収入を得られる職業や、芸術のように純粋にクリエイティブと追い求めるような選択をするようになってきた
young Japanese themselves, the young here are behaving more like Americans: choosing better-paying fields like finance and medicine, or more purely creative careers, like the arts, rather than following their salaryman fathers into the unglamorous world of manufacturing.



この記事では、理系離れとくにエンジニアの不足を問題にしていますが、政府や産業界の対策として以下の3つを行っていると分析しています:
1)エンジニアの仕事をより魅力的なものであると言うイメージ戦略(advertising campaigns intended to make engineering look sexy and cool
2)外国人の登用(import foreign workers)
3)オフショアー(sending jobs to where the engineers are, in Vietnam and India)

1)に関しては米国でも同様のキャンペーンやっていますが、成功しているかどうかは定かではありません

2)に関しては、日本では日本語という言葉の壁があるだげでなく、閉鎖的なシステム(職場環境、昇進、転職)が問題であるため、インドからの優秀なエンジニアはよりオープンなシステムのある米国を好む傾向があるのも当然と考えられます。

しかし、そのオープンなシステムを持つ米国でさえポスト9-11では海外からやってくる優秀なエンジニアやその候補生の減少に大きな危機感をもっています。

もちろん日本人エンジニアの育成は最大の課題ですが、それに加えて今後は国境を越えての優秀なエンジニアの米国との奪い合い合戦が、日本のものつくりの大きな鍵になることは必至でしょう。

追記:関連記事 5/20/2008
GoTheDistance「ハイテクの日本がエンジニアを枯渇させている



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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務. その後, Harvard 大学医学部への研究留学を期に, 非常に迷った末に医局を離れBoston で独立することに挑戦し, 現在ラボ運営に奮闘する.「実験医学」 に”プロフェッショナル根性論”を執筆中.

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