ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
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クラークの三法則(Clarke's Three Laws)とは、SF作家アーサー・C・クラークのよる3つの未来予測の法則(lows of prediction)(Wikipedia)

1. When a distinguished but elderly scientist states that something is possible, he is almost certainly right. When he states that something is impossible, he is very probably wrong. (高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。)

2. The only way of discovering the limits of the possible is to venture a little way past them into the impossible. (可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。)

3. Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic.(充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。)





今週のTwitterのまとめ


今週のオフ:ヤマザキマザック美術館
(名古屋)を訪問。

ヤマザキマザックのメセナ、ヤマザキマザック美術館はすばらしい。ルーブルを彷彿とさせる内装と、印象派以前のロココ時代の絵画・アールヌーボの家具に特化した展示が非常にユニーク。マザックは奥山KのK.O.7の部品を作った会社。



モネやルノワールの手法について学ぶ

印象派の「色彩分割」とは:.............”自然の色彩をキャンバス上に定着させる絵画技法。太陽の光を構成する七色のプリズムを重視し、キャンバスの上にその七色を混ぜずに描く。ルノワールが『陽光のなかの裸婦』における裸婦の肌の上に紫色を散らしたのは典型”



ガラス工芸家エミール・ガレのコレクションは圧巻


”偉大なる作家は、死が近づくほど作品の質が上がります”(ヤマザキマザック美術館のエミール・ガレの作品の解説の一節)




今週のビデオニュースのトピックは「鉢呂経産大臣」と「3・11後の漁業と水産資源」

鉢呂経産大臣辞任に関して知っておくべき事

当事者が初めて語った「放射能失言」の裏側!鉢呂経産大臣は原発村を揺るがす「原発エネルギー政策見直し人事」の発表寸前だった



3・11後の漁業と水産資源

勝川俊雄氏(三重大学・生物資源学部・准教授)ビデオニュースに出演。3.11後の漁業・水産資源について科学者として発言。Interesting & Remarkable !! ぜひ医学部・病院でも講演をして欲しい。


 


公共と権力:”公共性維持(例えば資源を守る)には国家権力の発動が必要ということが意外に理解されていない”(萱野稔人)




今週のネットで興味を引いた言葉

「臨床哲学」とは:”医療や介護、教育や貧困など、社会で生じているさまざまな問題を、専門家ではなく市民の<対話>のなかで考えていく活動。阪神大震災を機に鷲田清一が提唱。学説よりも問題発生の現場でのフィールドワークを重視。”




"世の中は経済と生命のトレードオフで動いている" (池田信夫)



今週のScience から:

米国の特許制度、大きな転換:“first to invent” から他の多くの先進国と同じ“first to file” へ



今週のNatureから:

大地震を予知できなかった伊科学者を起訴。Natureが詳しく解説。余震が続くなか大地震の噂が流れ”パニック”を誘発する危険があった、科学者は自分の発言がオフィシャルな安全宣言と見なされるとは考えていなかった、など状況は非常に複雑。



今週のN Engl J Medから:

ゲノム医療と社会との関わりについて医療者が知っておくべき事 N Engl J Med 2011; 365:1033:1) Consent and Confidentiality, 2) Return of Research Results, 3) Regulation of Genetic Tests, 4) Pharmacogenetics, 5) Electronic Medical Records,ゲノム医療と社会 医療者が知っておくべき事 NEJM 2011..6) Genetic Discrimination, 7) Law Enforcement, 8) Pros and Cons of Gene Patents




今週見た映画「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」(GyaOで無料放送中):

映画の話:推薦・静かな佳作。トミー・リー・ジョーンズの初監督作品”メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬





8月26日に京都大学大学院・医学研究科の広田先生、椛島先生、陣上先生らのお招きで、キャリアセミナーで講演しました。その様子は広田先生椛島先生のブログで報告いただいています。またYoutubeにもアップされるかもしれません。

聴衆の方々との事前の打ち合わせなどまったくなかったのですが、私が話したかった重要な論点に直結する非常に良い質問が多数発せられましたので、充実したディスカッションになったと感じています。やはりコミュニケーション力とは話し手と受け手の双方の力のかけ算なのですね。

京大でのトークに関する最近の自分(@BostonIDI)のツイート:

京大でのキャリア・トーク

京大のトークでは聴衆からの数々のいい質問のおかげで、”ブラックスワン”、”留学という大きな物語の終焉”、”Scientific vs Promotional drive”など多くの重要な論点を話すことができました。感謝!



京大スタバにて

京大トークのあとは広田グループ・椛島グループの方々とディナーへ。論文の書き方やモチベーションの保ち方等で意見交換。その後、有志6人でスタバで2次会。キャリアにおける「”意味”と”強度”」について語る。



研究者論壇

”研究者論壇”とは「研究するという営み」に関して広く自由に議論するアカデミックな場。専門、業績、職種に関係なく発言する社交の場。研究者の活躍する領域の地平線を拡大するために発言できる論客を育てる。



7/22テロは「寛容」というノルウェイ国民の重要な価値感に対する挑戦とも考えられます。ノルウェイ首相Jens Stoltenbergは、プレスカンフェレンスで、”テロによりノルウェイは深く傷ついたが、我々の価値観は揺らぐことはない、政治家としての信念はぶれない”というメッセージを発しています。

"the Norway we will see after will be more open, a more tolerant society than what we had before."



また、Liberal International Party President Hans van Baalenは首相の言葉を引用しています。

"paradise turned into a hell but Norway must remain an open and democratic society and must not turn into a fortress”



揺るがない価値観をはっきりと国民に示す。そして国民にそれを単なるパフォーマンスではなく、本気であると感じさせる力がリーダーには必要だと教えられました。




13年ぶりに医師として臨床に復帰させていただきました。ハーバードでPIとして自分の研究室を始めたときには、もう臨床には戻らないだろうとと考えていました。当時のブログには「医者をやめる」ことについて書いています。

医者をやめる(2)


私も含め多くの医師(元医師)にとっては医者である(あった)ということは、とてつもなく大きなアイデンティティーのよりどころである。医師をやめたいと口では言いつつもアイデンティティーを失う恐怖に打ち勝つことは簡単ではない。

また、社会人になって最初に確立した職業観(これもアイデンティティに関係するが)の刷り込みは非常に強い(洗脳に近いかもしれない)。リプログラミングは難しく、結局ほかのことをやっても最初の職業にもどってくることが往々にしてある。



医者をやめる:キャリア・チェンジとプロフェッショナルのサイコロジー

「変化」に対する恐怖を克服し、前に進むための「一時的な」逃げ道はよいでしょう。しかし、まず「腐っても鯛」という仮定がまちがっています。専門知識や技術が急速に変化している現在、医者のような技術専門職では患者様に満足してもらえるパフォーマンスを発揮するためには「腐っても鯛」ではなく、「腐ったらだめ」なのです。医者には戻れるでしょうが、自分も他人も納得させるプロのパフォーマーには戻れないでしょう



ようするに、「いったん医者をやめて長い時間が経てば、自分のエゴで臨床に戻りたいと思うことはあっても、一流にはなれないから、患者様に迷惑をかけるだけなので、そんな無謀なことは慎むように」と当時は考えていました。しかしながら、そのエゴを抑えきれず臨床に一時的であるとはゆえ復帰しました。それほどまでに医師とくに、麻酔科医・集中治療医は奥深く、魅力的な仕事なのです。Dr.コトー診療所のコトー先生の「(大学病院を離れ、ひとり離島の診療所に逃げるように移るほどのトラウマを受けても)不思議に医者をやめようとは一度も思わなかった」というセリフを忘れることができません。また、23年のブランクの後に研究者から臨床医に転職した笹井先生のエピソードにも勇気づけられました。

消化器外科で五年間のトレーニングを受けた後、臨床から離れ二十三年間、大学と製薬企業研究所で基礎研究をしてきました。企業の役職定年も近くなり、第二の人生を考えたとき、学生の頃抱いていた「僻地医療に携わりたい」という思いに駆られるようになりました



また臨床復帰に関してはやはり人間関係を重視しました。自分より年上だが能力の低い人に仕事を教えるのは、どこの世界でも楽しい仕事ではありません。臨床のブランクを埋めるために年下の先生に教えてもらわなければなりません。私はアメリカでの実力重視で、年齢に関係なくファースト・ネームで呼び合う関係になれてきたので、年下の先生に教えてもらうのは問題がないのですが、相手に気をつかわせて、ご迷惑がかかることを申し訳なく思います。やはり最後は医局にお世話になりました。私が研修医の時にオーベンとして指導していただいた先生が部長を務める病院に勤務させていただくようにしていただきました。医者の世界でも卒業年次は重要で、先輩・後輩の関係はずっとそのままです。何歳になっても、先輩には教えを請いやすいし、後輩には気をつかわず教えやすいものなのです。

しかし単にエゴだけで臨床に復帰したわけではありません。研究者としての戦略もあるのです。私はハーバードで優秀な医師であると同時に優秀な研究者やリーダーであるパワフルなPhysician/Scientistを多く見てきました。例えば私の所属していたボストン小児病院は常に全米で1位の小児病院の座を長い間キープしていますが、その組織を率いるCEOのDr. James Mandellは超多忙であるにもかかわらず、エフォートの数%は常に患者様に直接関わることに割いています。時間配分さえ適切であれば、臨床と研究やマネージメントは両立し、臨床から得られるモチベーションやインスピレーションは、研究に非常に強力なドライブ(推進力)を与えてくれると考えています。


6月末日までは大阪成人病センター麻酔科・副部長を専任させていただきましたが、7月より三重大学教授専任となりました。成人病センター退職に際し、麻酔科部長の谷上先生には素晴らしいメッセージを、麻酔科スタッフの皆様には送別会での美味しい夕食を、手術室看護師・スタッフの皆様からは美しい花束等を、ICUの看護師の方々からは温かい言葉をいただきました。ありがとうございました。



テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

町山さんの「もしドラ」の映画評論はいつもながら素晴らしい。彼は単に好き・嫌いや、感動した・つまらなかったなどの素人的な感想や印象論に終わることなく、映画の背景を解説し、内容を分析し、その構造を解説し、問題点(または素晴らしい点)を指摘し、時には代案を示してくれる。”アカデミックな映画の見方”を教えてくれる。

町山さんによれば「もしドラ」は前田敦子のためのアイドル映画であるというのが映画としての目的であるべきであったのに、その目的を果たしていないのが、この映画をダメにしている根本的な問題であるという。

またその他の問題点としては、まったく笑いがないことで、映画のなかで使われるギャグがまったく笑えないらしい。そこで町山さんによれば、ハリウッド映画で人を絶対に笑わすためのプロトコールは:
1)笑わせる部分の脚本を書く専門家がいて、笑わすシーンの脚本はその専門家が書きなおす
2)プロのコメディアンを起用する(出演させる)
3)そのコメディアンにアドリブでギャグを言わせるシーンをたくさん撮影し、そのうち本当に面白かったもののみを使用する。

笑いという生命現象が惹起されるメカニズムはおそらく完全にはわかっていなでしょう。そんな不確実性に立ち向かうには専門家の集団を擁することは必要条件ではあるが、十分ではないはず。偶然性が大きく影響する領域では、歩留まりは低く、やはり数を打たなければならないのでしょう。




ハーバードから三重大に移動するにあたり、最も大きな問題のひとつが、現地で雇用した米国人スタッフの行き先を見つけることでした。(先日は一人をのこしてすべての行き先が決まったと書きましたが、最後の一人もボストンの大手製薬会社のスタッフ研究者としてのポジションを得ることがでたという知らせを今日受け取りました。) ハーバードの知り合いのラボに紹介出来る例もありますが、アカデミアやコーポレートへのキャリア・アップを強く望む者もいます。その場合には個人的なネットワークを利用して、出来るだけ強力に推薦しますが、現在の米国の雇用は冷え込んでおり、簡単ではありませんでした。

アカデミアの場合は推薦状をメールで送ることが多いのですが(「研究者の英語術」の第5章「用紙2枚分の説得力のある強い推薦状を書く」など見ていただければ幸いです)、コーポレートの場合には、レターを書く代わりに、電話で人事担当者と20分程度直接話すことがほとんどでした。前もって電話の時間が指定できるので、英文で推薦する要点をまとめた”カンペ”を用意して、電話会議に挑みます。大抵は被推薦者の能力・性格・人となり・実績などに関してオープンエンドな質問をされます。具体例をあげて被推薦者の長所を強調するという点は推薦状を書く場合と同じですが、電話ではポジティブなトーンでゆっくりと大きな声で話すことが大切です。

キラー・クエスチョンは「被推薦者の短所は何か」です。うっかりのせられて、いろいろ語るのは御法度です(もし、被推薦者がジョブ・オファーされることを強く望むのなら)。「思い浮かばない」と言い張るのもおそらくありですが、「Too organized」(ちゃんとしすぎるところがある)など、短所と言いつつも、うまく長所をアピールするのがいいのではないでしょうか。


7月より三重大学大学院・医学系研究科・分子病態学講座の教授として赴任します。血管生物学の分野で多大な業績をあげてこられた鈴木宏治教授・副学長(現・鈴鹿医療科学大学・薬学部教授)の伝統ある研究室を引き継ぐことを、非常に光栄に感じています。私が赴任までの間、三重大でラボを運営してくれている助教の岡本先生と秘書の池田さんのすばらしい協力を得て、インパクトのあるいい仕事が日本でも出来ることを予感しています。

先日、ハーバードで盛大な送別会を開いていただき、研究所長のフレッド・アルト教授や恩師のティム・スプリンガー教授をはじめ、ハーバード大、フォーサイス研究所、マサチューセッツ工科大の多くの先生方に祝福していただきました。ハーバードのラボメンバーには多大な迷惑とストレスをかけましたが、多くの方々の援助をいただき、ラボは発展的に解消し、アカデミアまたはコーポレートへと一人を除き全員の行き先がきまりました。

また、大阪大学・眞下教授や大阪府立成人病センター・谷上部長らのご理解を得て、短期間ながら大阪府立成人病センター病院で、麻酔科医として13年ぶりに臨床に携わる機会を与えていただきました。ここでは臨床医として周術期患者の全身管理を担当することで、直に医療に貢献できる喜びを感じています。本当に麻酔科医でよかった。

これからは「ハーバード大学医学部留学・独立日記」の第二部として、「三重大医学部編」と題して、発信していきます。

4月12日の菅総理の記者会見を質疑応答を含めて約50分全部見ました。そして驚きました。どうして日本のリーダーであるはずの菅首相の言葉はこれほどまでに心に響かないのでしょう。その理由の一つが、本音で語っていないからではないでしょうか。嘘も方便であり、政治家は必ずしも公の場で本音を言う必要はありませんが、人の心をつかむためには少なくとも本音をかたっていると聴衆に思わさなければなりません。聴衆に本音を語っていると思わせる最も簡単な方法は、本当に本音で話すことです。

菅総理に対する国民の不信感がつのる要因のひとつに、福島原発に対する政府の対応、とくに情報公開の極端な不備があります。今回の災害のように今まで前例のない危機の前では、後から見ればその判断が間違っていたとか、こうするべきであったとか批判することはできますが、その時点では何が正しいのかわからないものです。もちろん政治家は結果責任をとわれますが、たとえ結果を出せなくても説明責任を果たせば、ある程度の理解は得られるはずです。たとえば「今まで福島原発の情報を十分に公開しなかったのは、首都圏でパニックが発生しそれによる2次被害を恐れたためである。結果的には国民と国際社会の不信感をつのらせる結果にはなってしまって申し訳ない。」と間違いを認めれば、もう少し国民の支持をえられるかもしれません。しかし、どうして間違いを認められないのでしょうか。それは菅総理の個人の性格や能力というよりも、政府として認める事ができない、認めるべきでないという方針なのかもしれません。

菅総理が日本をこの危機から救うことができるとすれば、官僚を上手く使うことが絶対条件になるでしょう。政治家が官僚を上手く使うための絶対条件とは、成蹊大学法学部教授の高安健将氏によれば、国民からの圧倒的な支持を受けていることです。国民からの大きな支持があるときのみ官僚は政治家の言うことをきくのです。支持率が下がり、政治家生命が短いとわかれば、官僚には政治家の指示に従うインセンティブはなくなります。

日本の危機を救うために官僚組織を動かすには、国民の支持というバックアップが必要です。そのために菅総理は原発・被災地視察というパフォーマンスにでたのでしょう。そして、いま原発・災害対策の政府の初動の間違いを認めることは支持率の低下につながり、ますます官僚組織を動かす事が困難になると考えているのではないでしょうか。

米国では過ちを認めれば、責任を取らなければなりません。したがって交通事故を起こしても「アイム・ソーリー」と言ってはならないと教えられます。米国では、重要な場面で謝っても何の特もないのです。しかし、日本では過ちを素直に認めて改心すれば、責任を取ることを強要せずに、もう一度チャンスを与えることを良しとする”空気”があるのではないでしょうか。

国民の側から見れば、今すぐに官僚組織に効率的に正しい仕事をさせ、この危機を乗り切るためにはリーダーを支持し、官僚を動かす力を与えるしかないはずです。支持率が下がれば下がるほど官僚組織は動かなくなり、日本はますます危機状態に陥るのです。国民の側にもリーダーを支持するインセンティブがあるはず。菅総理は守りに入るよりも、日本の”空気”に賭けて、開き直って今までの政府の対応の間違いを認め、もう一度チャンスを求めた方が支持率も上がり、この緊急時には双方にとってメリットがあるのではないでしょうか。




4月2日の小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)が、神保氏の電話インタビューで福島原発の展望についてコメントしています。前回のエントリーで書いたように、小出氏は1週間前のインタビューで2つの最悪のシナリオを提示していましたが、現在は「第2の最悪のシナリオよりは少しはましな状態」、すなはち「大きな爆発的事象はさけられるが、原発の安定化には、経済的にも人的にも高コストの冷却作業を、長期間にわたり必要とし、その間放射性物質が環境に垂れ流しになる」状態に近づきつつあると認識しています。福島原発は決して落ち着きつつあるのではなく、けんめいの冷却作業により何とか下り坂を転げ落ちるのをこらえている状態であるのです。この認識はIAEAが、ずっと「Overall at the Fukushima Daiichi plant, the situation remains very serious.」と評価していること一致します(IAEAが公表している福島原発1-6号炉の4月2日付けの評価スライドを下にしめします。)

また、炉心は2000度以上になり溶け出し、圧力容器、格納容器とも破損し、汚染した冷却は、だだ漏れ状態であると考えられます。4月2日のニューヨークタイムズも、米国政府や民間の「原子力鑑識(atomic forensics)」の粋を集めたシュミレーションの結果より、炉心は2,250度に達し、融解が始まっていると考えられると報じています。

大きな問題は、圧力容器や格納容器が破損している以上、閉鎖系で冷却水を循環させることは不可能であり、電源が復旧しても正常な冷却機能を期待することはできないということです。だだ漏れを承知で水を注入し、冷やし続けることしか方法はないのでしょう。この方法により大規模な水素爆発は阻止でき、大気中への大量の放射性物質の放散は避けられるかも知れませんが、その代償として、海水や地下水への汚染は継続されることになってしまいます。

小出氏が指摘するさらなる今後の問題は、この「最悪のシナリオよりは少しはましな状態」が、現場で働く十分な知識と技量をもった技術者の献身的な働きによってなんとか維持されており、将来的に被曝等の問題により、そのような上級の技術者を継続的に現場に派遣することが難しくなれば、この状態さえ維持できなくなる可能性があるということです。




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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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