アカデミック・キャリアパスで研究者が切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
30歳を超えて留学する理系研究者の成功のカギは、日本で培った人間力を生かすことであると「中年日本人男性研究者のためのサバイバル英語学習術」で書いた。人間力の基礎に重要なのが読書である。私見であるが、留学が2年以内なら紀伊国屋ニューヨークなどで購入した和書を読んでいれば問題ないが、3年以上になるようであれば洋書のノンフィクションを読みたい。300ページをこえるハードカバーを読み切るのは簡単ではないが、読み切った時の充実感は大きく、成功体験として確固とした自信につながる。

もちろん洋書一冊を数ヶ月かけて読んでもよいが、最初はジャンプスタートで素早く成功体験をして、ポジティブフィードバックのループを作ることができれば、大げさでなく人生がすばらしものに思えてくる。

ジャンプスタートの方法として私が使う方法は、まず Audible.com などでAudio Book (mp3 file)を購入 (ダウンロード) しiPodで聴き通し、全体の内容を把握した上で本を読む方法である。 Audio Bookであらすじをつかみめば、本はぐっと読みやすくなり、挫折する確率がかなり減るし、細かなニュアンスを読書で楽しむことができる。 私は洋書はノンフィクションしか読まないので、 Audio Bookでオチがわかって困ることはない。ほんとに良い本は一回聴いて、一回読んだぐらいで飽きることはない。

たいていの Audio Book は6〜10時間程度なので、通勤時間やスポーツジムの時間を利用すれば、1週間で聴き通せる。その後洋書に向かえば一日1〜2章づつ (20〜30ページ) ずつ読んで行けば2週間で読み切ることができるので、洋書月1冊は無理なく達成できる。金銭的にはAudio Book 代10〜20ドルが余分にかかるが、他の娯楽やAdult Educationに比べれば格段に経済的である。最初の数冊をこの方法で読み切ることができれば、後は Audio Bookと読書で異なったものを読み(聴き)、守備範囲をどんどん広げて行けばよい。

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留学を始めたときに、自分の研究分野にはまったく関係のないノンフィクションの洋書を一冊読み通すのを目標にしたが、それが始めて達成できたのは3年目であった。現在は audible.com も利用して月洋書3冊を目標にしている。何を読むかはランキングと書評を参考にする。Amazon.comの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という関連ある本を紹介するサービスも利用する。

ところで、LibraryThings では Book Suggester (この本を買った人はこんな本も買っています)に加えて UnSuggester (この本を買った人はこんな本は買いません) というおもしろいサービス (?) も提供している。

例えば、

人を動かす:デール カーネギー (著) (How to win friends and influence people by Dale Carnegie)
を購入した人には:
Suggester:7つの習慣:スティーブン・R. コヴィー(著) (The seven habits of highly effective people : restoring the character ethic by Stephen R. Covey)
UnSuggester :ゾンビサバイバル・ガイド (和訳未発売)(The zombie survival guide : complete protection from the living dead by Max Brooks)

また、

ヤバい経済学 悪ガキ教授が世の裏側を探検する:スティーヴン・レヴィット (著) (Freakonomics : a rogue economist explores the hidden side of everything by Steven D. Levitt)
を購入した人には
Suggester:ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか :マルコム グラッドウェル (著)(Blink : the power of thinking without thinking by Malcolm Gladwell )
UnSuggester :フルーツバスケット (12) (コミック): 高屋 奈月(著) (Fruits Basket, Vol. 12 by Natsuki Takaya)

タイトルを英語で入れなければならないので、洋書 (または英語に翻訳された本) にしか対応していないが、興味のあるひとはお試しあれ。

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アメリカ大統領のスピーチ暗記するというのは、昔からある正攻法の英語勉強法のひとつである。簡単なことではないが、覚えれることが出来れば何より自信がつくし、ほんの少し研究以外のことで教養がついたような気になり、米国に馴染んだ気になれる。これも重要な成功体験のひとつである。映画の会話を覚える方法もあるが、会話は相手がいないと成立しない欠点がある。その点スピーチは一人で黙々と練習するのに向いている。

スピーチのソースとしてはAmerican Rhetoric, Online Speech Bankがよい。
(http://www.americanrhetoric.com/speechbank.htm)
American Rhetoric, Online Speech Bank は米国歴代の大統領やキング牧師など著名人の有名なスピーチの音声ファイルとトランスクリプトを無料で手に入れることができる。 American Rhetoricのスピーチベスト10は:

1. Martin Luther King, Jr. "I Have A Dream"
2. John Fitzgerald Kennedy “Inaugural Address”
3. Franklin Delano Roosevelt “First Inaugural Address”
4. Franklin Delano Roosevelt “Pearl Harbor Address to the Nation”
5. Barbara Charline Jordan “1976 DNC Keynote Address”
6. Richard Milhous Nixon "Checkers"
7. Malcolm X "The Ballot or the Bullet"
8. Ronald Wilson Reagan “Shuttle ''Challenger'' Disaster Address
9. John Fitzgerald Kennedy “Houston Ministerial Association Speech10”
10. Lyndon Baines Johnson "We Shall Overcome"

この中でもわたしのおすすめは、8位のロナルド・レーガン大統領のスピーチである。私見ではあるが、レーガンは歴代の大統領のなかでもすばぬけてスピーチがうまい。レーガン大統領の言葉は力強く、それでいて温かい。彼のスピーチは聞くものを勇気づけ、癒してくれる。8位の “Shuttle ''Challenger'' Disaster Addressは、1986年に起きたスペースシャトル・チャレンジャーの空中爆発事故の際に、レーガン大統領が宇宙飛行士とその家族への追悼と、全国民に向けた宇宙開発への不退転の意志を表すメッセージである。スピーチは4分14秒と短いが珠玉である。 音声ファイルを聞きながらトランスクリプトを暗記する価値があると思う。わたしは、この“Shuttle ''Challenger'' Disaster Address とベルリンの壁のまえで「Mr. Gorbachev, open this gate. Mr. Gorbachev -- Mr. Gorbachev, tear down this wall! 」と演説した“Remarks at the Brandenburg Gate”の2つのレーガンスピーチiPODに入れて暗記した。

“Shuttle ''Challenger'' Disaster Address
(http://www.americanrhetoric.com/speeches/ronaldreaganchallenger.htm)
“Remarks at the Brandenburg Gate”
(http://www.americanrhetoric.com/speeches/ronaldreaganbrandenburggate.htm)

(注意)2/2と2/4のエントリーで書いたように「中年日本人男性研究者のためのサバイバル英語学習術:娯楽編」は余裕と時間のある人のための遊びであり、そうでない人は2/2のエントリーに書いたように「人間力を生かした研究室内での会話」をおすすめする。
(http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-11.html)

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今日は4つの研究室が参加するジョイント・ラボミーティングであった。ハーバード大学医学部のロングウッドキャンパスにあるCBR Instituteと Dana-Faber Cancer Instituteからの4つの研究室で「Integrins and Modular Surface Proteins in Vasculature」というProgram Project Grant (PPG, 日本のCOEに相当)をNIHのNHLBIよりもらっている。年間数億円単位の研究費を使用しているのでプレッシャーも大きく、お互いの進行状況を月に一度集まって、データ・プレゼンテーションをしてプロジェクトの方向性を検討し合っている。お互いによく知っているメンバーなので、遠慮はなく時として質問やコメントは辛辣になることもある。

データ・プレゼンテーションを含めたPublic Speakingは、人が恐怖を感じる最大の物のひとつであ。統計では「人前で話す恐怖」は、常に「死の恐怖」より上位にくるらしい。「人前で話す恐怖」の大きな原因のひとつが、「批判される恐怖」である。自分のデータを否定されたり、まったく返答できないような質問をされたらどうしようかと多くの人は心配するのではないか。

しかし、少し視点を変えてみると、正当な批判ほど貴重なものはない。その批判にもとづきデータを修正・追加することで論文やグラントが改善され、アクセプトされやすくなり得る。それなのにどうして批判を怖がるのであろうか。それは自尊心が傷つくからである。しかし、自分の論文が改善される機会と、自尊心とどちらが大切であろうか。もちろん、研究者にとって大切なのは論文の質の向上である。

プレゼンテーションのまえに自分に言い聞かしていることがある。もし唯一の悪影響が自尊心が傷つくことであるならば、批判を進んで受けよう。正当な批判は改善のための貴重な機会である。(と言いつつも、いつも批判で蜂の巣になったあとは、しばらく放心状態になる。)

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2月1日のエントリーで中年日本人研究者の英語勉強法は、人間力(知識・経験)を生かして、ひとに話を聞かせる「研究室での会話」にのみ集中すべきである。そして自分が英語で話すのを、ひとが一生懸命聞いてくれる成功体験を重ねることが「研究室での会話」上達の最良の方法であると書いた。(http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-date-20070202.html)その主張はかわらない。したがって、「中年研究者のためのサバイバル英語学習術: 娯楽編」は趣味程度のものであり、時間の余裕のある方、もしくはすでに成功体験を重ね精神的に余裕のある方のみ参考にしてもらいたい。

「娯楽編#1」のポイントは中年日本人研究者の大部分は英会話は苦手であるが、英文法は大学入試で結構鍛えられているので、英文法には強いというStrengthをいかし、成功体験をさらに重ねるというものである。
Grammar Girl


前置きはさておき、アメリカ人つまりネイティブスピカーの間で、英文法をやさしく解説したポドキャスト「Grammar Girl's Quick & Dirty Tips for Better Writing」が大人気である。(http://grammar.qdnow.com/) 現在までに130万回以上のダウンロードがあり、音楽やニュースを含めた全米のポドキャストのランクで常にベスト10入りしている。CNNもGrammar Girlのプロデューサーであり声の主でもあるフリーランスエディターMignon Fogartyを写真入りで取り上げている。(http://www.cnn.com/2007/TECH/internet/01/22/grammar.girl/index.html)
この「Grammar Girl's Quick......」は英文法を勉強した日本人にとっては意外に簡単な内容なのである。しかし、実はネイティブスピカーほど、意外に文法をわかっていないものなのである。これは日本人が日本語を話している時と同じで、母国語は体系的に分布を勉強していなくとも普通に話せのだ。(例:私は形容詞と形容動詞の違いが、とっさに思い出せない)

「Grammar Girl's Quick......」で取り上げられる英分法程度なら、中年日本人研究者でもネイティブスピーカーと同じ程度に理解でき、小さな成功体験を築くことができると思う。一回の放送が5分程度と短いこともあり聞きやすい。時間的・精神的に余裕のあるかたのみ試してください。

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在米9年目になるが、英語には苦労した。アメリカに3年もいれば、結構うまくなると日本では思っていたが、あまかったようだ。私見ではあるがハーバード大学医学部にくる外国人研究者が英語(会話)で苦労するリスクファクターは:
1)日本人
2)男性
3)30歳以上
4)立食パーティーが苦手だ
であり、私は不幸にもすべてにあてはまる。英語を読む・書く・聞く・話す力はすべて大事であり、それぞれがinter-connectしているので総合的に勉強しなくてはならないというのが正論であるが、話す力が最も重要であり、多くの日本人男性にはこれが最も難しい。英語を読むことは自分のペースでできるし、書くことはエディトリアルサービスを利用することもできる。しかし、話せないと人からの信頼を得て、コミュニティーの一員になることはまずできない。

英語の勉強法に関しては、留学していらっしゃる方々皆さん一家言あると思う。たとえば、映画やテレビドラマで日常会話になじむ、CNNニュースやNY Timesを聞き流す、英会話学校へ行く、異性の友人をつくるなど人それぞれいろいろなアプローチがあり、どんな方法で続ければなんらかの効果はあると思う。

しかし、日本人中年男性研究者は英語を勉強するために米国に来たのではない。自分のキャリア・アップにきたのであり、英語でコミュニケーションする能力の習得は、自己実現のための手段であり、悠長なことはいってられない。そこで、私の信じるサバイバル英語学習術を紹介する。

この方法のロジックはいったてシンプルで、目的は「研究室で仕事をするための英会話力」をつけるためには「研究室で英会話をする」しかないということである。映画やニュースを使って遠回りする必要はない。「研究室で英会話をする」方法は正攻法と裏技の二つがある。

正攻法は自分の人間力を使う方法である。われわれ日本人中年男性研究者は英語が苦手なことを除けば、数多くの知恵と人生経験をもっている。まわりがそれを認識し、その知識を必要とするならば、人は話かけてくるし、日本人中年男性研究者の話をじっと聞く。たとえば、普段の雑談ではとりつく島もなく、聞き役専門の日本人中年男性研究者であるが、彼が詳しい実験の方法については、みんなが彼に教えを請い、彼の下手な英語をだっまて聞く。わかるまで質問し、感謝して帰って行く。中年男性研究者、自分の思っていることをトランスクリプトなしに話し、それをまわりが聞いてくれることがどんなに気持ちいいことかを体験する(日本にいて、当然のように日本語を話しているときにはわからなっかた)。この成功体験を繰り返すのが、日本人中年男性研究者が「研究室で仕事をするための英会話力」を磨くための最短の、そしてたぶん最良の方法である。

私は、テクニシャンを雇ってから、英語が上達した。私のテクニシャンはカッレジを出てすぐの社会人1年目であったので、私がすべて教えなければならなかった。どんなにゆっくり話しても彼女は私の話をメモを取りながら聞いてくれた(わたしがスーパーバイザーであるので当然ではあるが)。これは私には一つの成功体験である。

人間力に自信がないという人には裏技がある。英語を話す機会が少ない原因は、周りが自分より英語がうまく、つねに聞き役にまわってしまうことである。聞いているだけでは絶対にうまくならない。会話はキャッチボールなので聞くのと同じ以上に話さないとコミュニケーションの力はつかない。では、どうすればよいか。それは自分より英語の下手なひとをみつけて、その人にとにかく英語で話しまくることである。ひどいと思うかもしれないが、相手にもけっしてマイナスにはなっていない。(共にプラスであるが、たくさんしゃべったほうにより高いトレーニング効果がある。)

英語学習においても1/26 (http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-4.html)のエントリーで話したStrengths-based アプローチが有効である。英語という弱点を補強しても決してネイティブの足元にもおよばない。しかし、日本人中年男性研究者は知識・経験ではハーバードの大学院生にあっさりと負けたりはしない。知識・経験というStrengthsの上に立てば、英語が完璧でなくとも、周りのひとは喜んで(または辛抱して)あなたの話を聞く、そしてあなたのキャリアはアップする:Mission Completed!!

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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務. その後, Harvard 大学医学部への研究留学を期に, 非常に迷った末に医局を離れBoston で独立することに挑戦し, 現在ラボ運営に奮闘する.「実験医学」 に”プロフェッショナル根性論”を執筆. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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