ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
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トップ科学ジャーナルのひとつネイチャー(Nature)を出版しているNature Publishing Groupが革命的な動きに発展するかもしれないエクスペリメンテーション(Experimentation)をはじめた。ピアーレビュー(Peer Revieiw; 同じ領域の研究者による査読)なしに投稿された論文を(ほぼ)すべて掲載する新しい科学雑誌Nature Precedingsを立ち上げたのだ。

ピアーレビューは議論はあるが(arguably)現在実質上最も信頼できる論文の審査法であると考えられている。3大トップジャーナル(Nature誌、Science誌、Cell誌)を含むほとんどの科学雑誌や、政府(NIH、NSF)への研究費申請書の審査も、基本的にピアーレビューで審査される。

しかし、ピアーレビューにも問題がある。

問題1:時間がかかる  審査が厳密である分時間がかかることである。ほとんどの投稿論文がピアーレビューであげられた批判コメントや追加実験の要求に応える必要があるため、論文投稿から掲載までは通常数ヶ月から数年(複数のジャーナルにレジェクトされた場合、または数回のrevisonを要求された場合)を要する。

問題2:捏造など不正を完全には見抜けない  最近のいくつかの例からもわかるように、いくら数人(通常2~5人)の専門家が厳しく査読しても完全には不正を見抜けない。また、競争相手など利害関係にある研究者の査読は過度のバイアスがかかる場合がある(一人のレビュアーの「この論文は何ら大きな問題はないが、General interest に欠ける」というバイアスのかかったコメントが、その論文の運命を左右し得る)。

従来のピアーレビューの問題点を解決すべく、Nature Precedingsは投稿された論文はキュレーターとよばれるエディトリアルスタッフのスクリーニングをパスすれば、投稿から24時間程度で掲載されるようだ。

そして、その論文の評価は”みんなの意見”(The Wisdom of Crowds)に委ねられる。つまり、基本的には誰でもコメントでき、よいと思った論文には投票できるvote機能がある。査読はネット上で”みんな”が行うのだ。

私は知らなかったが、このような試みは物理学の領域では長らくarXiv.orgのように、最新の知識をコミュニティーに提供する方法として使用されてきたそうだ。

まさにThe Wisdom of Crowdsがサイエンスの分野で試される時がきた。Nature Precedingsの今後の動向が楽しみだ。


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カギは参加者数
このコンセプトで先行する「Plos One」 http://www.plosone.org/home.action では、結局のところ参加するCrowdsの数が少なくて、あまり有意義な展開にはなっていないみたいですね。
Natureの旗印がインセンティブとして働けばいいのですが・・・
【2007/06/19 Tue】 URL // Seita #45zTKBr6 [ 編集 ]
PLoS one
Seitaさん、
コメントありがとうございます。

PLoS oneが確かに先行していますね。ただ、PLoS oneはエディトリアルボードメンバーによる”Peer-reviewジャーナル”と自ら位置づけているようですね。

いずれにせよ”参加するCrowdsの数”が重要であることに間違いはないでしょう。
【2007/06/21 Thu】 URL // Motomu #- [ 編集 ]
査読システムの欺瞞
島岡様、はじめまして。ピアーレビューの問題点をもうひとつ指摘してよろしいでしょうか。

それは、ピアーレビュー自体が代筆である可能性です。①労働条件が過酷でこれ以上睡眠時間を減らすことができない、②臨床の実力が認められて大学に残っているだけだから研究能力が低く、他人の論文の質をうまく判断できない、という勤務医は数多くいるはずです。医学者の研究モラルは異様に低いので(例えば、博士号をとったら指導教官に金を渡すといった慣行は医学部以外ではありえないことです)、製薬会社のMRから恩をきせる形で、「うちがやっておきますから。1週間後でいいですか」と言われたら、「じゃあお願いしますね」という勤務医は数多くいるんじゃないでしょうか。
【2011/07/16 Sat】 URL // Yappy #BoHl/gr6 [ 編集 ]

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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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