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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
イタリアでの学会Brescia Anesthesia Intensive Care Neuroscienceでは参加者のほとんどは現役の医師である。パーティーの席で「自分は10年臨床をやっていたが、100%基礎研究に打ち込んでほぼ10年になる」というと、当然「臨床を恋しく思わないか?」「臨床と基礎研究のどちらを取るか」の話しになった。テーブルには臨床を20年やったあと、英国の有名医学雑誌ランセットのエディターをロンドンで2年した後、臨床が恋しくなりまたイタリアでの臨床に戻った麻酔科医もいた。

私も含め多くの医師(元医師)にとっては医者である(あった)ということは、とてつもなく大きなアイデンティティーのよりどころである。医師をやめたいと口では言いつつもアイデンティティーを失う恐怖に打ち勝つことは簡単ではない。

また、社会人になって最初に確立した職業観(これもアイデンティティに関係するが)の刷り込みは非常に強い(洗脳に近いかもしれない)。リプログラミングは難しく、結局ほかのことをやっても最初の職業にもどってくることが往々にしてある。

多くのひとにとって最も困難なことは「変化」することであるので、Outperformしているひとには自分を数年おきにRe-inventできる人が多いのではないか。強烈なpersistencyで成功しているひともいるが、これは自然にdecayしマイナスに変化している自分をプラスにre-inventした結果、まったく変化していないように見える(=persistency)ともとらえられる。

さて、「臨床」か「基礎」の問題についではもちろん正しい答えなどなく個人の価値観の問題であるが、私は「臨床/基礎」は単純化すれば単なるトピックの違いで、「Outperformできるのであればどちらでもよい」と思う。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

臨床か研究か
いつも楽しく読ませて頂いております。
述べておられる主旨に対してとんちんかんなコメントでなければ良いのですが。
さて、僕は元神経内科医です。僕の場合、我々の領域はあまりにも治らない病気が多すぎて、それが研究へ向かう原動力となりました。
しかし、最近自分が患者となって思ったことは、もし家庭医として再度トレーニング後、臨床医として働くなら、数百~千人規模の患者さんの助けになることは間違いないということです。
しかし、研究者の場合どうでしょうか?ほとんどの場合、何万人を助けるような薬剤の開発、病態の解明をする研究者がどれだけいるかということです。ほとんど不可能な人たちばかりで、結局0の確率が圧倒的に高いと思うのです。
僕がつい悲観的になってしまう根拠は、1990年代のアルツハイマー病研究の失敗(あえて、あの巨大な研究費で、この成果?という意味で、失敗ではないかと考えています)からの教訓です。あれだけ、nature,science,cellにたくさんの成果が発表されたにもかかわらず、劇的な進歩があったでしょうか?
つまり、僕ははじめは、科学を生かして、医学の発展に尽くそうかと思っていましたが、それは結局研究の動機の一部に押しとどめて冷静に扱い、やはり、研究自体が好きなため、研究をしているんだという原点の方を重要視するように変化してきたように思います。
MD.PhDだから、基礎科学と基礎医学をつなぐ研究は得意に違いありません。だけど、若い人たちに、何百万人を救う可能性があるので、研究者になりなさいという意見は少しフェアではないのではないかと考えるようになってきました。あまりにも夢がなさすぎるかもしれませんが、幹細胞、再生医療バブルなどもそういった、夢は見させるけれども、当の患者さんにとって見たら、一気に病気が治るかもしれないみたいな成果の発表に対して、結局オオカミ少年になりかねない成果ばかりのような気がしてしまうのです。
とりとめもないコメントで申し訳ありませんでした。またご意見お願いいたします。
【2007/05/12 Sat】 URL // トロント在住ポスドク #- [ 編集 ]

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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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