ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
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梅田望夫氏がブログ「My Life Between Silicon Valley and Japan」と「シリコンバレーからの手紙」で脳科学者・茂木健一郎氏の「世界中の情報をすべて整理し尽くすブルドーザーのようなグーグル敵手法」に”我々科学者の「ロマンティックな研究態度」が脅(おびや)かされているんだ、いやもう敗れてしまったのではないか”という懸念を紹介している。

グーグルの達成は、科学者が「知性の研究」に対してどういう態度を取るべきかについてシリアスな問題提起をしている、と茂木は言う。十年以上前、当該分野の研究者たちは、「人間の知能」と比べ遥かに単純なことしかできない「コンピュータの人工知能」の研究の先に「人間の知能」が生まれるようなことはなかろうと、そういう研究方向に見切りをつけた。でもグーグルは「とにかくやれることは全部やる」という姿勢で、人間の脳とはぜんぜん違うシンプルな原理に基づきながら、安価になったコンピュータ資源を無尽蔵に並べ、「世界中の情報をすべて整理し尽くす」というゴールを掲げ、既にあれだけのものを作り上げてしまった。
 我々科学者の「ロマンティックな研究態度」が脅(おびや)かされているんだ、いやもう敗れてしまったのではないか。「トンボのように飛ぶ」にはどうしたらいいかを科学者は未だに解明できないが、遥か昔に飛行機を発明し、人類は飛行機会を得た。それと同じことが今「知性の研究」の分野で起きつつあるんだ。お前たち、ロマンティックな研究をいくらやっていても「グーグル的なもの」に負けるぞ、時代はもう変わったんじゃないのか。茂木は若い研究者・学生たちをこうアジった。「ロマンティックな研究態度」とは、物事の原理を理論的に美しく解明したいと考える立場のことである。


ノーベル賞受賞者のFrancois Jacob氏が15年以上前に関西セミナーハウスで講演をされたときに、「Human Genome Projectのブルドーザー敵手法のサイエンスに対する脅威」についてコメントしたのを思い出した。Jacob氏は少数の科学者からなるグループがFace-to-Faceで議論しながら研究を進める従来の方法を「Night Science」(夜遅くコーヒーを飲みながらの仲間との議論から多くの新しいアイデアが生まれるので)、「Human Genome Projectに代表されるブルドーザー敵手法」を「Day Science」と呼び、Day Scienceがセンセーションを引き起こすことはあっても、Night Scienceは常に科学のコアな部分であり、絶滅することはないであろうと予測されていた。

医学・生物学分野での研究(Biomedical Research)に限れば、アメリカ政府は大型のプロジェクト”Day Science”も継続するが、基本的に1つの研究室単位の”Night Science”をできるだけ多くサポートしたいと考えているようだ。これはNIAIDのPorgram OfficerがSite Visitで当研究所に視察に来たときに聞いた話である。イラク戦争などの支出のためにNIHの科学研究費が削られているという現実が根底にはあると思われるが、NIAIDは例えば5つの研究室がチームを組んで申請するPPG(日本のCOEに相当)に年間2億5千万円使うよりも、5つの独立したR01で5千万円X5=2億5千万円をファンドする方を好むポリシーであるらしい。

WikinomicsではLinuxやWikipediaなどオープンソースとマス・コラボレーションのインパクをとりあげ、医学・生物学分野ではHuman Genome Projectを例にあげている。確かにHuman Genome Project ”Day Science”の業績と影響は大きいが、ノーベル賞クラスのイノベーションは個人レベルの”Night Science”で現在でも起こっている。茂木健一郎氏の「ロマンティック問題は」あえて直接議論しないが、個人レベルでのイノベーションが社会にインパクトを与え、社会から評価される限り、科学者個人はEmpowermentを実感し続けるであろと私は楽観的に考えている。

PS: アリタリア航空でボストンからミラノへ、そこからプロペラ機でピサへ、ピサから列車を乗り継ぎBarga-Gallicano駅に到着。駅からタクシーでゴードンカンファレンスの会場Cioccoへ。現在イタリアより更新しています。

ピサの斜塔
PISA 1


列車を乗り継ぎBarga-Gallicano駅に到着
Barga-Gallicanp 1

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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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