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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
febeatplay作家エリザベス ギルバート(Elizabeth Gilbert)は、マンハッタンに住む30代女性が離婚とミッドエイジクライシスを契機に、自分探し(Self Discovery)のために世界中を旅する自叙伝的小説「Eat, Pray, Love」の500万部を超えるセールスで、一躍世界の注目を浴びました。本来ならベストセラー作家としての成功を手中にした幸福にひたるはずでしたが、実際には「次の作品を書くことができるのか?」、「クリエイティビティーが枯渇してしまったのではないか?」という恐怖感に苛まれたという体験をTED talkで語っています。

程度の違いはあると思いますが、「自分はもうクリエイティビティー/プロダクティビティーのピークを過ぎてしまったのではないか」とか「もうこれ以上アイデアは出てこなくなってしまうのではないだろうか」という漠然とした恐怖や不安は多くの人が経験する感覚ではないでしょうか。そして、この恐怖/不安とどうつきあったらよいのでしょうか。

たとえば「アイデアはどこにあるか:Tim Hurson著 Think Better」でふれたように、ひたすら自分を信じて、精進し、自分の内面と向き合うというのも一つのアプローチでしょう。

”クリエイティブな素晴らしいアイデアは後半1/3に出てくる”クリエイティブな素晴らしいアイデアは(もしあるとすれば)頭の奥底に眠っている。しかし、普段はほかの簡単に思いつくような「陳腐なアイデア」で頭がいっぱいで、「素晴らしいアイデア」の出てくる余地がない。したがって、すべきことは「素晴らしいアイデア」を積極的に考え出すことではなく、「素晴らしいアイデア」が自然に出てこられるように多くの「陳腐なアイデア」を頭から追い出すことである。ブレインストーミングで出てくる最初の2/3のアイデアを紙(頭の外)に書くのは、後半1/3のアイデアを導き出すスペースを頭の中に作り出すための仕掛けである。



エリザベス ギルバートの場合は、長い間の苦悩の末、”クリエイティビティーは自分の中ではなく、外側にある”という、彼女曰く”前ルネサンス的”な考え方の境地に至りました。クリエイティビティーと言うのはある日突然”神の声”を聞くように天から降ってくるように自分にもたらされるとエリザベス ギルバートは表現します。自分は最大限の努力はするが、その努力が最終的にクリエイティビティーとして実を結ぶかどうかは、自分ではなく自分の外側にある”天”次第である。このような「人事を尽くして、天命を待つ」という姿勢をつらぬくことにより、彼女はクリエイティビティーが枯渇するという恐怖と折り合いをつけました。

神秘主義に陥らないように注意しなければなりませんが、ギルバートのアプローチは”アイデアが煮詰まってしまったら内ではなく外に目を向けるべし”と解釈することができると思います。自分の外に目を向けるという点では、佐藤可士和氏の「答えは対象のなかにすでにある」という方法論で、ひたすら対象に向き合うというアプローチとも共通する部分が多いにあると思います。

エリザベス ギルバートの話す英語はわかりやすいので、英語の勉強も兼ねて、彼女のTEDでのトークを楽しんでください(人事を尽くしても、天命が聞こえなかったらどうしたらいいのかという問いに対する彼女なりの答えもトークの最後に容易されています)。


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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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