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「就職は目的意識ないと」 首相、ハローワークで若者に(朝日新聞)

麻生首相がハローワーク渋谷を視察した際、求職に訪れた男性に「何がやりたいか目的意識をはっきり出すようにしないと、就職というのは難しい」と声をかけた。..... この首相のアドバイスに対して民主党の鳩山由紀夫幹事長は「誠に的はずれだ」と批判し、「なかなか自分の思い通りの仕事が見つからない状況だからこそハローワークで探そうとしている。『しっかりやれよ』と言葉をかければ、彼らもやる気が出る」とたしなめた。



麻生首相を弁護する義理はありませんが、この記事の引用部分からは、首相は「目的意識をはっきり出せ」と言っているのであり、「目的意識をはっきり持て」とは言っていません。実はこの違いは就職において、けっこう重要なことを含んでいるのです。「目的意識をはっきり出すせ」とは面接でのプレセンテーションスキルの問題ですが、「目的意識をはっきり持て」は人としてのあり方の問題です。

就職まえに働くことに関して「はっきりした問題意識を持っている」ひとや、「はっきりした問題意識を持っていると思っているひと(錯覚しているひとを含む)」はおそらく幸福な少数派です。普通は「はっきりした問題意識」は実際に仕事をしているうちに生まれてくるものなのです。しかし、就職の場での面接官もそんなことはある程度承知でしょうし、企業のニーズと価値観にフレキシブルに対応できる人材を欲しているにもかかわらず、(多くの場合)「はっきりした問題意識」を要求します。

おそらくこれは、ひとの潜在能力(どれだけ新しい環境で仕事ができるか)を予測できる単純で特異的なパラメーターなど存在しないため、「はっきりした問題意識」をプレゼンテーション/ディスカッションできるスキルのような(人材開発会社が好みそうな)パラメーターを代用しているに過ぎないという側面があると思います。

ここにはダブルスタンダードが自ずと存在するのです。ですから、「何がやりたいかというはっきりした目的意識」が十分に形成されていなくても、「人としてのあり方に」深刻に悩んだりする必要はないわけで、そんなものは働いて経験を重ねれば生まれてくる人には、生まれてくるのです。(もし働くまえに問題意識がなかったら悩んでもしかたがない。問題意識をもつためには働くしかない)しかし、働くための前段階である面接では「何がやりたいかというはっきりした目的意識」をプレゼンテーション/ディスカッションするスキルで評価されてしまうので、「(とりあえず準備した)何がやりたいかというはっきりした目的意識」をプレゼンテーション/ディスカッションするスキルを磨く必要が出てくる。(ちなみに、プレゼンテーションではなく、プレゼンテーション/ディスカッションとしたのは、「どんな目的意識」を持っているかというプレゼンテーションよりも、そのプレゼンをきっかけに面接官との間でどんなやり取りがかわされるかというディスカッションが、より大きく人物評価に関わると考えられるからです。)

というわけで、首相の「目的意識をはっきり出すせ」というアドバイスは、競争率の激しい面接を切り抜けるためには適切なアドバイスであり、「持て」ではなく「出せ」と言ったところは、「しっかりやれよ」とだけ言う鳩山由紀夫幹事長よりも、「誠に的を射ている」のです。

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テーマ:創造と表現 - ジャンル:学問・文化・芸術

trivial possibility
勘ぐるに、麻生首相は、「持て」という感じ漢字を「だせ」と読み間違えたのではないでしょうか? 「目的意識を出す」などというような気の利いた言い回しを知っているはずはないと思うのですが。
【2008/12/22 Mon】 URL // 深読みでは? #pn.FNN1k [ 編集 ]
難しいところですが
どちらのニュアンスであったとしても、それを適切に伝えられなかったことが(政治家として)問題であるのかもしれません。
分かりやすい表現を使うというのもプレゼンテーションの腕の見せ所ではないでしょうか。
【2008/12/23 Tue】 URL // Rockhopper #WBfaHuv6 [ 編集 ]
問題意識を持つことは目的意識を持つことの延長線上にあるものですか?
ちょっと使い分けが分かりづらいです。
【2008/12/24 Wed】 URL // ついに射ましたね #- [ 編集 ]

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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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