ブリュッセルで開催されたECの主催する”
トランスレーショナルリサーチに関する重点研究分野”のシンポジウムに参加してきました。レセプションやディナーの席でEC諸国のPIやシニアサイエンティストの方々とアカデミアやグラントのシステムについて意見を交換する機会がありましたので、その中で気に付いたことをメモとして記しておきます。
まず、大まかに言って、研究費は研究者が自らの研究テーマで応募する各国政府からのものと、ECが特定のテーマのプログラム(例えば今回の
RIGHTはRNA干渉を利用した疾患治療に向けた研究)に沿って横断的に巨額の資金を配分するものがあるそうです。
ECのプログラムプロジェクトは国境を超えた共同研究になるり、研究申請書の内容だけでなく、むしろ、トラックレコード(論文)や人とのネットワークが重要になるそうです。ECのプログラムプロジェクトは額が大きく、採択されれば研究を一気に進めることができる大きな可能性を持ちます。しかし、多くのプログラムプロジェクトは更新されることなく、評価に関わりなく数年で終わる打ち上げ花火的な性格のものが多いのが大きな問題。このRIGHTも成果を上げているにも関わらず4年で終了し、次のプログラムのテーマは全く別の、神経変成疾患の病態解明と治療に関するものになることが決定しています。
多くの研究者が研究費の少なさと、人材の流動性の低さを問題視していました。米国のシステムと違い、PIとスタッフのサラリーは大学/研究所から支払われるので、グラントが切れても失業する可能性は低いようで、研究者は基本的には安定した職業ですが、その分自由度や流動性は低くなるようです。しかし、これらを問題視しつつも、その中で自分のできることをやって行くという姿勢であり、米国のような過度の競争的研究資金導入による研究者のキャリアの極端な流動化や潜在的不安定化には懸念を示すひとが多いようです。
私の印象では、ECはある程度流動性は高めつつも安定した独自のある程度安定したシステムを目指しており、それに満足できない研究者は米国に行って過度の競争にさらされれば良いという、米国とは同化しない、相補的な研究環境を目指しているように感じられました。
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