ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
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ジャーナルインパクトファクターの研究者の業績を判断する上での妥当性についてはいろいろなところで議論されてきたと思いますが、インパクトファクター値の信頼性については意外に盲信している場合が多いのではないでしょうか。しかし、Journal of Cell Biologyのエディトリアルはインパクトファクター値の信頼性に疑問を投げかけています。以下にインパクトファクターについて知っておくべき10の真実を:
1)インパクトファクターは次のように計算されています(Wikipediaより):

インパクトファクターはWeb of Scienceの収録雑誌の3年分のデータを用いて計算される。たとえばある雑誌の2004年のインパクトファクターは2002年と2003年の論文数、2004年のその雑誌の被引用回数から次のように求める。

A = 対象の雑誌が2002に掲載した論文数
B = 対象の雑誌が2003年に掲載した論文数
C = 対象の雑誌が2002年・2003年に掲載した論文が、2004年に引用された延べ回数
C÷(A+B) = 2004年のインパクトファクター



2)分子(C)はすべての種類の論文を含みますが、分母(A+B)はarticles(原著論文)とreview articles(総説)のみを含めfront matter(例:Nature の"News and Views" など)は含まない

3)articles、review articles、front matterの区別はThomson Scientificのスタッフの手仕事で行われている。この点が問題になる可能性がある。

4)たとえば、ジャーナル側はThomson Scientificと交渉してインパクトファクターが高くなるように分母の部分に手を加える余地がある。例えばCurrent Biology のインパクトファクターは2002年から2003年にかけて7.0から11.91に跳ね上がったが、このときトータルの論文数は増加しているにもかかわらず分母は1032(2002年)から634(2003年)に減少している。

5)Retractされた論文の引用数もカウントされている。例えばWoo Suk Hwangの2004年と2005年にScienceに掲載されたstem cell論文もカウントされている。

6)インパクトファクターは平均値であるので著しく高頻度で引用される一部の論文による影響が大きい。例えばNatureでは2005年の総引用数の89%は上位25%の論文からきている(Editorial. 2005. Not-so-deep impact. Research assessment rests too heavily on the inflated status of the impact factor. Nature. 435:1003–1004)
  <参考>パレートの法則/80-20ルール(例:売上の80%は、全商品の20%が作る)

7)Thomson Scientificはインパクトファクターの計算に使用された論文引用のデータをジャーナル出版社に有償で提供している。Journal of Cell Biology、Journal of Experimental Medicine, Journal of General Physiologyを出版しているRockefeller University Pressがどの分野/トピックべつの論文引用を調べるためにThomson Scientificよりデータを購入して自らでインパクトファクターを計算してみたところ、Thomson Scientificの公表する値とは異なることが判明した。

8)Rockefeller University Pressが購入したデータには多くの間違いが含まれていた:
   #分母に本来除かれるべきfront matterが多数含まれていた
   #引用数はひどい場合には19%の違いがあった

9)Thomson Scientificのデータベースは”Research Group”と”Journal Citation Reports (JCR) ”の2種類あり、後者がインパクトファクター計算に使用されているにもかかわらず、Rockefeller University Pressに販売されたものは前者であったことが後に判明します。

10)Journal Citation Reports (JCR)データベースはThomson Scientificのスタッフにより間違いが修正されていることになっているが、現在のところ販売されていない。


研究者も研究者を評価する側もインパクトファクターが客観的にそして正確に計算された値であることを前提にしている場合が多いと思います。しかし、インパクトファクターという概念を研究者の客観的評価に使うことを議論する以前に、インパクトファクター値がはたして毎年正確そして公正に計算されているから疑ってかからなくてはならないでしょう。

”引用数はひどい場合には19%の違いがある”事実を考慮すると、少なくともインパクトファクター1~2点程度の差というのは”ぶれ”の範囲内でしょう。

追記(2/3)
関連エントリー「インパクトファクター


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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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