ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
娘はハーバード大学の免疫学の教授、父は骨を診るハーバード大学医学部整形外科教授、この二人のコラボレーションによる文字どおりの骨免疫学Osteoimmunology」の仕事を紹介したい。

ハーバード大学教授で免疫学の第一人者のひとり Laurie H. Glimcher博士が、本日CBR Institute で行った講演 "Schnurri-3: a Regulator of both Bone cells and B cells"についてお話したい。この仕事は昨年サイエンス誌に掲載された素晴らしいブレイク・スルーであるが、今回はこの研究にまつわる非常に面白いエピソードも聞くことができた。

研究の要旨は、「免疫系の細胞に発現している細胞内分子(アダプタータンパク) Schnurri-3の機能を調べるために、ノックアウトマウスを作ったところ、免疫系の欠損はたいしたことはなかっが、予想に反して骨に大きな異常(骨量の著しい増加)が認められた。詳細な検討の結果、Schnurri-3は(E3 ubiquitin ligase WWP1 と Runx2を介して)骨を作る骨芽細胞を負に制御している事がわかった。この発見は骨粗相症などの新しい治療法の開発に役立つ可能性がある。」というものである。

エピソードであるが、最初はこのノックアウトマウスはこれと言った異常を示さず、研究を担当する大学院生は苦労していた。免疫系の細胞を調べるためには骨髄から細胞を採取するが、彼はなかなかうまく骨髄細胞を採取できずにいた。彼は自分のやり方が悪いと思っていたようだが、それを聞いた Laurie H.Glimcher博士に骨の異常の可能性がひらめいた。すぐに整形外科医でハーバード大学医学部教授の父 Melvin J. Glimcher博士に相談し、ノックアウトマウスのレントゲン写真をとったところ、異常に亢進した骨の石灰化・骨量の増加とそれによる骨髄腔の著しい減少がみられた(骨髄細胞が採取できないわけである)。これが一連のブレイク・スルーの経緯である。

Laurie H. Glimcher博士は成功の鍵は「自分の研究領域がなんであれ、そのノックアウトマウスの最も顕著な異常所見に焦点を当てること」と言った。これは研究者の側からでなくノックアウトマウスから見たStrength-basedアプローチである。

参考:
Jones DC, Wein MN, Oukka M, Hofstaetter JG, Glimcher MJ, Glimcher LH. Regulation of adult bone mass by the zinc finger adapter protein Schnurri-3. Science. 2006 May 26;312(5777):1223-7. (http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/312/5777/1223) (Click Free Abstract)

Laurie H. Glimcher (http://www.hsph.harvard.edu/faculty/LaurieGlimcher.html)

Melvin J. Glimcher (http://www.childrenshospital.org/cfapps/research/data_admin/Site176/mainpageS176P0.html)

FC2ブログランキングに一票を!

ブログ ランキング
スポンサーサイト

テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術


管理者にだけ表示を許可する
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/tb.php/18-71a2a159
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
// HOME // 
Powered By FC2ブログ. copyright © 2005 ハーバード大学医学部留学・独立日記 第二部 三重大学医学部編 all rights reserved.
プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
月別アーカイブ
ブログ内検索

RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。