ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
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The Synaptic Leapはバイオメディカル領域でのオープンソースリサーチであり、科学者のWisdom of Crowd(集団の叡智)を集めて新しい治療法の開発をめざしている。ミッションステートメントは:

バイオメディカルサイエンスを分断することはできない (indivisible) 。サイエンスコミュニティーを物理的・精神的な壁で分断することは自然の摂理に反する非生産的行為である。オンライン・コラボレーションがこのギャップを埋め、分断された情報を集約する自然な方法である。これにより従来の方法では解決不可能であった問題に新しい解決の糸口を見つけることができるであろう。The Synaptic Leapのミッションは科学者をに夢を実現する力を与える (empower)ことである。

Biomedical science is indivisible. The physical and psychological barriers that divide scientific communities are ultimately artificial and counterproductive. We see online collaboration as a natural way to bridge these gaps and pool information that is currently too fragmented for anyone to use. An open, collaborative research community will find new ways to do science, answering questions that current institutions find difficult or impossible. The Synaptic Leap’s mission is to empower scientists to make the dream a reality.


The Synaptic Leapのストラテジーは非常に興味深い:
The Synaptic Leapが標的にするのはマラリアなどの主として熱帯の貧困層が罹患する病気である。その理由は
1)金銭的利益が全く見込めないため、金銭的利益をインセンティブとする従来のビジネスモデルは成立不可能である。
2)しかし、逆に金銭的利益インセンティブが成立しえないということは、オープンソースモデルに最適である。なぜなら、情報を囲い込む(秘密にする)利益・不利益も成立しがたいので。

現在はマラリア(Malaria)、住血吸虫症(Schistosomiasis)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、結核(Tuberculosis)に関するプロジェクトが進行中であり、オンラインでできるリサーチ・コラボレーションが基本であるので、データベースの構築や、モデリング、データマイニングが中心となっている。

さて肝心のThe Synaptic Leapのパフォーマンス(生産性)であるが、現在までのところは世の中に大きなインパクトを与えるレベルにはいたっていない。同サイトのブログポスト「If you build it, will they come?」でも指摘されているように:


.....残念ながらThe Synaptic Leapは力を失っているように思える....
(I must admit that I am somewhat discouraged that TSL has been around for over a year, had some rather high powered publicity at kickoff, but seems to be languishing.)




問題点としては:
1)「マラリアなどには金銭的利益インセンティブが成立しえないので、情報を隠す必要がない」は短期的には正しいかもしれないが、長期的には正しくないかもしれない。もともとマラリア用に開発された薬や技術でも、思いもしなかった他の疾患や、さらには幅広いバイオの研究に応用でききる可能性があり、簡単にはIP (Intellectual Property)を放棄しない。
2)バイオメディカルとくに治療法開発ではウエットな実験系がクリティカルに重要であり、オンラインでできることには限界がある。等々

先駆者としてまた、バイオメディカル領域でのオープンソースリサーチの問題点を提示した点でThe Synaptic Leapの存在意義は非常に大きい。まだ、始まって1年半程度なのでこれからに期待したいが、The Synaptic Leapは今大きな転換期にあることは間違いない。


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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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