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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
米国ではふつう研究者はそのキャリアで、少なくとも2回は研究テーマを変更することを必要とされる。1回目は博士号を取ったのち、研究室を移り新しい指導者のもとで、新しいテーマでポスドクをはじめ自分の知識と技術を広める。2回目は独立して研究室を始める時であり、今まで指導者のもとで行ってきた仕事に別れを告げ、自分の新しいテーマを探求する。
とくに、ポスドクからAssistant Professorとして独立して研究室を運営するときの変化は非常に大きい。米国では教官が退官してその研究室をスタッフごと引き継ぐということはない。空っぽの研究室とオフィスそして2年分の給料と研究費を与えられ、3年目からは外部資金を取ってきて経済的にも独立することを要求される。テーマに自由はなっかたが、給料は保証されていたポスドクとの大きな変化である。

変化に対する恐怖感は、挑戦する勇気を奪ってしまう研究者に取っての最大の敵である。私自身、ハーバードでの独立のチャンスを目の前にしたとき、成功への期待よりも、失敗への恐怖が大きく胃が痛くて眠れない日が続いた。

いったん人生・仕事・生活が安定してしまうと、その状態(Status Quo)を変えることには、常に恐怖と痛みが伴う。Alan Deutschmanは著書「Change Or Die」で、高脂血症と肥満のため狭心症でバイパス手術を繰り返し、食生活を改善しなければ、次の発作で確実に死に至るという死の恐怖を目の前にしても、多くの患者は「変化の恐怖と痛み」を受け入れられず、食生活を改善できないと述べている。

研究者がアカデミックな環境で生き残っていくためには、「変化」をmanageする能力が、サイエンスの能力と同様に重要であると思う。私自信も「変化」に対する苦痛・恐怖と日々格闘しているので、今後も「変化」と研究者のキャリアについて取り上げていきたい。
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テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術


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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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