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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
MITでPh.D.をとった若手の博士といっしょにあるプロジェクトにたずさわっているのですが、彼女の質問がとにかくすごいのです。MITで理論的思考法をきちんと勉強しているせいもあるのでしょうが、本質をつくような質問をどんどんしてくるのです。痛いところばかりをついてくるので、数時間のミーティングで私はへとへとになりました。しかし、こちらも何が問題点であるかをあらためて認識することができ、彼女の質問から得るものが数多くありました。

しかし、彼女の本当にすごいところは、私が完全には答えられない質問に関しては、ちゃんと答えられるエキスパートを紹介せよと私に要求するところです。もちろんミーティングの下準備として彼女はかなりの文献や資料を読み込んでいます(フェーズ1)。そしてその中から問題点を洗い出し、質問するのです(フェーズ2)。フェーズ1では知識の習得と目的としますが、フェーズ2では質問することにより人からの”知恵”の習得をめざしているのです。よって私が答えられない場合にはもう一度論文の中の”知識”に戻るのではなく、とにかく人の中の”知恵”を探求するのです

大前研一氏の著書の中で「質問せよ、そうすれば道は開かれる」というようなニュアンスの表現があったかと思いますが、MITの彼女のモットーは;

質問せよ、その人が答えられなければ、別のエキスパートを紹介してもらえ。納得する答えにたどり着くまでこれを繰り返せ



です。

フェーズ1での論文や資料からの情報収集には限界があるので(知恵にたどりつくことが困難)、フェーズ1がある程度なされたと感じたら、あとは積極的に人に質問をぶつけていくというアプローチは効率的で生産的であり、MIT的であるなと関心しました。


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Public Broadcasting Service (PBS)のCMより:

"Be More Empowered"





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顧客からMy Starbucks Ideaに寄せられたスターバックスをより良くするためのアイデアのトップスリーは

1:Punch card system(ポイントカード、ポイントがたまればフリードリング)”現在検討中”
2:Free Wi-Fi(フリーワイヤレスインターネット)”Coming soon"
3:Birthday Brew(誕生日にはフリードリンクを)"......."

My Starbucks Ideaは顧客が意見を交換しディスカッションできるフォーラムになっていて、スターバックスらしいクリーンでフレンドリーなイメージをかもしだしています。スターバックスでしばしば物書きをする私としては、Free Wi-Fiが是非欲しいと思っていました。(ハーバード大医学部ボストン小児病院前にあるスターバックスは大学のフリーワイヤレスインターネットにアクセスできるのですが...)

関連エントリー:思索の場所2:スターバックスでの勉強はどうしてはかどるか


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テーマ:デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術

もし余命1ヶ月と宣告されたとしたら、最後の大学の講義で何を私は語るでしょうか....

これは実際に膵臓がんで余命1ヶ月と宣告されたカーネギーメロン大の若手教授がOPRAH (TV show)で行った講義の記録です。彼の力強さに感銘を受けます。



追記(4/8)
コメント欄にs-yamaneさんよりRandy Pausch博士に関するリソースへのリンク情報をいただきました。

追記(07/26/2008)
2008年7月25日早朝、Randy Pausch博士永眠される。

National Public Radio: Remembering Randy Pausch's Last Lecture

pausch

Randolph Frederick Pausch (October 23, 1960 – July 25, 2008)


世界を代表するチェリスト(チェロの演奏家)の一人であるヨーヨー・マ (Yo-Yo Ma)がNational Public Radioのラジオプログラム”This I Believe”で披露した5分間のエッセイ”A Musician of Many Cultures”より:


I grew up in three cultures: I was born in Paris, my parents were from China and I was brought up mostly in America. When I was young, this was very confusing: everyone said that their culture was best, but I knew they couldn't all be right. I felt that there was an expectation that I would choose to be Chinese or French or American. For many years I bounced among the three, trying on each but never being wholly comfortable. I hoped I wouldn't have to choose, but I didn't know what that meant and how exactly to "not choose."



中国人の両親のもと、フランスで生まれ、アメリカで育ったヨーヨー・マは3つの国の異なった文化に翻弄され、自分のルートを見つけることに苦労します(自分探し)。

.

... I realized that I didn't need to choose one culture to the exclusion of another, but instead I could choose from all three. The values I selected would become part of who I was, but no one culture needed to win. I could honor the cultural depth and longevity of my Chinese heritage, while feeling just as passionate about the deep artistic traditions of the French and the American commitment to opportunity and the future.



しかし、長い精神的な葛藤ののち、どれか一つを選ぶでもなく、どれも選ばないでもない、第3の選択”すべてを選ぶ”ことを受け入れます:中国の悠久の歴史、フランスの芸術に対する情熱と伝統、アメリカの将来の可能性に賭ける自由な精神という3種類の異なった価値観を自分の中で上手くブレンドさせるに至ります。

もちろん3つの価値観を自分のなかで融合させるということに折り合いが付けられたのは、漠然と自分探しをしていたからではなく、音楽に打ち込み、音楽を通した人とのふれあいを通しての彼の精神的な成熟があったからでしょう。

ヨーヨー・マは自分の経験をふまえ、自分探し(the process of incorporating what we learn with who we are and who we seek to become)はすべてのひとが経験しなければならない”禊ぎ”だと言います。自分探しというプロセスの結果は予想不可能(unpredictable)ですが、重要なことは逆説的ですが、自分自身で探し出せるようなものではなく、家族、友人、知人、や文化/国家といった周りの環境すべてによって形づくられるものなのです(Shaped by our families, neighborhoods, cultures and countries)。

This I believeは英語の勉強にもなります。ヨーヨー・マが自分で読みあけるエッセイはこちら


This I believeと直接関係はありませんが、ヨーヨー・マの演奏するBach´s Cello Suite No. 1を貼付けておきます。




関連エントリー:「This I believe:英語の勉強と心の栄養を」
<http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-46.html>



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サンケイ新聞【断 中村文則】過剰なサービスより

どうして飲食店では、客の食べ終えたばかりの食器をすぐ下げようとするのだろう。
   正直、気分が悪くなる。居酒屋なら次々料理が来るのでわかるが、ファミレスなどですぐ下げようとするのはなぜだろう。しかも大抵の店員が、こちらの会話が弾んでいることにも構わずに、会話に割り込んで「お下げしてもよろしいですか?」と聞いてくる。大体、下げて欲しければ自分達で店員を呼ぶ。余計なお節介(せっかい)だし、はっきり言って邪魔である。まるで「帰れ」と言われているようで、混(こ)んでいたならわかるが、空いている店だと意味がわからない。「あなたの店にはそんなに食器が足りないのか」と思ってしまう。


おそらく問題は”過剰な”サービスではなく、”柔軟性のない画一的な”サービスでしょう。皿を早くさげることはお客に気持ちよく食べてもらうことを意図しているので悪いことではありません。問題は「食べ終えた皿はできるだけすぐに下げる」というマニュアルに杓子定規に従うあまり、客の会話を遮って皿をさげたことでしょう。個々の状況に応じて(察して)マニュアルを現場では柔軟に運用できる接客のスキルが欲しいところですが、そういうスキルの教育はコストがかかり、またそんなスキルをもった人材はレアーでしょう。ですから、ファミレスにそうゆうサービスを期待するのが適切かどうかという別の問題も出てくるでしょう。

なぜ米国のレストランでは皿を早く片付けるのか?」で書きましたが、米国での研究では皿を早くさげることは、客の食欲亢進につながり、より多くのお金をおとすことになるので、もしチップの制度があるのなら、この店員の行為は経済的インセンティブに従っていると考えられます。ただし、客が不快な思いをしているのなら、多くのチップは期待できませんが....



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サイエンスコミュニケーターには科学ジャーナリストとして新聞社や科学雑誌出版社で働いた経験が重要となるのではないかと「どんなサイエンス・コミュニケーターが必要か」で書きました。ニューヨークタイムズの科学欄、Nature誌やScience誌でのエディトリアルスタッフの書いた記事はサイエンスコミュニケーションのお手本となるようなものが数多くありますので、これらのオフィスでの仕事が経験できるのなら素晴らしいでしょう。

NatureNewsで偶然みつけたのですが、Nature誌のヨーロッパ(ミュンヘン)オフィスがインターンシップを募集しています。

ーWork experienceー
The European office of Nature in Munich offers regular 6-12 week work-experience periods (on a voluntary basis) to those wishing to learn about, and participate in, the day to day operation of a science news office. Also suitable for students studying science journalism or science communication. German language an advantage but not a necessity. Contact Quirin Schiermeier.



日本から応募するのは大変勇気がいるでしょうが、今後米国や日本でもこのような機会があるのではないでしょうか。

話は変わりますが、Nature姉妹誌がハーバードでアソシエイトエディター候補者をポスドク/院生の中から探していたことがありましたが、そのときはレジメとともに自分の好きなサイエンスの最近のトピックのついてのNature New風の記事を書いて添付することになっていました。サイエンスコミュニケーターを目指す方は原著論文だけでなく、Nature New等にも普段から目を通しておく必要があると思われます。


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で4分20秒間自動的に前進します(BGMつき)。

テーマ:アート・デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術

スポーツの世界では薬剤を用いた運動能力の不正な改善つまりドーピングが問題となり、ドーピング検査がメジャーな大会ではルーティンに行われるようになってしばらくたちます。そして今研究者の世界でのドーピング:Brain Enhancement: 薬を使って集中力や生産性を高めることが問題になり始めています。

ニューヨークタイムズの記事「Brain Enhancement Is Wrong, Right?」によれば、ケンブリッジ大学の調査結果によると複数の研究者がナルコレプシーなどの治療に使われているサイコスティミュラントAdderallや覚醒促進剤Provigilを生産性を高めるために使用したことがあるそうです。(Provigil(Modafinil)のアスリートへの使用は現ドーピングとみなされています。)

もちろんアカデミックドーピングにより、研究者の健康が蝕ばまれることが最大の問題ですが、ニューヨークタイムズの同記事でFrancis Fukuyamaの著書「Our Posthuman Future: Consequences of the Biotechnology Revolution」での意見にあるように、

薬剤によるBrain Enhancementが広がれば、普通の能力(脳力)という基準が(不正に/不自然に)上げられてしまう危険があるのです。
......increased use of such drugs could raise the standard of what is considered “normal” performance....



グラントや原稿の締め切り前夜に、とびっきり濃いコーヒーや朝鮮人参エキスの入った栄養ドリンクを飲んで集中力を高めもうひと頑張りという経験がありますが、一歩間違えばドーピングの誘惑にかられる危険が自分にはないとは言い切れません....

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(Credit: BENEDICT CAREY)

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Nature Medicineのエディターブログ Spoonful of Medicineによれば、クリントン大統領時代に国務長官をつとめたマドレーン・オールブライト (Madeline Albright) 氏(写真左)は最近のインタビューで、「新国務長官の仕事はますます複雑になっていく。なぜなら、温暖化、エネルギー、医療など関する政策決定には高度のサイエンス・リテラシーが要求されるからだ」と述べています。

今やサイエンス・リテラシーは政権担当に必要な能力のひとつに数えられるのです。

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(写真クレジット:odwyerpr blog

テーマ:歴史上の人物 - ジャンル:学問・文化・芸術

IDEA*IDEAで「歴史上の重要なスピーチがMP3でまとめられているサイト」が紹介されています。

Historical Sounds in MP3 Format - The Free Information Society


そのなかで私の一番のおおすすめはレーガン大統領の「Ronald Reagan - Brandenburg Gate Speech」です。ベルリンの壁崩壊前の1987年6月12日に西ドイツのBrandenburg Gateでのスピーチです。中盤でのさびの部分:

General Secretary Gorbachev,
if you seek peace,
if you seek prosperity for the Soviet Union and Eastern Europe,
if you seek liberalization:
Come here to this gate.

Mr. Gorbachev, open this gate.

Mr. Gorbachev -- Mr. Gorbachev, tear down this wall!



は、いつまでも心に残っています。

また、スピーチの最後に近い部分での、壁にスプレーでペイントされた青年のメッセージを引用する部分:

As I looked out a moment ago from the Reichstag, that embodiment of German unity, I noticed words crudely spray-painted upon the wall, perhaps by a young Berliner (quote):

"This wall will fall. Beliefs become reality."

Yes, across Europe, this wall will fall, for it cannot withstand faith; it cannot withstand truth. The wall cannot withstand freedom.



は、まさにそのあとすぐに起こる歴史の大きな変換点”壁の崩壊”の到来を予見していました。20年以上前のスピーチですが、いま聞き直す価値ありです。

このスピーチのトランスクリプトは、www.americanrhetoric.comから。



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ブレインストーミングとは:

新しいアイデアを生み出す仕掛け:「素晴らしいアイデア」が自然に出てこられるように多くの「陳腐なアイデア」を頭から追い出すことである。
      ーアイデアはどこにあるか:Tim Hurson著 Think Better


ブレインストーミングのやり方を上手くまとめたパワーポイントプレゼンテーションを見つけたので紹介します(ダウンロード可)。

ポイントは4つで(41枚目のスライドにあるように):

1)質より量 (Go for the quantity, not quality)

2)批判厳禁 (Absolutely no criticism)

3)おかしなアイデア大歓迎 (Weird ideas are welcome)

4)他人のアイデアをもじってみよ (Transform other's idea)


このスライドショーを見れば10分でとりあえず入門レベルの知識は身に付くのではないでしょうか....





現在の大学での試験やレポートの多くは、与えられた問題に対して学生が回答を作り、それを教官が評価するという一方向性のものです。しかし、研究者コミュニティーの根底にあるものはPeer-Reviewのシステムであり、現行の一方向性の教育では次の2つの能力を育成することが難しいと考えられます。

1)自分の回答/レポートに対する教官の批判やコメントに対して正しくレスポンスする能力。
批判やコメントは試験やレポートの評価では問題点を見つけ出し減点するための手段として使われますが、Peer-Reviewではそのレポートを改善する指針を示すことが意図されているはずです。試験やレポートにはそのシステム上revision(レポートを訂正して再評価を受ける)がありませんが、実際の研究の世界では論文投稿もグラント申請も(多くは)revisionを適切に行うことで、作品の価値が高まり最終的にアクセプトされるものです。したがって(1)まず、批判やコメントがどの程度正当であるか見極め、(2)正当でない部分については反証し、(3)正当な部分については受け入れて、自分の回答/作品を改善するという一連の能力を育成する必要があります。

2)自分が教官になったつもりで他人の回答/レポートを批判する能力。
他人の仕事を適切に評価する事はPeer-Reviewのシステムの基礎ですが、簡単ではありません。まず、評価基準を理解しなければなりません。また、遠慮して批判する事をおそれたり、逆に極端に高いスタンダードを掲げて非現実的なレベルの改善の要求は何ら改善をもたらしません。正当でありつつも、できるだけ建設的な批判の仕方を学ぶ必要があります。

このPeer-Reviewに関連した能力を磨く試みが、今週のサイエンス誌のエデュケーションフォーラムでとりあげられています:

INQUIRY LEARNING: Integrating Content Detail and Critical Reasoning by Peer Review
Classroom lectures by experts in combination with journal clubs and Web-based discussion forums help graduate students develop critical reasoning skills.

1)Each of the four journal clubs was led by two faculty members.
2)Recent primary publications relevant to lectures in the previous section were selected by the faculty and posted on the Web.
3)Students were required to answer several questions related to the papers before the discussion forum.
4)During the classroom session, the teachers called on the students to explain the figures and tables in the papers.
5)This was followed by an open discussion of the papers and the posted questions.
6)The teachers then provided individual written critiques of students' written answers, and students revised their answers to respond to the critiques.
7)The revised answers were posted on the Web with anonymity maintained.
The students then posted brief comments on two of their peers' answers using their student number as an identifier.
8)For each of the four discussion forums each student received grades for the original answer, the revised answer, and the peer critiques.



講義に関連した原著論文の抄読会(journal clubs)に関して予習→レポートの作成→教室でのディスカッション→教官のコメント→レポート作成(revision)→訂正したレポートのスレッド型Web掲示板へのアップロード→他人のレポートに対するコメント

スレッド型Web掲示板を用いた生徒間のピアレビューは、わたしもHarvard Extension Schoolに生徒として通っていたときに利用した事があり、生徒のクラス参加を高める良いシステムだと感じました。



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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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