5号館のつぶやきさんでの「ポスドク問題」に関する熱い議論を拝見させていただいいた。そして
大隅さんが参加される「学術会議のシンポジウムでポスドクが講演するというのはどうでしょう」に関して少しでもお役に立てればと思い意見を付け加えさせていただく。
まず、
6/10のエントリーで取り上げたNature Medicine2007年6月号のエディトリアルで
Only a small minority of today's PhD graduates can realistically expect long-term careers in university research
と述べられているように、
日本の「労働問題としてのポスドク問題」は、理系のキャリアパス全体にそして世界的に広がりつつある(グローバリゼーションに関連した)構造的問題の一部であるととらえるべきである。この問題が構造的問題であることは山田昌弘氏の「希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く」のなかの記述とも一致する。したがってこれを個人の自己責任論として取り扱うことは適切ではない。「
ポスドク問題:5号館のつぶやきでの議論(7/29追記)」での提言
米国に比べ企業の中途採用の難しい日本では、理系大学のPh.D./Postdocに対する就職支援機能を高めることは非常に重要である。個々の研究室レベルではなく大学のカリキュラムとして体系的に行うできであると思う。個々の研究室では「研究の方法」を全体のカリキュラムでは「仕事の方法」をトレーニングし、「事務」で就職支援をする。
は、大学が現実的にできるおそらく最大限のことであり、連帯を強め、また雇用のミスマッチを防ぐという点では十分に意義があるが、構造的な問題にはやはり政府主導で対応するしかないと思う。米国のまねをすることには賛否両論あると思うが、
先日のエントリーで書いたNational Academy of Science(NAS)の提言「Rising Above The Gathering Storm」が法案America COMPETESとなり可決され430億ドルの予算がついたこの事例から学ばない手はないと思う。
NASは米国のScience&Technologyの競争力を弱めつつある構造的問題を早くから認識しており、これを解決するには簡単に言えば2つのことをするしかないと言い切っている。その2つとは:
科学者のために良い職を創出する
Creating high-quality jobs for Americans
エネルギー問題を解決する
Clean, affordable, and reliable energy
そのために、4つの分野(初等中等教育、研究、高等教育、経済)で計20の重要な提言を行っている(
詳細はこちらを)。
そしてこれらに注ぐ430億ドルはすべて「科学者に新しい職を与え」「エネルギー問題を解決」し、中長期的に米国がグローバルな覇権を握るためのものである。「グローバルな覇権」→「エネルギー問題 or
X」→「より多くの優れた科学者のポジション」
Xは人類の健康や食料問題や地殻変動でも文脈は通るであろう。節操がないかもしれないが、「
いかにメッセージを伝えるか」で書いたように「ポスドクの雇用問題」だけを全面に出していては
「ニート」問題の戦略的失敗のように、自己責任問題として片付けられてしまう。「ポスドク」に「”ニート”」のようなstigmaを負わせないためにも、戦略的に上の3段論法を提言したい。
補足:米国のNASの3段論法が成功した背景には数年に及ぶ綿密で勢力的なロビー活動があったことを忘れてはならない。
追記(8/20)
科学政策ニュースクリップで榎木さんがブロガーの意見を「政府対応重視」と「自己責任重視」にうまく分類してまとめておられます。
[ポスドク問題]自己責任と政策のハザマに(科学政策ニュースクリップ)