アカデミック・キャリアパスで研究者が切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
エントリー「Googleの戦略をまねするのは簡単ではない」でコメントさせていただいた5号館のつぶやき「20%ルールって 【追記:関連記事】」に100以上のコメントが寄せられポスドクの雇用問題等で白熱した議論が続いている。議論の焦点は広義での当事者:「ポスドク」「研究室主催者(教授)」「大学」「企業」「政府」の誰にどういうようにアプローチするかである。

ポスドク本人の自己責任や企業の雇用方針を攻める意見も一理あるが、私は「ハードSFと戦争と物理学と化学と医学」のinoue0さんのコメントに賛同する。

....(ポスドクの雇用が困難な [or 困難になる可能性の高い] 現状は)求職者個人の努力ではどうにもならなくて、大学による採用支援活動が必要なんです......大学側からのアプローチが必要とはそういうことです。指導教授のコネだけでも不足ですね。



アカデミアが生み出す知的価値は獲得予算額・発表論文数・特許の数などで短期的には評価されるかもしれないが、中・長期的にはどんな人材を生み出したかで評価される(べきである)。米国に比べ企業の中途採用の難しい日本では、理系大学のPh.D./Postdocに対する就職支援機能を高めることは非常に重要である。個々の研究室レベルではなく大学のカリキュラムとして体系的に行うできであると思う。個々の研究室では「研究の方法」を全体のカリキュラムでは「仕事の方法」をトレーニングし、「事務」で就職支援をする。

米国ではファカルティーのプロモーションの審査では、今までトレーニングした学生・フェローの全員の名前と現在の就職先とポジションを自分のC.V.に記入するが、この部分はメンターとしての能力を評価する非常に重要な指標となる。教官(ひいては大学)のメンター力をプロモーションや社会での評価に体系的に組み込むことは、学生・ポスドクのトレーニングや就職支援に教官(や大学)がエネルギーを注ぐインセンティブになる。

カリキュラムの充実には予算が必要であるが、質の高い教育と職業トレーニングを提供ことができるのなら授業料も米国レベルにまで引き上げることも必要になるかもしれない。奨学金やグラントからの給料として出すシステムが完備するまでは、米国のように低金利ローン等でサポートするしかないであろう。

ポスドクは米国のシステム(ポスドクのあとはすぐに独立したファカルティーで、ノンアカデミックのポジションもある程度豊富)ではうまく機能している。トータルのジョブ・セキュリティーはあまり高くないが、米国ではポスドクは「挑戦して失敗してもやり直しのきく」キャリアの1ステップである。ポスドクは自分で積極的に行動することは求められるが、未熟でもよい。したがって、米国のアカデミアでは就職支援システムもそれほど必要とされない(とりあえず、挑戦したほうが早いので)。

日本でも10〜15年前までは、バイオメディシンを研究している人はそれほど多くなく、領域も発展途上であった。情報量は少なく飛び込むには勇気(または無知)が必要であったが、未熟でも許された。私も含め現在アカデミアでファカルティーをやっている人(の多く)はその時代のひとである。未熟であることで批判などされなかった。しかし、現在は多くの領域が成熟してしまったので、情報量は多いが競争は熾烈である。未熟ではやっていけない。未熟であることが「人間力」に欠けるなどと批判される。逆説的に聞こえるかもしれないが、成熟した領域においてこそ支援が必要である

7/29追記:
関連ブログ:
5号館のつぶやき「博士の就職」
stochinaiさんが100以上のコメントによる議論をまとめていらっしゃいます。

大隅典子の仙台通信「誰がアクションするのか?」
大隅さんが同様のお考えでグローバルCOEを画策中です。”一緒にチャレンジしてくれる博士やポスドクさんがいたら大歓迎です”

テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務. その後, Harvard 大学医学部への研究留学を期に, 非常に迷った末に医局を離れBoston で独立することに挑戦し, 現在ラボ運営に奮闘する.「実験医学」 に”プロフェッショナル根性論”を執筆. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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