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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
元気でproductivityの落ちないシニア研究者と若手研究者へのポストの慢性的不足、これは日本だけの問題ではない。バイオメディカル研究領域での一流誌Nature Medicine2007年6月号のエディトリアルでこの問題がとりあげられている。

まず、この記事より米国での数字をまとめると:

・ハーバード大(Faculty of Art and Science)では2006年テニュア教授の10%が70歳以上(1992年には0%)(なお、米国のメジャーなResearch Universityでは定年退職[mandatory retiremant] はなく、命がつづき、研究費をとれる限りポジションを維持できる)

・米国政府(NIH)より研究費を得ている55歳以上の研究者は2003年度は全体の22.7%をしめる。(1983年には9.7%)(オーストラリアでは米国R01グラントと同等のグラントの50%が50歳以上の研究者で占められ、若手 [30-34歳] は6%)

・Ph.D.習得後5~6年の(ポスドク)の後、独立したアカデミック・ポジション(テニュアトラック)に就くことのできる人の割合は20年間で34%から14%に低下。

・NIHより最初のR01グラントをとることができる(=独立した研究者のあかし)年齢は25年間で37歳から42歳に上昇。(ドイツで同様のケースは現在41歳)



同エディトリアルは

Only a small minority of today's PhD graduates can realistically expect long-term careers in university research(この一文がNature Medicineのエディトリアルに掲載されたインパクは小さくはないと思う。この意味は後々フォローする予定).



という現状を認めたうえで、早期定年退職の導入は「多くのシニア研究者がproductivityを維持している」現状では得策でないとしている。そして、日本やシンガポールの研究機関でむしろ定年を延長していることを紹介している。

それでは解決法は?

シニアと若手の双方のバランスをとることがサイエンスの活性化維持に不可欠であり...
Both young and old scientists need to be nurtured. To achieve this balance, which is essential in maintaining scientific vitality....



としたうえで、(魔法のような解決法はなく)一定の年齢を超えれば、ポジションは後進にあけわたすがproductivityが続くかぎりオフィスとラボを維持する権利をもち、数年毎に契約を更新するシニア・フェロー制度のような米国、カナダ、オーストラリアでの取り組みを紹介している。



さて、一つ大きな仕事をすれば、そして一旦ファカルティーポジションにつけば、それでずっとやっていけるキャリア・モデルは終わりつつある(もう終わっていると思う)。シニアも若手も同じ土俵でポジションと研究費を競い合うフェアーなシステムの実現が必要であろう。また若手を育てるという意味ではある程度ハンディをつけることも必要であろう(NIHがnew PIのグラントの評価を意図的にすこし甘くしているように)。また、多くのキャリアパスやキャリアブランク、さらには再チャレンジを許容し閉塞感を軽減する観点からも、ハンディは生物学的年齢ではなくキャリア・パスでの年齢(Ph.D.取得後の年数や、メジャーなグラントを得た回数)をもとに考慮されるべきであろう。




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テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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