サイエンス誌2007年6月号に「
PREPARING TEACHERS」と題して中学・高校教育をになう優秀な理科・数学教師を育てるための大学理系学部の取り組みが特集されている。以前は教育学部の仕事であった理系教師の育成を、Research Universityの理系学部(理学・工学・農学部などに相当)が本気でとり組もうとしている。
その背景にあるのが、2005年にNational Academyが出した564ページにわたる詳細な提言「
Rising Above The Gathering Storm」である。この提言はLamar Alexander & Jeff Bingaman 両上院議員からの”質問”
「米国がScience&Technologyの分野で世界を凌駕し、21世紀でも引き続きグローバルな覇権を握るためのトップ10の戦略とは何か?」
What are the top 10 actions, in priority order, that feral policymaker could take action to enhance the science and technology enterprise so that the United States can successfully compete, prosper, and be secure in the global community of the 21st century? What strategy, with several concrete steps, could be used to implement each of those actions?
に答えたかたちをとり、そのトップに来るものが:
10,000 Teachers, 10 Million Minds, and K-12 Science and Mathematics Education
という教育リフォームの政策である。これは1万人の優秀な理科・数学教師を育て(そのために、ひとり年間2万ドルの奨学金(返済不要)を4年間あたえる)、一人の教師が将来的に1,000人の理系学生を育て上げれば、1,000万人の理系学生が生まれるというスローガンである。(K-12とは幼稚園 [kinder] から12年生 [高校3年生]という米国でのfree public educationのこと)
しかし、教育リフォームは簡単ではない。サイエンス誌の記事によると、Research Universityが優秀な理系学生を優秀な理科・数学教師に育てるために必要なことのトップに上がっているのが:
「(研究と同じく)教育は価値のあることであるというメッセージを学生におくる」
Sending talented undergraduates the message that teaching is valued.
ことである。日本の多くのResearch Universityと同様に米国でも「研究」に比して「教育」は低く見られる傾向にあり、サイエンス誌の記事によると「研究キャリアに進むものが勝ち組、教育キャリアに進むものは敗け組とみられがちである。」このような意識を改革することは簡単ではないが、ひとつのとり組みとしての:
「情熱をもって学校教育にとり組んでいる経験豊富な現役教師を招聘し、大学教官とともに学生をメントリング (Mentoring) する」
Enlisting experienced classroom teachers in shaping curriculum, mentoring students, and working with faculty members.
ことがある。大学の理系教官による指導だけでなく、学生に実際の教育現場で”機能”している元気なひとの情熱とエネルギーに直接触れてもらうことは「教育は価値がある」というメッセージをおくるストレートな方法であろう。
PS: June 24, 2007
関連エントリー:
「Ph.D.を優遇する提案:柳田充弘の休息時間」
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