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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
ボストンのカレッジで勉強している20歳前後の学生さんから「大人はいいですよね~進路で悩むまなくていいから。僕らなんて卒業後何をしていいかまったくわかりません。」といわれた。学生さんたちの心境を表すのに最も適切な言葉は「clueless」ではなかろうか。しかし、本当は大人も「clueless」なのだ。

山田ズーニー氏は17年間編集者として勤務したベネッセを必ずしも本意ではなく退職し、その後独立して作家・表現者として現在にいたる。退職から独立までの経緯(特に"Mind-set"の変化の過程)を著書「17歳は2回くる-おとなの小論文教室。」等で読んで、ちょうど独立の過程にあった私も共感を覚えた。

ポドキャスト・山田ズーニーの「おとなの進路教室」は「cluelessな大人」に向けての、「cluelessな大人」からのメッセージである。そんなおとなの進路教室5/17の放送での表現者(劇作家)イトヲチェ氏の「リミットさがし」という言葉に非常に興味をもった。

イトヲチェ氏は舞台での制作活動の傍ら生活費を稼ぐためにアルバイトをしていた。そのときのアルバイトはだだ単にお金のためであり何の思い入れもなかったが、とある事情で舞台での制作活動をやめざる終えなかった。創作の場を失ったとたん、アルバイトにのめり込み、その単純作業に働く喜びを見いだしている自分をみつけた。

研究を含めた創作活動は原則としてOpen endでありリミットがない。研究では独立した場合には基本的には何を研究してもよい。このリミットレスネスが実はやっかいで、無限大なリミットレスネスの海から、有限な自分の人生を賭けるリミットを自分で見つけ出す過程が創作における生みの苦しみである。この苦しみの最中は「誰かに外からリミットを与えて欲しい」欲求に駆られる。

外から与えられたリミットの一例がイトヲチェ氏の場合はアルバイトであった。創作活動のリミットレスネスとの戦いに疲れたとき、アルバイトでの達成容易なリミットはともすれば麻薬のようであり、再びリミットレスネスの世界に挑戦する気迫を削いでしまうかもしれない。

最初のボストンのカレッジの学生さんとの会話に戻るが、「clueless」と感じるのは、リミットレスネスに直面している証拠である。リミットレスネス創造性への入り口である。「clueless」と感じたときは自分が創造性への入り口に面していると言うことを思い出したい。

PS:アリタリア航空ストライキのためミラノ~ボストン便が欠航。ミラノ・マルペンサ空港近郊のホテルよりアップロードしています。

関連エントリー
「不自由さが創造性を生む」
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テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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