フラット化する世界の著者トーマス・フリードマンがヘラルド・トリビューン(5月14日)に書いた
コラム (Only Halfway There) をイタリアから成田に向かう飛行機の中で読んだ。
要旨はアメリカがイラクから撤退するためには、イラクの治安やテロに対する政策を考えるだけではまったく不十分で、アメリカの石油政策をまず考えなければならない。なぜならば、イラク戦争の本来の目的はアメリカへの安定した石油供給の維持だからである........
しかし、アメリカが「俺のところの石油の安定供給の維持のために、おまえちょっと手伝ってくれ」と言われて誰がイラクに派兵するだろうか。他の国の共感をえるためには(少なくとも積極的に断る理由をなくすためには)、崇高な大義名分が必要であった。それが正義のための戦い・テロに対する戦いであった。
このような二枚舌は政治的なメッセージを伝える上では常套手段であるが、ことサイエンス政策に関しては効率的にこの二枚舌が機能しているとは思えない。例えばポスドク問題:研究者サイドの要求の本質は常勤アカデミックポジションの増加であろう。
しかし、この正直なメッセージが世間にどう受け取られるかを考える必要がある。「博士号を習得し、さらなるトレーニングを受けた人間が希望する職につけなので国がお金をだして職をつくれ」と世間には取られかねない。これが世間の共感を呼ぶだろうか?世間が共感しなければノブルな大義名分は形成されず、政治家は動かない。
うまく二枚舌を使い例えば:
「10年後に日本がサイエンスの分野で国際競争に打ち勝つためには、競争原理を持ち込んでテニアトラック(=ポスト・ポスドクのポジション)の研究者を切磋琢磨させる必要があるが、現在はテニアトラックの層が(切磋琢磨するには)薄すぎるので至急増員する必要がある」と言うのはどうであろうか。[結局は「常勤アカデミックポジションを増やせ」であるが]
1)まず、大義名分(=国際競争に勝つ=国民の利益)を前面に出し、
2)「ポスドクの受け皿をつくれ」という雇用対策的な色をうすめ、むしろ「国際競争力を高めるために本来あるべき仕事(=テニアトラック)の数が極端に不足しているので増やせ」というあくまで国民にとっての価値(=国際競争力)を生み出すためのリソースの創出という論点にしてみた。
もちろんベストにはほど遠いが、
「今私たちは困っているから助けてくれ」というメッセージ以外にも
「私たちは社会に価値あるものを創るので投資してくれ」というメッセージを発信する戦略的二枚舌を理系研究者は学ばなければならない。
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