ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
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MIndless eadting久しぶりに日本のレストランで食事をして気になったのは、米国に比べ空いた皿を下げるのが遅いことだ。逆に渡米して間もない頃は、空いた皿をあっという間にさげてしまう米国のウエイター/ウエイトレスに驚いた。

これに関連して最近読んだ「Mindless Eating: Why We Eat More Than We Think」という食の心理学とも言うべき本に興味深い実験結果が書いてあった。

被験者はMBAコースの学生(インテリジェンスが高く、騙されにくいはず)を2つのグループに分けパーティーに招き、双方にフライドチキン(骨付き)を食べたいだけごちそうした。一つのグループでは食べた後の骨の乗った皿を素早くさげ、もう一方のグループでは下げずにそのままテーブルに残した。

結果は:皿を素早く下げたグループは、下げなっかたグループより20%近く多くフライドチキンを食べたのだ。

「Mindless Eating」によると、満腹感は実際に胃のなかにどれだけ詰め込んだかだけでなく、視覚的シグナル(ビジュアルキュー)に大きく影響を受ける。食べた後のフライドチキンの骨の数や、空いた皿の数はどれだけ食べたかの大きな視覚的シグナルとなり、「十分達成したからもういいんだよ」と食欲を抑制する。

しかし、フライドチキンの骨や空いた皿が素早く下げられ、テーブルに食欲抑制の視覚的シグナルがないと、ひとは安心してもっと食べてしまうのだ。

米国のレストランでは通常総料金の10-20%程度のチップがウエイター/ウエイトレスのポケットに入るので、チップの習慣のない日本に比べ、客にたくさん食べさすより強いインセンティブが働くと考えられる。これが皿を下げる日米のタイミングの差に影響しているのではないか。

PS: それ以外にも日本人のメンタリティーとして、皿をあまり早くさげると「客をせかしているように思われる」ということも、皿を下げるタイミングが遅い要因のひとつであろう。

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テーマ:食べ物 - ジャンル:ライフ

Richard St. Johnは飛行機でたまたま隣に座った高校生の「将来成功するためにはどうしたらいいの?」という素朴な質問に触発され、7年間にわたり500人以上の成功者にインタビューした中から「8つの成功の秘訣」を抽出した。その8つの秘訣をまとめた3分間のプレゼンテーションをTED talkで披露した:



成功のための8つの秘訣:
1)情熱をもつ(Passion)

情熱が私を突き動かす(I'm driven by my passion)
フリーマン・トーマス(カーデザイナー、ダイムラー・クライスラー)

お金のためでなく好きだからやる。お金を払ってだってそれをやる(Do it for Love not for money. I would pay someone to do what I do.)
キャロル・コレッタ(ラジヲ・プロデューサー、スマートシティー)



2)一生懸命に仕事をする(Work)

何事も簡単には手に入らない。絶対にハードワークが必要。でも、それが楽しいんだ。(It's all hard work. Nothing comes easily. But I have a lot of fun.)
ルパート・マードック(CEO、News Corporation)



3)得意になる(Good)

一度決めたらめちゃくちゃ得意になるまでとことんそれをやり続けろ(To be successful put your nose down in something and get damn good at it. )
アレックス・ガーデン(ゲーム・デベロッパー)



4)フォーカスを(Focus)

大切なことはただひとつのことにフォーカスを絞ることだ(i think it all to do with focusing yourself to one thing. )
ノーマン・ジェーソン(映画制作者)



5)プッシュする(Push)

自分自身をプッシュせよ!フィジカルに!メンタルに!(Push yourself physically, mentally, you gottta push push push.)
デビット・ガロ(海洋生物学者)

最初からあきらめるな!自分を信じろ!ShynessとSelf-doubtをプッシュしてぶっ飛ばせ!誰だって最初から大きなことができる自身なんて持っていない(I always had self-doubts. I wasn't good enough, wasn't smart enough. I didn't think i'd make it.)
ゴールディ・ホーン(俳優)

常に自分をプッシュし続けるのは楽じゃない。[だから母親がいるのさ] 母が僕をブッシュしてくれた(it's not always easy to push yourself. [That's why they invented mothers.] My mother pushed me. )
フランク・ゲリー(建築家)



6)自分のためだけでなく(Serve)

医師としてひとのためにServeするのがわたしの喜びである(it was a privilege to serve as a doctor. )
シェウィン・ヌランド(イェール大学外科教授)



7)自分のアイデアをもつ(Ideas)

世界で最初のマイクロコンピューターソフトの会社をつくるというアイデアを持っていたんだ(I had an ideaーfounding the first micro-computer software company... )
ビル・ゲーツ(マイクロソフト)



アイデアを生むためにすべきことは:
Listen
Observe
Be Curious
Ask Questons
Problem Solve
Make Connections



8)やり遂げる(Persist)

成功の理由ナンバーワンは一度はじめたら必ずやり遂げることだ(Persistence is the number one reason for our success.)
ジョー・クラウス(Excite 創業者)




以上私の意訳ですが、No. 5の母親でも、妻でも、パートナーでも、友人でも、先輩でも誰でもいいので応援してプッシュしてくれるひとの存在がとくに大切だと思う。





テーマ:ことば - ジャンル:学問・文化・芸術

苫米地 英人氏の「夢をかなえる洗脳力」を読んだ。苫米地氏の強烈なプロファイル(脳機能学者・計算言語学者....角川春樹事務所顧問....カーネギーメロン大学博士....オウム信者の脱「洗脳」の経験...)と「夢をかなえる洗脳力」という刺激的な本のタイトルとは裏腹に、かなりちゃんとしたことが書いてあっておもしろい。

「本書でご紹介するのは、最新科学から生まれた強力な技術です。本書のノウハウを悪用すれば、悪徳宗教の教祖や詐欺師になることも可能です。本書の手法を間違った目的で使用されないよう、くれぐれも申し上げておきたいと思います。」と書いてあるが、ハウツー本ではなくむしろ啓蒙書である。

私のこの本の解釈は(要約ではなく):
1)世界はすべて人間の5感をとおして認識されるものであるから、厳密な意味で本当のリアリティーなど存在せず、万人に対してその数だけのバーテャル・リアリティーのみが存在する。
2)したがって、世界は個人の認識(心のもちかた)次第でなんとでも変えられる。
3)よってしあわせになる最も確実な方法は競争に勝つことやお金を儲けることではなく、自分がしあわせであると感じる(洗脳する)ことである。
4)そのためには不幸に感じられる小さな出来事を大きな局面からポジティブに見る力(抽象的な思考力)を身につける必要がある。
以上がこの本の肝である。

「しあわせな人生」と「競争の勝者であること」を全く関係のない別物として完全に分離したことは、決して新しいことではないが「勝ち組・小金持ちになるための戦略本」が氾濫する現在には希少価値があるであろう。

(May sound ironic) Scarcity is a best strategy to be successful in competitive markets.



テーマ:教育 - ジャンル:学校・教育

ボストンのカレッジで勉強している20歳前後の学生さんから「大人はいいですよね~進路で悩むまなくていいから。僕らなんて卒業後何をしていいかまったくわかりません。」といわれた。学生さんたちの心境を表すのに最も適切な言葉は「clueless」ではなかろうか。しかし、本当は大人も「clueless」なのだ。

山田ズーニー氏は17年間編集者として勤務したベネッセを必ずしも本意ではなく退職し、その後独立して作家・表現者として現在にいたる。退職から独立までの経緯(特に"Mind-set"の変化の過程)を著書「17歳は2回くる-おとなの小論文教室。」等で読んで、ちょうど独立の過程にあった私も共感を覚えた。

ポドキャスト・山田ズーニーの「おとなの進路教室」は「cluelessな大人」に向けての、「cluelessな大人」からのメッセージである。そんなおとなの進路教室5/17の放送での表現者(劇作家)イトヲチェ氏の「リミットさがし」という言葉に非常に興味をもった。

イトヲチェ氏は舞台での制作活動の傍ら生活費を稼ぐためにアルバイトをしていた。そのときのアルバイトはだだ単にお金のためであり何の思い入れもなかったが、とある事情で舞台での制作活動をやめざる終えなかった。創作の場を失ったとたん、アルバイトにのめり込み、その単純作業に働く喜びを見いだしている自分をみつけた。

研究を含めた創作活動は原則としてOpen endでありリミットがない。研究では独立した場合には基本的には何を研究してもよい。このリミットレスネスが実はやっかいで、無限大なリミットレスネスの海から、有限な自分の人生を賭けるリミットを自分で見つけ出す過程が創作における生みの苦しみである。この苦しみの最中は「誰かに外からリミットを与えて欲しい」欲求に駆られる。

外から与えられたリミットの一例がイトヲチェ氏の場合はアルバイトであった。創作活動のリミットレスネスとの戦いに疲れたとき、アルバイトでの達成容易なリミットはともすれば麻薬のようであり、再びリミットレスネスの世界に挑戦する気迫を削いでしまうかもしれない。

最初のボストンのカレッジの学生さんとの会話に戻るが、「clueless」と感じるのは、リミットレスネスに直面している証拠である。リミットレスネス創造性への入り口である。「clueless」と感じたときは自分が創造性への入り口に面していると言うことを思い出したい。

PS:アリタリア航空ストライキのためミラノ~ボストン便が欠航。ミラノ・マルペンサ空港近郊のホテルよりアップロードしています。

関連エントリー
「不自由さが創造性を生む」
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-76.html



テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

梅田望夫・茂木健一郎の対談集「フューチャリスト宣言」の「グーグルを賢く」するという梅田氏のスタイルは多くの科学者にとっての社会貢献のスタイルでもある。

梅田 ........ なんか、取り込まれた感じがしたんです。茂木さんはブログを書いていて感じませんか? 僕は最初、グーグルにやられている感がありました。
茂木 グーグルに搾取されているということですか?
梅田 要するに、いいことをいっぱい書くと、グーグルが賢くなるんですよ。
梅田 ........ 僕がグーグルを賢くしてやるんだよ、と開き直った(笑)。「マトリックス」の電池になってやろうじゃないかと。それが僕の社会貢献の姿なんだとね。



Googleが検索を中心としてライフスタイルを一般の人びとに浸透させる何年も前から、われわれ医学・生物学系の科学者はPubmedにより世界の科学者が出版した論文をキーワードで検索するということを仕事の一部として行ってきた。われわれにとってはPubmedが論文検索のための主要なサーチツールである。

研究成果を論文にまとめ、Peer-reviewed Journal (審査付き科学雑誌)に掲載することがアカデミックで仕事をする科学者のアウトプットの最も主要でかつ重要なものである(プロモーションに)。Nature, Cell, Scienceなどの超一流科学雑誌や、各分野でのトップクラスの専門科学雑誌に掲載された論文は雑誌(Online or print)から直接読まれるが、その他約6,000ある科学雑誌(医学・生物系)に掲載された論文の大部分は主としてPubmedによる検索を通じて読まれることとなる。

少数のハイインパクトな論文は多くの科学者に読まれ高頻度に引用されるが、大部分の論文はほんの一部の人にしか読まれない。出版後何年にもわたって自分以外はだれも読んだことのない論文もかなりあるのではないか。

しかし、「論文を出版したという科学者の自己満足」以外に何の役にも立たないと一見思われるようなローインパクト・ロープロファイルの論文群がPubmedで検索可能なロングテールを形成している。そして検索により他の科学者の目にとまり、論文を書いた当事者が予想もしなかった大きなインパクトに貢献することがあり得るのだ。

科学の共通語である英語で論文を書き、Pubmedで検索可能な科学雑誌に掲載されるかぎり
、科学者個人の業績集 (CV) を良くし、さらにPubmedという知の総和の形成に寄与するというWin-Winの社会貢献をしているのである。



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フラット化する世界の著者トーマス・フリードマンがヘラルド・トリビューン(5月14日)に書いたコラム (Only Halfway There) をイタリアから成田に向かう飛行機の中で読んだ。

要旨はアメリカがイラクから撤退するためには、イラクの治安やテロに対する政策を考えるだけではまったく不十分で、アメリカの石油政策をまず考えなければならない。なぜならば、イラク戦争の本来の目的はアメリカへの安定した石油供給の維持だからである........

しかし、アメリカが「俺のところの石油の安定供給の維持のために、おまえちょっと手伝ってくれ」と言われて誰がイラクに派兵するだろうか。他の国の共感をえるためには(少なくとも積極的に断る理由をなくすためには)、崇高な大義名分が必要であった。それが正義のための戦い・テロに対する戦いであった。

このような二枚舌は政治的なメッセージを伝える上では常套手段であるが、ことサイエンス政策に関しては効率的にこの二枚舌が機能しているとは思えない。例えばポスドク問題:研究者サイドの要求の本質は常勤アカデミックポジションの増加であろう。

しかし、この正直なメッセージが世間にどう受け取られるかを考える必要がある。「博士号を習得し、さらなるトレーニングを受けた人間が希望する職につけなので国がお金をだして職をつくれ」と世間には取られかねない。これが世間の共感を呼ぶだろうか?世間が共感しなければノブルな大義名分は形成されず、政治家は動かない。

うまく二枚舌を使い例えば:

「10年後に日本がサイエンスの分野で国際競争に打ち勝つためには、競争原理を持ち込んでテニアトラック(=ポスト・ポスドクのポジション)の研究者を切磋琢磨させる必要があるが、現在はテニアトラックの層が(切磋琢磨するには)薄すぎるので至急増員する必要がある」

と言うのはどうであろうか。[結局は「常勤アカデミックポジションを増やせ」であるが]
1)まず、大義名分(=国際競争に勝つ=国民の利益)を前面に出し、
2)「ポスドクの受け皿をつくれ」という雇用対策的な色をうすめ、むしろ「国際競争力を高めるために本来あるべき仕事(=テニアトラック)の数が極端に不足しているので増やせ」というあくまで国民にとっての価値(=国際競争力)を生み出すためのリソースの創出という論点にしてみた。

もちろんベストにはほど遠いが、「今私たちは困っているから助けてくれ」というメッセージ以外にも「私たちは社会に価値あるものを創るので投資してくれ」というメッセージを発信する戦略的二枚舌を理系研究者は学ばなければならない。

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テーマ:教育 - ジャンル:学校・教育

文部科学省のハイリスクプロジェクトをサポートする新しい”研究補助金制度”は、米国政府の同様の目的のグラント制度の問題点がら学ぶべき点(とくに模倣すべきでない点)がある。

「失敗恐れないで」ハイリスク研究に補助金 文科省検討
Ashahi.com (2007年05月11日16時29分)

失敗を恐れずに挑戦を――。文部科学省は、成功の見込みが「十に一つ」程度でも、大きな成果につながる可能性があると判断した研究に対して、新たな補助制度を設ける検討を始めた。近年、成果が確実と期待される研究に補助金が集中し、革新的な研究が出にくくなったとの反省がある。選考方法や補助額などを詰めて、来年度の制度創設を目指す。

 対象は(1)才能や先見性を実績で示した研究者が試みる、従来とは違う分野の研究への取り組み(2)従来の学問分野を超えた新しい分野の研究(3)現在の技術では実現が難しい高い目標を掲げたテーマに挑戦する研究、などを想定している。(3)は個性的なベテラン研究者が目標を設定し、若い研究者が挑戦する形などを模索している。

 選考では非現実的なテーマを避けながらも、例えば数人の選考委員のなかで1人でも特別に評価すれば対象にするなど、無難な選択にならないような仕組みを工夫する。「十のうち九はダメかも知れない」(文科省)危険性が高いため、最初は補助額を抑え、進展状況をみて打ち切ったり、増額したりできる制度も検討している。

 文科省によると、最近の研究費補助金は、審査側ばかりでなく、研究者側も特許や論文として成果が確実な課題を申請する傾向が強い。平均的には評価が高く全体の水準を押し上げる効果があるが、「自由な発想による面白い研究が減っているのではないか」との指摘が出ている。

 科学技術振興機構によると、米国では近年、複数の機関が、確率は低いが成功すれば研究分野の発展や産業への影響が大きい「ハイリスク・ハイインパクト」研究を対象にした助成制度を設けた。アイデアや研究者個人の独創性や可能性が重視された研究、太陽光貯蔵などの野心的な研究が採用されている。

 文科省は「異端かも知れないが、アッと驚くような成果が得られる研究を掘り起こしたい」としている。



米国政府のバイオメディカル研究に対するグラントの最もスタンダードのものはNIHR01である。R01を獲得するためには研究費に見合う成果を保証できるだけのpreliminary dataと申請者の十分なトラックレコード(主として発表論文の質と量)が必要である。とくにpreliminary dataは非常に重要であり、例えば「新しいマウス疾患モデルの作成」を申請する場合は、「新しいマウス疾患モデル」がすでに(少なくともほとんど)作成されていることを示すpreliminary dataがないとグラントが獲得できない (レビューアーにプロジェクトの成功を信じてもらえない。

ちなみにR01の5つの審査基準は:
Significance: この研究は重要か?(Does this study address an important problem? )
Approach: アプローチは適切で、よく練られているか?(Are the conceptual or clinical framework, design, methods, and analyses adequately developed, well-integrated, well-reasoned, and appropriate to the aims of the project? )
Innovation: オリジナリティーとイノベーションは?(Is the project original and innovative? )
Investigator: PIのトラックレコードは十分か?(Are the PD/PI(s) and other key personnel appropriately trained and well suited to carry out this work? )
Environment: 研究室と周りの環境(大学・研究所の設備)は?Do(es) the scientific environment(s) in which the work will be done contribute to the probability of success?

Approachが適切であることと研究成果を高い確率で保証するものがpreliminary dataである。競争が激しくなった現在は、R01は成功が約束されたローリスクのプロジェクトに集中する傾向にあり、8割程度完成したプロジェクトを大量のpreliminary dataと共に申請することがグラント獲得のキーとなりつつある。

NIHはR01とは別枠でハイリスクプロジェクトをサポートするグラントR21を導入している。

The R21 is intended to encourage exploratory/developmental research projects by providing support for the early and conceptual stages of development......These studies (supported by R21) may involve considerable risk but may lead to a breakthrough in a particular area,....



R21も上記の5つの審査基準で評価されるが、preliminary dataに対する比重は低くするようにレビューアーは指示されている。NIHの研究費が贅沢であった時代にはpreliminary dataなしでR21が獲得できた(らしいが)、現在はR21もかなりのpreliminary dataがないと成功は難しく、本来ハイリスクであるR21のローリスク化が進んでいるように思う。

R01の詳細な申請書の形式(シングルスペース25ページ)と上記の5つの審査基準に基づいたStudy Sectionによる徹底的なレビューはローリスクのプロジェクトを評価する(同時にローリスクのプロジェクト申請を推進する)にはおそらく世界で最も優れたシステムである。

しかし、ハイリスクのプロジェクトを評価するにはまったく違ったシステムが必要となるのではないか(とくに、研究費の総額が限られている場合)。

そこでひとつの案として(誤解を招くかもしれないが)審査もハイリスクにしてみてはどうだろうか。

案1)複数のレビューアーによる総合的な評価ではどうしてもWell-rounded(角のとれた丸い)プロジェクトが選ばれやすい。誰か一人が独断で決めるリスクを冒してみてはどうか。

案2)逆にWisdom of crowds(「みんなの意見」は案外正しい)を信じてインターネット上でオープンに評価・審査・投票してみるというリスクを冒してみてはどうだろうか。環境が整えばWisdom of crowdsは少数の専門家集団より正しい決断を下す。


補足:
1)R01はローリスクでインターミディエート~ハイリターンのプロジェクトを好む。
2)R21はハイリスクでハイリターンのプロジェクトを好む。
3)ローリターンなプロジェクトは審査基準”Significance”で低く評価される。
4)”研究補助金制度”はハイリスク・ハイリターンプロジェクト向きではない。ハイリスク・ハイリターンプロジェクトには必要な研究費全額を与えるグラントタイプの研究費が必要である。

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テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

「医学研究は人類の健康の増進・難病の撲滅に大きなインパクトを与えるというマニフェストは本気なのか、それとも研究費をとるためのスローガンにすぎなのか」と心のどこかで思っている研究者は結構いるかもしれない。この問題に関連したコメントをトロント在住ポスドクさんからいただいた。

...... 僕がつい悲観的になってしまう根拠は、1990年代のアルツハイマー病研究の失敗(あえて、あの巨大な研究費で、この成果?という意味で、失敗ではないかと考えています)からの教訓です。あれだけ、Nature, Science, Cellにたくさんの成果が発表されたにもかかわらず、劇的な進歩があったでしょうか?..... MD.PhDだから、基礎科学と基礎医学をつなぐ研究は得意に違いありません。だけど、若い人たちに、何百万人を救う可能性があるので、研究者になりなさいという意見は少しフェアではないのではないかと考えるようになってきました ......



ものを創る・価値を生み出すという創造/生産のプロセスには「歩止まり」という概念がある。

歩止り(ぶどまり). 各種の素材からそれぞれの製品を作る場合に、使用した素材の量に対する出来上がった製品量のこと



R&D (Research & Development)ではRの部分のuncertaintyが低く(基本的な原理が解明されている)、Dに対する投資の量が多くなるほど歩止りは高くなる。例えば、自動車が動く基本的原理は解明されているので、TOYOTAはDに対する投資が大きく「カイゼン」などの概念を取り入れ、歩止りが100に近くなるようなシステムを構築した。

これと比較して、病気の治療薬の開発は多くの場合は、基本的な生命の原理・病気のメカニズムさえ完全には解明されておらず、R&Dに対する投資のほとんどはRに対してであり、それにもかかわらずRの部分のuncertaintyは依然高く、結果として製品の歩止まりは非常に低い。つまり、ほとんどの基礎研究の結果は直接はまたすぐには製品には反映されない。

「Rのuncertaintyが高く、歩止まりが低い基礎医学研究」という事実を目の前にしたときに取り得るいくつかのアプローチのうちの2つは:

1)DO; とにかく基礎研究の層を厚くするために、自分のできる研究をして論文にする。その蓄積がsearchableなデータベースをとおしてオーブンソースとしての医学研究知識体系を造り上げる。特に、過去の失敗から学ぶためにネガティブデータをpublish(少なくともonlineでは)し、データベース化する必要がある(これは今後のシステムの問題。 例えばJournal of Negative Results in Biomedicine)。知識の蓄積にともない徐々にRのuncertaintyは低くなり、歩止まりが上がっていく(または、歩止まりが低くても、打ち続ければそのうち標的にヒットする。)

2)QUIT; 歩止まりが低い領域に自分の時間を使うのは割に合わないので、歩止まりの高い別の分野に移る。

(1)(2)のどちらを選択するにせよ、3/3のエントリーでとりあげたSir Winston Churchillの「成功の定義」を思い出してほしい。

Success is the ability to go from one failure to another with no loss of enthusiasm.



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テーマ:教育問題について考える - ジャンル:学校・教育

イタリアでの学会Brescia Anesthesia Intensive Care Neuroscienceでは参加者のほとんどは現役の医師である。パーティーの席で「自分は10年臨床をやっていたが、100%基礎研究に打ち込んでほぼ10年になる」というと、当然「臨床を恋しく思わないか?」「臨床と基礎研究のどちらを取るか」の話しになった。テーブルには臨床を20年やったあと、英国の有名医学雑誌ランセットのエディターをロンドンで2年した後、臨床が恋しくなりまたイタリアでの臨床に戻った麻酔科医もいた。

私も含め多くの医師(元医師)にとっては医者である(あった)ということは、とてつもなく大きなアイデンティティーのよりどころである。医師をやめたいと口では言いつつもアイデンティティーを失う恐怖に打ち勝つことは簡単ではない。

また、社会人になって最初に確立した職業観(これもアイデンティティに関係するが)の刷り込みは非常に強い(洗脳に近いかもしれない)。リプログラミングは難しく、結局ほかのことをやっても最初の職業にもどってくることが往々にしてある。

多くのひとにとって最も困難なことは「変化」することであるので、Outperformしているひとには自分を数年おきにRe-inventできる人が多いのではないか。強烈なpersistencyで成功しているひともいるが、これは自然にdecayしマイナスに変化している自分をプラスにre-inventした結果、まったく変化していないように見える(=persistency)ともとらえられる。

さて、「臨床」か「基礎」の問題についではもちろん正しい答えなどなく個人の価値観の問題であるが、私は「臨床/基礎」は単純化すれば単なるトピックの違いで、「Outperformできるのであればどちらでもよい」と思う。

関連エントリー
医者をやめる:キャリア・チェンジとプロフェッショナルのサイコロジー
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-8.html

研究者としての独立:Change or Die
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-1.html



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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

"世界を見る目が少しだけ変わる6分間"で紹介した'Shift Happens'のスライド版がWorld's Best Presentationに選ばれた。

OUTSTANDING!!!




Results of the World's Best Presentation Contest
http://www.slideshare.net/contests/contest-details

テーマ:教育 - ジャンル:学校・教育

このパワーポイントスライドを見てどう感じただろうか。

1.非常に良くまとまっている。
2.わかりやすい。
3.もうすこし情報を少なくした方がよい。
4.上記のどれでもない。


PPT.jpg




元ヤフーのマーケッティングディレクターSeth Godinのブログで、このスライドは


Worst powerpoint slide ever used by a CEO



として、取り上げられている。

なんと私はこのスライドは少し'Busy'だが、'Worst'とは感じなかった。シグナル伝達のトークではこの程度のスライドはよくお目にかかる。1-3と答えたひとは私と同じ研究者タイプ、Sethと同様に'Worst'と感じた人はビジネスパーソンタイプではなかろうか。

「不必要な詳細を抑制し、ただ一つのメッセージ(印象)を非専門家にクリアに伝えなければならない」というプレッシャーがBusiness presentationではScientific presentationに比べて遙かに強い。Scientific presentationではAudienceが専門家の集団であることが多く、また細部に本質が宿ると信じられている場合が多い。(私も細部にこだわるのが大好きだし、自分が大好きな細部を人に伝えたいオタクである。)

しかし、”専門バカ”の罠にはまらず、自分の仕事を大きなコンテクストに置くためには、サイエンスコミュニケーションのエントリーで書いたように「Technical detailsを抑え、ストーリーを語る」技術をBusiness presentationから学ぶ必要がある。

PS: 今週から2週間でイタリアと阿蘇を回ります。イタリアでは脳科学・神経保護の学会Brescia Anesthesia Intensive Care Neuroscienceで「敗血症」について講演し、阿蘇Aso International Meetingでは「細胞接着」について話します。

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テーマ:教育 - ジャンル:学校・教育

とんでもなく優秀な青年(ポスドク)に、いろいろと教えられた。すでに、ニューヨークとボストンでファカルティーのオファーを得ているが、さらに条件の良いところを求めてハーバードにやってきた。彼はなんとあのK99/R00の最初の受賞者である。

NIHの”The Pathway to Independence Program (K99/R00)"は2006年度から開始されたポスドクの独立を促進するための新しいフェローシップ/グラントのハイブリッドプログラムである。K99フェーズではポスドク時のサラリーと少しの研究費を、そしてPIのポジションを得ればR00フェーズでは年間25万ドル(約~3000万円)が与えられる。これだけで研究室を運営するのは難しいが、雇用主の大学にとっては投資(スタートアップパッケージ)が少なくてすむのでインセンティブになるし、なによりK99/R00の審査は厳格でcompetitiveであるので、受賞すること自体非常に高い研究者としての評価になる。K99/R00の受賞は今後エリート研究者の王道となる可能性があるが、その第一期生約50名がアナウンスされた。約50名とは各州1人の計算になる。

先日K99/R00の受賞と食事をする機会があったが、やはりすごい。私より10程若い青年であるが、こいつにはかなわないと感じてしまった。

まず、まったく物怖じしない。セミナーのあとかなりタフな質問にもまったく動じない。質疑応答にもすきがなく、驚いたことにah, uh, um, you know, like..が filler wordsをほとんど使わない。学生の時に格闘技をやっていたと聞いてすこし納得したが.....

そして彼の最大の強みは、自分の研究の意義をサイエンスの大きなコンテクストにおくことに非常に長けているということだ。彼のテーマは簡単にいえば、免疫系のレセプターのシグナル伝達の制御機構の解明である。多くのセミナーでは、まず具体的に自分の研究している分子(例えばサイトカインレセプター)がいかにユニークで、医学的に重要(病気に関与している)であるかを最初の数枚のスライドでバックグラウンドとして話す場合が多い。しかし、彼は約50分のセミナーの最初の10分はむしろフィロソフィカルなaugmentで生物学での大きな問題は何かを話し、自分の研究している免疫系の分子はその大きな問題を解くためのモデルであると見事に言い切った。

道を究め、専門家になろうとする道のりで最も陥りやすい罠が”いわゆる専門バカ”である。”いわゆる専門バカ”かどうかの鑑別法のひとつが、自分の仕事の意義を大きなコンテクストにおくことができるかどうかである。

ただし、研究者が”いわゆる専門バカ”であっはならないかというと、必ずしもそうではない。”専門バカ”でもアウトプット(論文)があるかぎり、オープンソースのはしりでもあるPubMed searchでスマートなだれかが”専門バカ”の仕事をヒットし、大きなコンテクストに置いてくれるかもしれない。クレジットの大部分は持って行かれるかもしれないが、人類に貢献できることに違いはない。

PS: 余談ではあるが、かれはK99/R00受賞後数日間で100人以上のまったく面識のないポスドクからメールで、受賞した申請書を手本にしたいので見せてくれと頼まれたそうだ。その100人はとても厚かましいと思うが、ハングリーですごい!!(いい感じである)。



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朝日新聞の記事「日本のリード、否定が半数 科学技術20年後 本社調べ」(asahi.com 2007年04月30日)

20年後、日本の科学技術が世界をリードしているとは思わない――。ものづくり、IT(情報技術)から宇宙開発まで、中国、韓国、インドなど途上国が急伸するなか、半数の人が、将来の日本の科学技術の水準に厳しい見方をしていることなどが、朝日新聞社が3月31日から翌日にかけて行った全国世論調査(電話)で明らかになった。科学技術の発展に、期待より不安を感じる人が、女性では半数にのぼった.......



米国メディアでは「Science & Technology(科学&技術)」であり 「Scientific technology(科学技術)」とはまず言わない。

両者は似ているようで本質的に異なる。「Scientific technology(科学技術)」はあくまでも「技術」だが、「Science & Technology(科学&技術)」はScience(=知識・叡智)&Technology(=知の結晶としての技術)である。

日本の多くの報道は「技術」を強調しすぎるので、これは「技術屋としての理系」の問題にすり替えられてしまう。これは叡智の問題であり理系も文系も関係ない。

危機感を持ち自分の国の将来を批判的にみることは重要かもしれないが、自分の国が叡智で他者に劣ると考えるのは強烈な劣等感であり、カンフル剤としての効果を超えて、人を無気力にしてしまうのではないか。

油断はできないが、日本でのブログスフェアのエネルギーを見る限り、私は日本が20年後叡智で世界をリードしていないとは思わない。知は力であり、価値を生み出す。「ものつくり」はあとからついてくる。

テーマ:教育 - ジャンル:学校・教育

プロフェッショナル仕事の流儀で建築家・隈研吾氏は「負ける建築」という言葉で、「制約が創造を生む」と主張する。

”負ける”建築
独創的であると同時に、社会に受け入れられる建築を作るため、隈はある流儀を貫き通している。それが“負ける”建築。“負ける”建築とは、自己主張するのではなく、周囲の環境に溶け込むような建物を建てること。さらには、予算や敷地などの「制約」を逆手にとって独創的な建物を生み出すことを指す。



非常にプリミティブな例では、白紙の原稿用紙を渡され、何でもいいから好きなことを書けといわれるのと、テーマと制限時間を与えられるのでは、後者のほうがよい作文ができることが多いのではないか。

研究者は独立すれば「基本的に」好きなことを何でも研究しよいはずであるが、多くの場合「好きなことは」本人の知識量によってすでに制限されており(存在さえ知らないことを好きにはなれない)、さらに「好きでかつできること」は環境でますます限定される。

しかし、この制約(不自由)はどうやらそれほど悪いことではないと、隈研吾氏の話を聞いて思った。「The Paradox of Choice: Why More Is Less」で指摘されているように、あまりに多くの選択肢があると、人はかえって選択できなくなるパラドクスと同じく、自由度が大き過ぎると人の創造性の回路も麻痺してしまうのではないか。しかし(適度な)制約があると、それがキュー(Cue)となり創造性のカスケードが頭の中でトリガーされるのではないか。

少しちがった見方をすれば、制約とは「ピボット(軸足)」である。ピボットなしで動き回るとあっという間にトラベリングをとられてしまう。周りを見渡し、ナイスな(創造的な)パスやシュートを出すには、まずピボットをしっかりとつけなくてはならない。(しかし、ピボットが強すぎて固まってしまってはディフェンスに負けてしまう.....)


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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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