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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
日本の高校生「偉くならず、のんびりと」(日米中韓調査):
2007年04月26日のAsahi.comで、日本の高校生は覇気がないというようなニュアンスの調査結果が記事になっていたが、果たしてそうであろうか。「あなたは将来偉くなりたいか」という問いにどれほどの意味があるのであろうか。まずAsahi.comの記事を以下に掲載する。

「偉くなりたい」と思っている割合は他国の3分の1程度の8%。むしろ「のんびりと暮らしていきたい」と考えている子が多い――。日本の高校生は米中韓国に比べそんな傾向があることが、財団法人「日本青少年研究所」などの調査でわかった。「偉くなること」に負のイメージが強く、責任の重い仕事を避ける傾向も目立った。調査は昨年10~12月、日米中韓の千数百人ずつを対象に行われ、日本では10都道県の12校1461人に聞いた。

 日本の高校生の特徴がもっとも表れたのが、「偉くなること」についての質問。他国では「能力を発揮できる」「尊敬される」といった肯定的なイメージを持つ生徒が多いのに対し、日本では「責任が重くなる」が79%と2位以下を大きく引き離した。「自分の時間がなくなる」「偉くなるためには人に頭を下げねばならない」も他国より多い。このため「偉くなりたいと強く思う」は8%。他国では22~34%だ。日本の高校生は、他国よりも安定志向が強い。「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたいと、とても思う」は43%と、14~22%の他国より抜きんでる。

 将来の展望も控えめ。「大きな組織の中で自分の力を発揮したい」や「自分の会社や店を作りたい」が他国より少ないのに対し、「多少退屈でも平穏な生涯を送りたい」の多さが目立った。
「偉くなりたい」



私のコメントは3点ほど:

必ずしも米国の生徒の多くが「偉くなりたい」わけではない:
財団法人「日本青少年研究所」の行った調査結果の原本を購入していないので詳細はわからないが、アメリカの高校生の多くが「偉くなりたい」と答えるとは考えにくい。Junior Achievementが2007年に中・高校生を対象に行った調査で将来の職業を選択する理由として、次のように回答している。
1. 情熱(I am passionate about this career:56.6%)
2. 人の役に立つ(A career in this field will allow me to help people:21.3%)
3. お金(The amount of money that I can learn :12.4%)
4. その他(5.4%)
5. 無理せず楽に暮らしていける(Esay way to make a living :2.6%)
6. ステータスが高い(Having a prestige among my peer :1.7%)

「偉くなる」は「ステータスが高い」に比較的近いと思われ、割合はそれほど高くない。調査方法も対象も異なるので、公平に比べることはできないが、日本青少年研究所の結果とかなりちがった調査報告もあると言うことを意識されたい。

「偉くなりたいか」との質問は適切か?
「偉くなりたいか」はポジティブにもネガティブにとれる玉虫色の日本語である。

「尊敬される人物になりたいか」、「社会的ステータスの高い地位に就き、世の中を少しでも良くしたいか」、「人のために役立ちたいか」、「ビジネスで成功し、お金を稼いで寄付したいか」、「学問、芸術、スポーツで優れた業績を出し、世間から注目されたいか」、「自分の意見や行為が世間にプラスのインパクトを与えるような仕事をしたいか」、「世界平和に貢献したいか」、「人類の健康に貢献したいか」、「地球環境を守りたいか」、「自分の仲間や家族のために何かしたいか」のうちひとつでもYESならポジティブな意味での「偉くなりたい」である。

「偉くなりたいか」にNOは必ずしも悪いことではない。
ネガティブな意味での「偉くなりたい」、つまり健康な目的を欠いたステータスやパワーそのものに対する強い固執に対してNOと言えることは、むしろ美徳であり必ずしも悪いことではない。

アンケート調査は設問により結果が大きく変わる。(語感の調査など)その漠然さが調査対象である場合を除き、「偉くなりたいか」と言うような漠然とした質問は、より具体的で揺れの少ない設問に置き換えられるべきであると思う。また、必要以上にセンセーショナルに調査結果をネガティブに解釈することは調査対象である高校生に対してまったくポジティブなインパクトをもたらさない。もしネガティブな解釈をするのなら(記事で)その解決法・対処方を示唆するのが望ましい。

「偉く」なりたくない高校生が、「偉く」なりたい人たちより、ずっと「偉く」なることだって十分にある。


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Privileged Communication:
ゴードンカンファレンスでの発表や会話はすべてPrivileged Communicationとして取り扱われ、その内容を公にすることは許されない(写真撮影や録音も禁止されている)。これにより、原則としてアイデアやデータが盗まれることを防ぎ、まだ論文にされていない最新のデータをカンファレンスで共有することが望まれている。ここでの基本的な考えは「秘密は公にならなければ、だれも(当事者以外は)知ることができない」である。

Open Secret:
エンロンは巨額の不正経理・不正取引をひた隠しにし企業破綻したために、株主や従業員に莫大な史上最大規模の損害を与えたと一般には思われている。しかし、Malcolm Gradwellのニューヨークタイムズのコラム「Open Secret」では、まったく新しい視点が示されている;エンロンが不正経理・不正取引をしていた証拠はすべてタイムリーに公的にアクセスできる刊行物に記載されていた。しかし、その内容が膨大であまりに複雑であるため、内部告発以前にだれも不正を公の資料から指摘することができなかった。「秘密は公になっていたが、誰も(当事者以外は)知ることができなかった」

今後ますます多くの情報がネット上で公にアクセスできるようになるが、リテラシーがないものにはそれは依然「秘密」のままなのである。


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梅田望夫氏がブログ「My Life Between Silicon Valley and Japan」と「シリコンバレーからの手紙」で脳科学者・茂木健一郎氏の「世界中の情報をすべて整理し尽くすブルドーザーのようなグーグル敵手法」に”我々科学者の「ロマンティックな研究態度」が脅(おびや)かされているんだ、いやもう敗れてしまったのではないか”という懸念を紹介している。

グーグルの達成は、科学者が「知性の研究」に対してどういう態度を取るべきかについてシリアスな問題提起をしている、と茂木は言う。十年以上前、当該分野の研究者たちは、「人間の知能」と比べ遥かに単純なことしかできない「コンピュータの人工知能」の研究の先に「人間の知能」が生まれるようなことはなかろうと、そういう研究方向に見切りをつけた。でもグーグルは「とにかくやれることは全部やる」という姿勢で、人間の脳とはぜんぜん違うシンプルな原理に基づきながら、安価になったコンピュータ資源を無尽蔵に並べ、「世界中の情報をすべて整理し尽くす」というゴールを掲げ、既にあれだけのものを作り上げてしまった。
 我々科学者の「ロマンティックな研究態度」が脅(おびや)かされているんだ、いやもう敗れてしまったのではないか。「トンボのように飛ぶ」にはどうしたらいいかを科学者は未だに解明できないが、遥か昔に飛行機を発明し、人類は飛行機会を得た。それと同じことが今「知性の研究」の分野で起きつつあるんだ。お前たち、ロマンティックな研究をいくらやっていても「グーグル的なもの」に負けるぞ、時代はもう変わったんじゃないのか。茂木は若い研究者・学生たちをこうアジった。「ロマンティックな研究態度」とは、物事の原理を理論的に美しく解明したいと考える立場のことである。


ノーベル賞受賞者のFrancois Jacob氏が15年以上前に関西セミナーハウスで講演をされたときに、「Human Genome Projectのブルドーザー敵手法のサイエンスに対する脅威」についてコメントしたのを思い出した。Jacob氏は少数の科学者からなるグループがFace-to-Faceで議論しながら研究を進める従来の方法を「Night Science」(夜遅くコーヒーを飲みながらの仲間との議論から多くの新しいアイデアが生まれるので)、「Human Genome Projectに代表されるブルドーザー敵手法」を「Day Science」と呼び、Day Scienceがセンセーションを引き起こすことはあっても、Night Scienceは常に科学のコアな部分であり、絶滅することはないであろうと予測されていた。

医学・生物学分野での研究(Biomedical Research)に限れば、アメリカ政府は大型のプロジェクト”Day Science”も継続するが、基本的に1つの研究室単位の”Night Science”をできるだけ多くサポートしたいと考えているようだ。これはNIAIDのPorgram OfficerがSite Visitで当研究所に視察に来たときに聞いた話である。イラク戦争などの支出のためにNIHの科学研究費が削られているという現実が根底にはあると思われるが、NIAIDは例えば5つの研究室がチームを組んで申請するPPG(日本のCOEに相当)に年間2億5千万円使うよりも、5つの独立したR01で5千万円X5=2億5千万円をファンドする方を好むポリシーであるらしい。

WikinomicsではLinuxやWikipediaなどオープンソースとマス・コラボレーションのインパクをとりあげ、医学・生物学分野ではHuman Genome Projectを例にあげている。確かにHuman Genome Project ”Day Science”の業績と影響は大きいが、ノーベル賞クラスのイノベーションは個人レベルの”Night Science”で現在でも起こっている。茂木健一郎氏の「ロマンティック問題は」あえて直接議論しないが、個人レベルでのイノベーションが社会にインパクトを与え、社会から評価される限り、科学者個人はEmpowermentを実感し続けるであろと私は楽観的に考えている。

PS: アリタリア航空でボストンからミラノへ、そこからプロペラ機でピサへ、ピサから列車を乗り継ぎBarga-Gallicano駅に到着。駅からタクシーでゴードンカンファレンスの会場Cioccoへ。現在イタリアより更新しています。

ピサの斜塔
PISA 1


列車を乗り継ぎBarga-Gallicano駅に到着
Barga-Gallicanp 1

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この週末より1週間ゴードンコンファレンスに出席するためイタリアに出かけます。研究成果をHot Topicとして発表する機会が与えられたのでベストを尽くすつもりです。

コンファレンス中はインターネットへのアクセスが限られていますが、できるだけブログを更新するつもりでするのでよろしくお願いします。

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2025年に留学生100万人 教育再生会議が目標
(asahi.com: 2007年04月18日20時01分)

 政府の教育再生会議は18日、教育再生分科会(第3分科会)を開き、大学・大学院改革の一環として、海外からの留学生を2025年に100万人まで増やす目標を決めた。5月にまとめる同会議の2次報告に盛り込む方針だ。

 83年に1万人だった海外からの留学生は、当時の中曽根政権が打ち出した「留学生受け入れ10万人計画」に沿って国が各大学の宿舎建設などを支援してきたこともあり、03年には10万人に達した。しかし、少子化で日本人学生が減っているため、国策として留学生を増やす必要があるという認識で同分科会は一致した。



米国が移民を受け入れDiversityを保つことで、Science&Technologyの分野で卓越した競争力を維持したきた。これと同様に、海外から多様なバックグランドと資質を持った留学生を受け入れることで日本も中~長期的に競争力を高めることができる可能性が十分にあるだろう。この提案のキーはいかに「Openなアカデミックシステム」をつくるかであると思う。Opennessを決定する最大の因子は言語であろう。単純には「留学生が日本語を使う」または「留学生も日本人も英語を使う」のどちらかであろうが、少なくともScience&Technologyの分野では英語がHegemonyを握っているので、Openなアカデミックシステム(世界中の誰もが参加可能なシステム)は英語を共通言語にするのが実際的である。

Science&Technologyの高等教育・研究(主として大学)をすべて英語で行ことのポイントを整理すると:
1)授業はすべて英語で行い、教科書、レポート、試験などもすべて英語で行う。英語の上質な教科書例えばMoleculer Biology of the Cellなどを使う限りこれは十分に実現可能であろう。英語のフレームワークの方が理論的な文章には向いていると思う。教官も学生も必ずしも上手な英語を話す必要はない。教官が臆することなく日本人英語(私の場合は大阪弁英語)を披露すれば、学生は必ずついてくる。

2)大学の事務は日本語と英語で同じクオリティーのサービスを学生や教官に提供する必要がある。留学を経験された方なら気づかれたと思うが、言語で苦労するのは研究室や教室での会話だけでなく、事務 (Administration) とのやりとりである場合が多い。また、将来的には多くの優秀な留学生が日本で教官(教授)になるであろうから、常勤の外国人教官のサポートがますます重要になってくる。

3)優秀な留学生が長期的に日本に残らないと日本の競争力は高まらない。(留学生を受け入れることにより、日本人を活性化するだけでは不十分であろう)優秀な人材を引き留める最大のインセンティブがテニュアトラックの教官への登用であろう。これを可能にするためには研究申請書はすべて英語にする必要がある。(現在米国がそうであるように、優秀な留学生と日本人との間でアカデミックポジションを争うという問題点がより顕著にあるであう)
[その他、大学外(日常生活)での様々なサービスのインフラストラクチャーの整備が重要であるがここでは触れない。]

極端に聞こえるかもしれないが、Openなアカデミックシステムをつくる覚悟が成功の鍵であると私は信じている。Johns Hopkins 大医学部Chicago大MBAが日本を飛び越してシンガポールにキャンパスを作ったように、優秀な人材を呼び込むには(乗っ取られるかもしれないリスクを冒しつつ)Openなシステムを構築することが不可欠になるであろう(シンガポールが現在成功しているかどうかはまた別に論じる必要があるが....)。

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Virginia Techでのmass shootingの犯人がメディアに送りつけた映像がセンセーショナルに流れている。また、30人以上の人間を死に至らしめた過程の詳細もストーリーのようにメディアに現れつつある。もちろん事実を伝えるのがメディアの使命である。しかし、ここで高橋祥友著「自殺予防」(岩波新書)から私が学んだひとつの論点を的はずれかもしれないが投げかけたい。

「新聞報道とオーストリアの地下鉄の自殺に関する調査」で明らかになったように、マスメディアのセンセーショナルな自殺の報道は群発自殺を引き起こす。つまり、「潜在的に自殺の危険の高いひとが、センセーショナルな自殺報道に接したときには自殺願望が突然強まることは現実の問題である」私見であるが、自殺と他殺(殺人)はまったく別のものであるが、生命を軽視するという点においては自殺と他殺にはそれほどの違いはないとも考えられる。したがって、センセーショナルな他殺(殺人)の報道が、Copycat的な群発殺人を誘発するのではないかという懸念をもっている。

高橋祥友著「自殺予防」の自殺報道における報道のガイドラインが参考になることを望む。[自殺を他殺(殺人)と読み替えてもおかしくない項目が多いと思う]

1)短期的に過剰な報道をすることを控える。
2)自殺は複雑な原因からなる現象であるので、自殺の原因と結果を単純に説明するのを控える。
3)自殺報道は中立的に伝える。
4)自殺の手段を詳細に報道しない。
5)(特に青少年の自殺の場合には)実名報道を控える。
6)自殺の背後にはしばしば心の病が潜んでいるが、それに対して効果的な治療法があることを強調する。
7)具体的な解決の方法を掲げておく。自殺の危険因子や直前のサインなどを解説し、どのような人に注意を払い、どのような対策を取るべきかを示す。専門の医療機関や電話相談などについても必ず付記しておく。
8)日頃から地域の精神保健の専門家とマスメディアとの連携を緊密に取る。
9)短期的・集中的な報道に終わらせず、根源的な問題に対する息の長いとり組みをする。



皆様の意見を伺いたく、いくつかのHigh Profileなブログにトラックバックさせていただきました。



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VT

"horrific by MzMullerz (Flickr)"

1999年にColumbine High SchoolでのSchool shooting が起きたのは私が米国に来てまもなくのことであった。8年後の2007年4月16日、 Virginia州BlacksburgにあるVirginia Polytechnic Institute and State University(Virginia Tech)で最悪のmass shootingが起こった。多くのメディアがgunmanの心の闇や警察・大学の対応の不備を報じ始めているが、やはり最大の問題点はGun controlであろう。Gun controlに対する現時点でのメジャーな米国新聞社の対応は様々であるが、BBCがやや冷静に各社の社説を比べている

New York Timesは強くGun controlの不備を指摘している:

......the gravest dangers Americans face come from killers at home armed with guns that are frighteningly easy to obtain.



Los Angeles Timesは逆に護身のための拳銃保持の議論を持ち出している:

......Or, conversely, for the right to bear arms because Virginia Tech is a 'gun-free zone', and the Virginia Legislature last year killed a bill that would have allowed students to carry guns on campus.



Washington PostはGun controlのSchool shooting防止効果に疑問を投げかけるニュアンスである:

"Should metal detectors be ubiquitous in American classrooms and dormitories? And why are gunmen so apt to carry out their lethal rampages at American schools?"



わたしにはこの問題について多くを解説する立場にないかもしれないが、米国の大学で教育・研究に関わるひとりとして、無視するわけにはいかなかった。

命を落とされた方々のご冥福をお祈りします。

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新しいアイデアを継続的に提案していく力は、研究者としてサーバイブしていくために不可欠な能力である。しかし、いつかはアイデアが枯渇してグラントが書けなくなるのではいう漠然とした恐怖感があるので、新しいアイデアを継続的に提案していくスキル(but not 能力・才能)を身につける方法を模索している。そのなかで以前のエントリーでも書いたが、佐藤可士和氏の「答えは対象のなかにすでにある」という方法論に注目している。佐藤氏はSMAPのCDの広告やNTTドコモのシンプルな携帯電話のデザインを手がけた新進気鋭のアートディレクターである。Asahi.com フロントランナー(3/31)で佐藤氏をとりあげた記事は非常に興味深い。

Asahi.com フロントランナーのインタビューで「そんなにアウトプットを続けて、アイデアが枯れたり疲れたりしませんか。」との質問に答えて:

その不安は全くありませんね。僕の仕事は、相手から答えを引き出すことだから。....僕もそうでしたが、人間って、自分のやりたいこと、本当に思っていることほどなかなか分からないじゃないですか。企業もそうです。だから僕は、たくさん質問をして「本当はあなた、こうしたいんじゃないの?」ということをズバッとつかんで、鮮やかに解決したいんです。僕はむしろ、いろんな人と仕事をすればするほど、どんどん自分の中に知恵が入ってくる。そして、それが別の仕事で役に立つんです。



佐藤氏の最近の仕事である国立新美術館のロゴのデザインは「答えは対象のなかにすでにある」という方法論を端的に表している。素晴らしい!

今年1月、東京・六本木に開館した国立新美術館は、コレクションを持たない。そのため「性格がはっきりしない美術館」との批判を受けることも。だが、それは「絶えず展示が入れ替わり、常に新しい美術館」である、とも言えるはずだ。

 シンボルマークのロゴを、美術館の略称の「NACT」ではなく、あえて「新」の一字で表現したのは、それ故だ。



国立新美術館ロゴ


関連エントリー:
ニューロサイエンスからみた創造性とは:実験医学2007年3月号
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-28.html


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発展途上国で5歳以下の子供の死因の第一位は感染症や栄養失調ではない。

MITの研究者Amy Smith氏によると:

発展途上国では毎年200万人のこどもの命が、台所で燃やした薪から出る煙で失われている。

さらに悪いことに、薪を取るために森林が広範囲に破壊されている。(Jared Diamondが「文明崩壊」で書いているように、森林破壊は文明崩壊の大きな原因である。イースター島文明は森林破壊が引き金となり崩壊したと考えられている)

子供の煙中毒死と森林破壊の問題に挑むべく、Smith氏はMITの学生とチームを組みハイチに飛んだ。そこでチームは2つの問題を同時に解決するテクノロジーを開発した。それは驚くほどLow-TechであるがHigh-Impact でSustainableである。Smith氏のTED Conferenceでのトークはストレート&アップテンポでフリルがなく好感がもてる。

I'm going to take about wonders of (not carbon nano-tube, but) carbon macro-tube, which is CHARCOAL ...






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柳田充弘氏のブログ「柳田充弘の休憩時間」より:

新聞で見た、教育再生会議の試案のなかにはなかなか興味をそそられるものがありそうです。ただ、うろ覚えなので記憶間違いかもしれないのですが。
ひとつに、学部4年生が同じ大学のおなじ大学院の研究科に進学するのを極力阻止するというもので、これは野依座長のお考えらしいのですがわたくしもまったく同感でして、日本中でそうなれば画期的な変化が起きるかもしれません。完全にゼロは難しいということで、20%だけ認めるとかいう試案のようです。ゼロにすると猛反対がでて、つぶれると見ているのかもしれません。



1/23日のエントリー「研究者としての独立:Change or Die」で「Ph.D.~Postdoc」と「 Postdoc~P.I.」へのキャリアの節目では違った環境で違った研究テーマに取り組み研究者として武者修行することの重要性について書いた。したがって、「学部~大学院」でのキャリアの節目での環境の変化を促す提言は長期的に日本のScience&Technology分野での競争力を高める可能性があり、基本的には賛成である。

米国ではふつう研究者はそのキャリアで、少なくとも2回は研究テーマを変更することを必要とされる。1回目は博士号を取ったのち、研究室を移り新しい指導者のもとで、新しいテーマでポスドクをはじめ自分の知識と技術を広める。2回目は独立して研究室を始める時であり、今まで指導者のもとで行ってきた仕事に別れを告げ、自分の新しいテーマを探求する。

とくに、ポスドクからAssistant Professorとして独立して研究室を運営するときの変化は非常に大きい。米国では教官が退官してその研究室をスタッフごと引き継ぐということはない。空っぽの研究室とオフィスそして2年分の給料と研究費を与えられ、3年目からは外部資金を取ってきて経済的にも独立することを要求される。テーマに自由はなっかたが、給料は保証されていたポスドクとの大きな変化である。

変化に対する恐怖感は、挑戦する勇気を奪ってしまう研究者に取っての最大の敵である。私自身、ハーバードでの独立のチャンスを目の前にしたとき、成功への期待よりも、失敗への恐怖が大きく胃が痛くて眠れない日が続いた。

いったん人生・仕事・生活が安定してしまうと、その状態(Status Quo)を変えることには、常に恐怖と痛みが伴う。Alan Deutschmanは著書「Change Or Die」で、高脂血症と肥満のため狭心症でバイパス手術を繰り返し、食生活を改善しなければ、次の発作で確実に死に至るという死の恐怖を目の前にしても、多くの患者は「変化の恐怖と痛み」を受け入れられず、食生活を改善できないと述べている。

研究者がアカデミックな環境で生き残っていくためには、「変化」をmanageする能力が、サイエンスの能力と同様に重要であると思う。私自信も「変化」に対する苦痛・恐怖と日々格闘しているので、今後も「変化」と研究者のキャリアについて取り上げていきたい。



ここで関連したいくつかの問題を整理すると:
1)日本での研究者キャリアの流動化の低さの問題は教官(教授、助教授、助手;名称が古いかもしれませんが)を含めた問題であるので、同時に教官の採用についても流動性を高める提言が必要である(社会的問題は常にMulti-factorial である)。

2)教官の流動性を高める提言については、例えばプロジェクトとして国家予算100億円程度を計上し、教授を外部から雇用したときには部局(その学部・学科)に5000万円を、助教授・助手を外部から採用したときには100万円を助成するというのはインセンティブにはならないだろうか。部局はこの資金をプールして自由に独自のプログラムを立ち上げることができる。(任期制も必要であるが、部局の直接的なインセンティブとしては強くない。)

3)また、米国での流動性が高いのは国民性(文化的背景)やインフラの問題があるので、制度の一部だけまねてみてもExecutionが難しい可能性がある。(例えば米国人は頻回に引っ越しをするので、そのためのインフラは整備されているし、引っ越しは簡単で費用も安い。)

4)制度改革や政策変更は必ずしも「改善」ではなく、私の理解では「Experimentation」であるので、失敗もあれば成功もある。恩恵を受けるひともいれば、(短期的には)被害を被るひともいる。教育再生会議の方々はひとの人生を翻弄する可能性のある重大な決定をしていると認識してほしい。

関連エントリー:
プロフェショナル 仕事の流儀:コンピューター研究者 石井 裕
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-56.html

どのようにして新しい研究プロジェクトを始めるか:[Zoom Plus]
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-6.html

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Richard Rileyによると2010年に最も必要とされる職業のトップ10は、2004年の時点では存在すらしていない。今私たちは、「今は発明すらされていないテクノロジー」を使って「今は問題であるということすら知りえない問題」を解決するための「今は存在すらしない職業」に向けて学生を教育しているのだ。(ムービーShift Happensより)

According to former Secretory of Education Richard Riley...

the top 10 jobs that will be in demand in 2010 didn't exist in 2004.

We are currently preparing students for jobs that don't yet exist...using technologies that haven't yet been invented...in order to solve problems we don't even know are problems yet.



Extremely inspiring!!
この6分あまりのムービーは、一冊の読書に匹敵する。
世界を見る目が少しだけ変わるかもしれない。




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ヤフーの元マーケティングディレクターSeth Godinはマーケティングのグル(カリスマ)として知られ、彼の放つ言葉はいつもprovocativeであり、私は常に刺激を受けている。Sethが最近立ち上げた新しいブログThe Dip Blogで「あなたが世界で一番になれない7つの理由(Seven Reasons You Might Fail to Become the Best in the World)」を書いている。

1. You run out of time (and quit).(時間がなくなって途中でやめてしまう。

2. You run out of money (and quit).(資金を使い果たして途中でやめてしまう。

3. You get scared (and quit).(失敗するのが [または成功するのが] 怖くなって途中でやめてしまう。

4. You’re not serious about it (and quit).(実はそれほど本気ではなかったので途中でやめてしまう。

5. You lose interest or enthusiasm or settle for being mediocre (and quit).(情熱を失いほどほどで妥協してしまい途中でやめてしまう。

6. You focus on the short term instead of the long (and quit when the short term gets too hard).(長期的な視点をもっていないので、目先の困難にくじけて途中でやめてしまう。

7. You pick the wrong thing at which to be the best in the world (because you don’t have the talent).(自分のstrength(s)にマッチしないテーマや仕事にとり組んだため途中でやめてしまう。)


Sethによれば、そのnicheでトップになれないのは「きちんと計画できていない」か「ゴールにたどり着く前にやめてしまう」からである。

Most of the time, if you fail to become the best in the world, it’s either because you planned wrong or because you gave up before you reached your goal.



このSethのブログを読んで、私はカンブリア宮殿に出演したエイチ・アイ・エス会長澤田 秀雄(さわだ ひでお)氏が、村上龍に成功の秘訣はと聞かれ:

(何回失敗しても)成功するまでやれば必ず成功する。



という禅問答のような素晴らしい回答をしたのを思い出した。


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柳田先生がご自身のブログ「柳田充弘の休息時間」で理系研究者とくにポスドクをvitalizeし流動性を高めるひとつの方法として「博士取得者の実質的に優遇というか、それにふさわしい待遇を与える」ことを提案されている。これは非常に良い提案であると思う。この提案を見たとき最初の数分は「順序が逆で、まず博士課程のプログラムを充実させて、各界から必要とされる人材を創り出すことが先決ではないか」と感じた。しかし、実際に現在Ph.D. holderなしで動いているシステムに、Ph.D. holderを送り込むにはかなりの抵抗が予想されるので、まずは何らかの「仕掛け」が必要であると思う。(Ph.D. holderなしで動いているシステムはPh.D. holderを必要としないとは限らない;Ph.D. holderを投入することにより中~長期的にチームのパフォーマンスが上昇するというのがこの提案の仮説である。)Momentumを造り出すためには「仕掛け」作りと、プログラムの充実は同時進行する必要がある。

これに関連して3つのことを整理したい。
1)私自身Ph.D. holderであり、若いPh.D. holderの活躍の場所が増え、理系の地位が向上することは、長い目で見れば研究者の増加や研究費増大など自分の利益にもつながる可能性がある (disclosure)。

2)Ph.D. holderがチームのパフォーマンスが上昇させるためには、昨日のエントリーでも述べたTechnical detailsを抑え、ストーリーを語るサイエンス・コミュニケーションの技術が不可欠である。(でないと「専門バカ」というstigmaを払拭することはできないし、チームやサービスの受け手に貢献することは難しい)

3)「ポスドク」問題を含めすべての社会問題はmulti-factorialであるという視点を忘れてはならないといつも自分に言い聞かせている。多くのひとが抜本的な改革や提案を熱望するのは理解できる。また、シンプルで力強い提案が支持を集めやすい。しかし問題がmulti-factorialである限り、問題をピースに分解できてもそれらはinter-connectしており、単純化は魅力的であるが危険である。したがって、柳田先生のご提案もMagic bulletではないだろうが、長期的にScience & Technologyの分野での日本の競争力を高める戦略のポートフォリオのひとつに考慮する価値があると思う。

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サイエンス・コミュニケーションとは:研究者は研究室・大学・学会という専門家集団の中だけで活動するのではなく、サイエンスのバックグラウンドをもたない一般の人々に積極的にはたらきかけ、サイエンスの重要性をわかりやすく伝えなくてはならないというミッションである。サイエンス・コニュニケーションの目的はまず(1)Public Awarenessを高めることを通して理系の大学・大学院に進学する将来のサイエンティストを増やすとともに、政府の研究費増加のための布石をすることであるが、もっと大事なことは(2)政治家が科学的問題(医学、生命倫理、環境&エネルギーなど)で正しい判断を下せるための世論形成に貢献することであると思う。

米国の研究者はさぞかしサイエンス・コミュニケーションが上手であると思われるであろうが、実際には米国ではサイエンス・コミュニケーションは危機的状態にあるとMatthew C. NisbetとChris Mooney博士らはサイエンス誌2007年4月号「Framing Science」で訴えている。「科学的に正しいニュース解説を、メジャーなニュースソースを通して伝えればいずれは一般のひとにわかってもらる」と信じる(正義はいづれ勝つ的考えの)サイエンティストはあまりにナイーブであると警鐘を鳴らす。実際には(少なくとも米国では)多くの人々は政治的、宗教的にバイアスがかかっており、メジャーなニュースソースからサイエンティストが期待するような’正しい’情報を仕入れたりはしない。サイエンス・コミュニケーションの失敗により、国家が危機に瀕しつつある(瀕している)例として:
Global warming
Evolution & Intelligent design
ES cell
の3つを例に挙げている。

Global warmingに対してはpolitician アル・ゴアのキャンペーン「不都合な真実」は成功を収めているが、Global warmingに対しての米国においてのPublic Awarenessは現在十分に高いとはいえない。またbiologist Randy Olsonの反Intelligent designキャンペーン映画「Flock of Dodos」(パロディー)はサイエンス・コミュニケーションとして大失敗であった。

Nisbet & Mooney博士らの提案は:

In short, as unnatural as it might feel, in many cases, scientists should strategically avoid emphasizing the technical details of science when trying to defend it.

私のまとめ:サイエンス・コミュニケーションとは国家の将来をかけた戦いであり、その肝はTechnical detailsを抑え、ストーリーを語ることである。


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(ハーバード大学医学部留学・独立日記は夢X挑戦ブログに参加しています。)

「あなたは何のために研究(仕事)をしているのか」私は実はこの質問が一番怖い。この質問は「あなたの研究は社会にとって何の役に立つのか」とは少しちがう。前者は研究者のアイデンティティーや’マニフェスト’を問い、後者はプロジェクトの意義を問う。プロジェクトの意義は自分で作文はできるが、最終的には社会が決めるものである。しかし’マニフェスト’は最後まで自分で決めるものであり、自由であるぶん「目の前に白紙を広げられた」恐怖感がある。「臨床医は目の前の患者しか救えないが、研究は何万人の患者を救うことができる可能性がある。」というフレーズを借りていたこともあるが、深いところでしっくりこない。また研究者のアイデンティティーを臨床医を否定するところに置くというレトリックも好きになれない。

先日、研究者のキャリアについて文章を書かなければならない機会があったので、思い切ってこの質問にもう一度取り組んで見ようと思った。そして、’マニフェスト’としてtangibleな形にすることにより、切磋琢磨するための出発点にしてみたい。また、研究者としてのキャリアの不透明さに不安感を抱いている若い人が、これをテンプレートとして使い、少しでも視点をクリアにすることに役立つかもしれない。

研究者のマニフェスト(2007年4月version)

研究者のアカデミックキャリア・ゴールとはIndependent ThinkerとしてUniqueなリサーチプロジェクトを提案・遂行し、人類の健康の増進(NIHよりfundingを得ている場合)and/or 科学の進歩(NSFよりfundingを得ている場合)に貢献し続けるという目標に向けたSustainabilityのプロセスである。このプロセスは険しいが、多くの研究者にとって追求する価値のある素晴らしい道である。






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研究者やビジネスセンスパーソンは毎日のように何らかのプレゼンテーションを受けるであろう。欠点のほとんどないパーフェクトに近いプレゼンテーションを最後に見たのはいつだろうか。他人のプレゼンテーションの粗は本当によく目につき、批判したい衝動に駆られることが多い。興味深いことに、いくら練習しても自分のプレゼンテーションの問題点はなかなか自分ではわからないが、人のプレゼンテーションの問題点は驚くほど簡単に指摘することができる。

人の仕事を批判するのは容易い。そして重要なことは(A)どんな批判でもその仕事を改善する可能性がある(どんな悪意に満ちたネガティブな批判であれ、その仕事を改善する何らかのヒントを与える可能性はゼロではない)。しかし同時に(B)どんな批判も相手の自信とやる気を根こそぎなくしてしまう可能性がある(人からのひどく批判される恐怖は、人によっては死の恐怖に勝るという)。そして(A)>(B)の時のみ批判をすべきだと思う。別の言い方をすれば、(A)>(B)となるような批判の仕方をマスターすべきだと思う。

Seth's Blogによる「建設的な批判の3つのルール」とは:

1. No one cares about your opinion.....I don't want to know how you feel....What I want instead of your opinion is your analysis.

批判はOpinionではなくAnalysisで:あなたがそのプレゼンテーションから感じることをストレートに伝えても(あなたはすっきりするでしょうが)相手にはあまりメリットはない。あなたが「感じたこと」をさらに「考え」「分析」した結果を伝えよう。

2. Say the right thing at the right time.
どんなに正しく”建設的”な「分析結果」でも、相手の仕事の締め切り直前に、一からやり直すようなことを伝えるのは建設的ではない。

3. If you have something nice to say, please say it.
最後にかならず、小さくてもいいのでポジティブな一言を。その一言で人は救われる(私も何度も救われた。そして救うように努めている)。


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研究者は、ジョブハンティング、プロモーション、グラントなど仕事のほぼすべての局面において、過去の業績(どんな仕事を、どのレベルのジャーナルに発表したか)で評価される。昨日のエントリーで書いたように「過去のパフォーマンス(業績)が近未来のパフォーマンスを予測する最も信頼性の高いファクターであると思われる。」多くの研究者がたくさんの論文を少しでもインパクトファクターの高いジャーナルに発表し、CVを良くするすることが良いポジションを得るための必要条件であると認識している。Biomedical Science/Experimental Biologyの分野でのこの現状に反して、はるかに進歩の早いIT分野のエッジはまったく新しいルールで動き始めている。

梅田望夫の「My Life Between Silicon Valley and Japan

インターネットによってすべての人に学ぶ可能性がひらかれ、ブログが名刺になり、ネットでの評判がパワーとなる。過去に何をなしたかではなく、いま何ができるかだけが勝負の「新しい世界」の到来........(青字:引用)

IT業界でのこの新しいルールはそれほど遅れずにBiomedical Science/Experimental Biologyの分野でも適応されるだろう。もう米国では始まっていると考えたほうが安全かもしれない。「過去にどんな論文を発表したかではなく、今何ができるのか」という問いに即座にそして明快に答えられないと生き残れないだろう。私は今日梅田氏のこのメッセージを読むことができたことを非常に幸運であったと思っている。 真実に目を背ずに今日からMind-setを根本的に変え、上の問いに答えられるように準備を始めなくてはならない。


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「めざせネイチャー、ハーバード大学、研究留学」より

(米国でのCompetitiveな研究室に研究員/ポスドクとして採用されるためには)
日本で行った研究が、一流の雑誌、すなわち、インパクトファクターの高い雑誌に論文として掲載されていれば、評価が高い。例えば、日本の博士課程で行った研究が、ネイチャーに掲載されていれば、多くのラボで受け入れOKの返事が貰えるだろう。

その理由としては、もちろん、そういった一流の論文を書いた経験がある研究者は、新しいラボでも、一流の研究を達成できる可能性が高いと思われるからである。また、一流の論文を書いた研究者であれば、研究費や奨学金を獲得しやすいので、経済的な面でもラボの戦力となることが期待される。
(青字:引用)

採用後に高いパフォーマンスを発揮する研究者(学生、ポスドク、ファカルティー)を事前に同定するのは非常に難しい。これはどの業界でも同じであり、優秀な人材(将来的に高いパフォーマンスを発揮する人材)をリクルートすることはすべてのorganizationにとってcriticalな問題であるが、そのような人材を同定することは容易ではない。最終的には面接官の経験に裏打ちされた「人を見る目」に勝るものはないと思われるが、tangibleなものの中では、過去のパフォーマンス(業績)が近未来のパフォーマンスを予測する最も信頼性の高いファクターであると思われる。しかしながら、その相関係数は私見ではそれほど高くない。r=0.3ぐらいであろうか.....

したがって、tangibleなものだけで判断することはできず、「めざせネイチャー、ハーバード大学、研究留学」さんの書かれているように「食事やお茶をしながら...(の) 雑談 (でにじみ出る)..人柄が非常に重要なポイントとなる。」(青字:引用)インタビュー当日は、雑談といえども仕事・サイエンスに関連したこを話すことがほとんどであり、その受け答えのなかで候補者の「サイエンスに対する熱意」「問題解決能力(的を射た質問をする力)」「知識の深さ(特に自分の専門領域外)」などを評価するヒントがある。


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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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