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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
Seth's Blogより
あなたのアイデアが受け入れられない2つの理由:

"It's been done before"(誰かがすでにそれと同じことをやっている)

"It's never been done before"(誰もそれをやったことがない)

あまりに斬新なアイデアや才能は往々にして、世間の側に受け入れる力量がなく、長期間(または永遠に)日の目を見ない。例えば、ゴッホの作品が真に評価され始めたのは彼の死後10年以上たってからである。

のちにノーベル賞を受賞した仕事のいくつかはNatureなどの”トップジャーナル”にレジェクトされている。パーティーでNatureの編集長は、自分の論文がレジェクトされたことを嘆く研究者に対して「それは、良いサインだ」と言い放ったことがあるとか......

”トップジャーナル”にアクセプトされるためには、アイデアの斬新さを適度にコントロールしなくてはならない(もしそんなことができるなら)。

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NHKの「プロフェショナル 仕事の流儀」でMIT教授でコンピューター研究者の石井 裕氏の生き様に感銘を受けた。石井氏は「Tangible」というコンピューターの「Virtualな世界」とは一見相反するような概念を打ち立てたアグレッシブでオリジナリティーにあふれた研究者である。

彼の発した数々の言葉:
「出過ぎた杭は誰にも打てない」
「オリジナルこそ、命」
「WHY?(なぜ)」
「自分は凡人」
「超えるべき壁は、自分」
はもちろん非常に印象的であり、番組のホームページで取り上げられている。

しかし私が最も感銘を受けたのは、石井氏が38歳のときに、MITのメディアラボにリクルートされ赴任した時に、元MITメディアラボ所長 ニコラス・ネグロポンテ氏が石井氏にかけた言葉である:

(今までの)実績を捨て、新しい研究で勝負しろ

さらに、インタビューでネグロポンテ氏は次のように語っている。

It is very Japanese to be incremental.

It's also very Japanese to build on one success the next success

It's was culturally perhaps the more natural thing for him to do is to continue what he had been doing before

….(To breakthrough, he should) not just work on the previous project but really take the chance to start over…..


ネグロポンテ氏の言葉に目から鱗が落ちる思いがした。私は日本人研究者は「conservative」というのはどうもしっくりこず、適切な表現探していたが、「incremental」は実に本質をついている。「incremental」は着実に一歩一歩進むことで、日本では一般にむしろポジティブな意味合いがあるかもしれない。しかし、エッジで生き残ろうと思えば「incremental」ではだめなのだ。

新しく独立したプロジェクトを始めるときには、過去の業績、過去にエスタブリッシュした実験系、reagentsを利用して、とりあえず何らかの成果を素早く出したいと思いがちである(play safe)。しかし、play safeしたいその時こそ、実は全く新しいことを始められる数少ないチャンスの時なのである。ゼロ近くから新しいことを始めれば(experimental biologyでは)数年は業績が出ないであろう。しかしbreakthroughするためには、そのストレスと失職の恐怖に耐える信念と情熱が必要条件ではないだろうか。

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3月25日のエントリー「スーパーポスドク」で研究者の創造性のピークが30歳台半ばのキャリアのかなり早い時期にくるという意見を紹介した。

40歳台の著者はこの意見を認めたくないので、反証するデータを見つけ出した。3月22日ウォールストリートジャーナルに掲載されたDavid Wessel氏のコラムによると投資などのFinancial Decision-makingの能力は50歳台にピークが来るという。 Financial Decision-makingの結果の正しさと年齢の関係を調べた複数の研究結果を平均したところ53.4歳に能力のピークがあるとしている。

They (the economists) found that middle-aged adults tend to borrow at lower interest rates and pay fewer fees than younger and older adults. The age at which consumers are least likely to make financial mistakes: a few months past their 53rd birthday, despite all the pressures that accompany middle age. The economists call it "the age of reason."
(青字:上記コラムからの引用)


同コラムによるとエコノミストの迅速に状況を把握・認識する能力は20歳台から徐々に衰退していくが、経験から来る判断力は年齢と共に上昇し、この2つの能力の総和が50歳台でピークになるのではないかと考えられている。

研究者として独立した時にはもう創造性のピークを越えているというのでは楽しくない。研究者も瞬発力よりも経験から来る判断力が大きく影響する職種であると思う。研究者50歳台ピーク説のほうが、30歳台ピーク説よりもっともらしいのではないか(そう願う)。

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Ph.D. よりポスドクを経ずに独立したラボを持つスーパーポスドクについて Cell誌 (128: 1023-6, 2007)で解説されている。

Superpostdocs Reach for the Star (by Andreas von Bubnoff)

In the US and now also in Europe, a growing number of special fellowship programs, sometimes called “superpostdocs,” offer newly minted PhDs instant independence and enable them to undertake pioneering research. Job prospects for fellows are rosy, but such early independence is not for everyone.
(青字:引用)


Jim WatsonやDavid Baltimoreが30台半ばでノーベル賞を受賞したことを例にとり、創造性のピークはキャリアのかなり早い時期に来るという考え方(仮説)がある。しかし米国では、NIHのファンディング状況の悪化、研究者数のファカルティーポジションに対する相対的増加、研究内容の複雑化など複数の因子が影響していると思われるが、研究者が独立した研究室を開始できる年齢は徐々に高くなり現在は40歳前後である。

このトレンドに拮抗すべく、米国とヨーロッパの一部の大学・研究所では”スーパーポスドク”と呼ばれる優秀なPh.D.がポスドクを経ずに(または非常に短いポスドクの後すぐに)独立したラボを持てるようなプログラムを導入している (下記)。実験的ではあるが非常に刺激的な試みであり、上記の仮説をサポートする結果が数年後には得られるかもしれない。しかし、”スーパーポスドク”は現在そしておそらく将来的にもスーパースターを発掘するための特別なキャリアパスであり、一般化する可能性は低いのではないだろうか。

”スーパーポスドク”の問題点として、ポスドクを経験しないために人間関係などラボ運営のためのソフトスキルが不足するのではないかとの懸念がある。しかし、私見ではあるがPIとして人を使う能力は、実際にPIとして人を使わないと決して身に付かない。30人あまりの大きなラボで中間管理職(Instructor)として30人あまりの面倒を1年間みたことがあるが、PIとしてたった1人に対してでも最終責任を負うことのほうが比べものにならないほど難しい。

ソフトスキルは実際に自分でトライし失敗を重ねるしか身に付ける方法はない。

”スーパーポスドク”プログラム [Cell 128: 1023-6 (2007) より]
IMP Fellowship Programme; http://www.imp.ac.at/fellows/index.html
Sir Henry Wellcome Postdoctoral Fellowship; http://www.wellcome.ac.uk/node2151.html
Cambridge St. John's College Research Fellowships; http://www.joh.cam.ac.uk/research_fellowships/
Harvard Junior Fellowship; http://www.socfell.fas.harvard.edu/
Carnegie Institution Staff Associate Program; http://www.ciwemb.edu/pages/staffassoc.html
Whitehead Fellows Program; http://www.wi.mit.edu/research/fellows/index.html
Bauer Fellows Program at Harvard; http://sysbio.harvard.edu/CSB/research/fellows.html
Rowland Junior Fellows Program at Harvard; http://www.rowland.harvard.edu/rjf/index.php
Lewis-Sigler Fellows at Princeton; http://www.genomics.princeton.edu/topics/lsfellows.html
UCSF Fellows Program; http://www.sdbonline.org/pdf/UCSF_Fellows.pdf
Sara and Frank McKnight Fellowships in Biomedical Research at UT Southwestern Medical Center; http://www.mcknightlab.com
CalTech Broad Fellows Program in Brain Circuitry; http://www.broadfellows.caltech.edu/
Janelia Farm Fellows; http://www.hhmi.org/research/fellows/


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ビジネスパーソンが日経やニューヨークタイムズを毎日欠かさず読むことと同じく、研究者が毎日科学雑誌を読んで最新の情報を幅広くカバーすることは仕事上不可欠である。しかし、科学雑誌はインパクトファクターを持つジャーナルだけでも現在6000以上あり、いかに効率よく最新の科学論文をチェックするかが、これからのナレッジベース (知識・情報を持つものがリードする) の社会では重要なカギとなる。

そこで、実験医学2007年4月号のNews & Hot Paper DIGESTで紹介した「最新の科学論文を効率的にチェックする」ためのオンラインリソースの記事を少し補足したい。私は幅広く医学・生物学領域の雑誌をRSSを用いて新しい論文がパブリッシュされるごとに Google Readerで拾って基本的にすべてのタイトルに目を通すようにしている。私のRSSのリストは現在:

Cancer Cell: http://www.cellpress.com/webfiles/feeds/rssfeed.ccell.xml
Cell: http://www.cellpress.com/webfiles/feeds/rssfeed.cell.xml
Cell Migration Gateway: http://www.cellmigration.org/cmg_update/rss.rdf
Immunity: http://www.cellpress.com/webfiles/feeds/rssfeed.immuni.xml
Journal of Cell Biology: http://www.jcb.org/rss/current.xml
Journal of Clinical Investigation: http://www.jci.org/rss/recent.xml
Journal of Experimental Medicine: http://www.jem.org/rss/recent.xml
Molecular Cell: http://www.cellpress.com/webfiles/feeds/rssfeed.molcel.xml
Nature: http://www.nature.com/nature/current_issue/rss
Nature AOP: http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/rss.rdf
Nature Biotechnology: http://www.nature.com/nbt/current_issue/rss/index.html
Nature Cell Biology: http://www.nature.com/ncb/current_issue/rss/index.html
Nature Genetics: http://www.nature.com/ng/current_issue/rss/index.html
Nature Immunology: http://www.nature.com/ni/current_issue/rss/index.html
Nature Medicine: http://www.nature.com/nm/current_issue/rss/index.html
Nature Methods: http://www.nature.com/nmeth/current_issue/rss/index.html
Nature Nanotechnology: http://www.nature.com/nnano/current_issue/rss/index.html
Nature Neuroscience: http://www.nature.com/neuro/current_issue/rss/index.html
Nature Protocols: http://www.nature.com/nprot/current_issue/rss/index.html
Nature Structural & Molecular Biology: http://www.nature.com/nsmb/current_issue/rss/index.html
New England Journal of Medicine: http://content.nejm.org/rss/current.xml
news@nature.com Biotechnology channel: http://www.nature.com/news/channels/biotechnology.rdf
Science: http://www.sciencemag.org/rss/current.xml

である。これに加えサイエンスニュース、キャリアデベロップメント、GTD (Get Things Done)関連のブログの RSSをいくつも登録しているので、毎日100以上のタイトルに目を通すことになる。

この方法の最大の長所は、Eメールと同じように随時目を通していない記事 (Unread) の数が表示され、チェックするごとにその数が減って行くことである。毎日100+ (Google Reader は100以上は100+と表示する) から始めて、一日の終わりに Unreadをゼロにするごとで「やり遂げた」という充実感と成功体験が味わえる。

バケツを空っぽにするようなこの充実感が論文を読むドライビングフォースとなる。

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マサテューセッツ州のケープコッドでWhale watcing (鯨) や Seal watching (アザラシ) のツアーで感動して以来、野生の動物を見るツアーは各地で機会があるごとに参加している。仕事のことを忘れて頭をかっらぽにするには映画やスポーツでは不十分で、やはり大自然の迫力を借りる必要がある。また私の場合は(ある意味)大自然や野生動物に興味があるというライフスタイルを演じているだけかもしれないが、5~10年も演じ続ければいくらかは人間力の肥やしになると信じている。ツアー以外にも、National Geographic Channel、Discovery Channel 、Novaなどの大まじめなドキュメンタリー番組を継続して見るようにしている。

3/19のエントリーで National Geographic Channelのガラパゴスを紹介したが、本日はDiscovery Channel: Planet Earth の約1分のプレビューを紹介する。全編美しい自然と野生の生物の映像であるが、獲物を捕獲して海面より飛び上がるサメは圧巻である。(高解像度のプレビューはこちらより



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スキルアップをして、自分の可能性の選択肢を広げていくことが一般的には良いキャリアビルディングであるように思われている。しかしこれとは全く逆に、エキスパート/プロフェッショナルへの道を歩むには、数多くの選択肢を捨て1つに絞ることが要求される。

アスピレーション株式会社のポドキャスティング「ビジネス書を耳で読む」で紹介された大久保幸夫著「ビジネス・プロフェッショナル―「プロ」として生きるための10話」によると、エキスパート/プロフェッショナルになるための重要なファクターに、スポーツ選手のように若いうちに「腹を決めて」他の職業の選択肢を絶ち、つぶしのきかない背水の陣の状態に自分を追い込むことがある。

「職業」,「就職先」,「大学」,「研究室」,「留学先」,「研究テーマ」,「研究手法」など人は様々な選択をしなければならない。ネットや人づてに多くの情報が比較的簡単に得られるので、それぞれの選択肢を多角的に検討することは難しくない。しかし、将来の可能性を確実に予想することは出来ないので、たった一つのBest Choiceを合理的・客観的に導き出すことは出来ない。100% Failure-proof choiceは存在しない。最後は自分が主観的に決定しなければならない。

可能性や選択肢が数多くあるという状態では、余裕を感じ精神衛生上良いかもしれないが、エキスパート/プロフェッショナルの道をめざすなら早い時点で「腹を決め」なければならない。

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National Geographic Channel でガラパゴス諸島の自然と生物のドキュメンタリーが放映される。
約2分のプレビュー・ムービーだけでも、癒しのひとときが楽しめる。

数分の寄り道する時間がある方は、ぜひどうぞ。

http://channel.nationalgeographic.com/channel/galapagos/index.html

National Geographic

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その道でのエキスパート/プロフェッショナルになりたいと、日々切磋琢磨を志しているが、ここにそのプロセスを見事に表現したことばがある。

(堀内 浩二氏のブログ発想七日より引用)
真のエキスパートに至る9+1のステージ
あまりにも共感したので即訳。エキスパートになるための道のりがここにある。

1. 興味を持てる分野を発見する (Discovery and interest)

2. 最初は自分で学ぶ (Early self-teaching)

3. きちんとした教育を受ける (Formal education)

4. 現場で恥をかく (Humiliation)

5. 真剣に挑戦する (Serious attempts at professional improvement)

6. 成功体験を得る (The beating of local rivals)

7. 専門家としての自信を付ける (Youthful arrogance.)

8. 井の中の蛙であったことに気づき、打ちのめされる (Reality check and crashing back down to Earth)

9. 全てを知ることはできないことを理解する (Realizing that you'll never come close to knowing everything)


"The nine stages to becoming an expert" - Paul's Tips より、やや意訳。
過去のイタイ記憶が甦ってきてしまいました…。思考や分析のフレームワークが好きでいろいろとリストを収集していますが、こういう物語性のあるリストは少ないですね。
良いリストではありますが、エキスパートの道はステージ9で終わり、ということでもないと感じます。というのは、そこから

9-1. 「まだまだ勉強中ですから…」を続ける

9-2. それでも自分の見解を世に問うていく


という選択があり、専門家の役目というのは後者だと思うからです。そこで自分向けに

10. それでも、自分の見識を披露する(謙虚ではあるが臆病ではない)
を、加えておきたいと思います。



解説の必要がないぐらいに、エキスパート/プロフェッショナルへと 切磋琢磨 するプロセスの本質をうまくついる。
堀内氏が付け加えられた
9-1. 「まだまだ勉強中ですから…」を続ける
9-2. それでも自分の見解を世に問うていく
10-2. それでも、自分の見識を披露する(謙虚ではあるが臆病ではない)
がまた素晴らしい。

エキスパート/プロフェッショナルへの道は八分目あたりからぐっと険しくなる。皆、不完全な自分を曝したくないので、ひたすら努力を重ね完璧を目指す。しかし、本当の成長は不完全な自分を曝し、多くの建設的な批判からしか得られない。六分目あたりから恐れずに不完全な自分を曝しあえて批判を受けよう。その中には少なからずエキスパート/プロフェッショナルへの成長のヒントがあるはずだ。



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筒井康隆原作・今敏監督作品「パプリカ」がアメリカでは5月より公開になる。日本ではすでに公開されているらしいが、日本版とアメリカ版の映画予告編のトーンの違いは興味深い。

まず、 日本版は「本格サイコ・サスペンス」としてのスリリングなトーンに仕上がっている。



日本版の別のバージョンも同様にスリリングなトーンである。
http://www.youtube.com/watch?v=ORkaY-deORs

これに反して、アメリカ版は一転してファンタジー調である。



引用されているニューヨーク・タイムズのコメント:

“Evidence that Japanese animators are reaching for the moon, while most of their American counterparts remain stuck the kiddie sandbox.”

からわかるように、アニメーターの技術の高さを全面に出している。

アニメーション技術は間違いなく日本のStrength である。

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研究者として最も苦しい時間はNIH R01グラントを書いているときかもしれない。書き始めるまでが一番しんどい。コアとなるアイデアを考え抜いて、文章にするプロセスは莫大な精神エネルギーを要する。以前のエントリーで新しいアイデアとは基本的に現存するアイデアの組み合わせであると書いた。しかし、漠然とした頭の中でのイメージや概念が湧くという状態から、それを他人を説得できるような文章にするというプロセスには大きなギャップがあり、これが (私の場合には)「生みの苦しみ」に相当する。この「生みの苦しみ」のプロセスで、考えて考えて考え抜かなければ決していい物は生まれない。

NHK プロフェッショナル・仕事の流儀で漫画家・浦沢直樹の壮絶な創造の現場を見た。浦沢はスタッフと共に連載1回分の仕事を1週間程度で仕上げるが、最初の2日間はむ「ネーム」と呼ばれる白紙に向かい大まかなコマ割と下絵・セリフを書き込む作業を自分ひとりで行う。この無(白紙)から有(ストーリー)を生み出す作業が最も芸術家(漫画家)にとって過酷であり、その人の創造性が問われる。この創造のプロセスは非常なストレスと無理な姿勢を余儀なくし、これを長年繰り返してきた浦沢氏は肩を脱臼し漫画家生命の危機に直面する。漫画家とは格闘家である。

Great Thinkerは学術の世界の中だけではない。コカコーラの元CEO Roberto Goizueta はコカコーラを全米1の企業にしたビジネスパーソンであると同時に、そのCreative Thinkingの実践者でもあった。 Goizueta氏の名言のひとつに

"You can think through a problem so hard that you develop a sweat.“

がある。

頭が熱くなり、汗をかくまで考え抜く。これが私の現在の目標だ。


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National Public Radioの This I Believeというラジオプログラムが密かな人気である。これは日本の「青年の主張」を想像していただくとわかりやすいが、年齢・性別・人種・社会的ステイタスを問わずリスナーが自分の主張を短いエッセイにして応募し、選ばれればラジオの電波にのせて、自分が読むエッセイが全米に流れるという何のひねりもない非常にストレートな番組である。トリッキーなところがないだけに、メッセージがとても力強い。

スピーチは5分程度であり、mp3 fileがポドキャストとしてダウンロードできる。また、ウエブでトランスクリプトも手にはいるので英語の勉強の教材としても適している。研究者の英語力向上の目的はまさに自分の主張を伝えることであるので、CNNニュースや一般の英会話番組よりすっと適していると思う。また表現や内容がとてもよく、2回に1回は感動する。

一般の人のエッセイに混じって、政治家、芸術家、起業家、科学者もエッセイを読んでいる。私のおすすめは、 パウエル元国務長官の「The America I Believe In」だ。両親がジャマイカからの移民であるパウエル氏が、移民を幅広く受け入れてきたアメリカに対する愛国心をノスタルジーをこめて語っている。その一節を紹介すると:

“I believe that our greatest strength in dealing with the world is the openness of our society and the welcoming nature of our people. A good stay in our country is the best public diplomacy tool we have.”
ーGeneral Colin Luther Powellー

また、最後の一節のブラジルからの交換留学生がシカゴのレストランで遭遇した出来事もこころが暖まる。

This I Believe は英語を勉強しながら、心も満たされる。ぜひお試しあれ。



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雑誌 Natureを出版する Nature.comの関連サイトNature networkはグローバルに研究者が情報交換・発信できるオンラインフォーラムである。 Nature networkではハブとして Nature network Boston と Nature network Londonがある。 Nature network Bostonで「Top Boston-based Nature authors」というボストンの科学者で誰が最も多くNatureに論文を載せたかというランキングがあった。

氏名     (所属)          [Nature 論文数 (2002-2006)]
1. Eric Lander (Broad Institute/MIT/Harvard Medical School) [31]
2. Mark Daly (MGH/Harvard Medical School) [17]
3. David Altshuler (MGH/Harvard Medical School/Broad Institute) [16]
4. Rakesh Jain (MGH/Harvard Medical School) [15]
5. Todd Golub (Dana-Farber/Harvard Medical School/Broad Institute) [13]
5. Norbert Perrimon (Harvard Medical School) [13]
5. Steven Gygi (Harvard Medical School) [13]
5. Ulrich von Andrian (CBR Institute/Harvard Medical School) [13]
9. Jonathan Butler (Broad Institute)[11]
9. Robert Langer (MIT) [11]
9. Leonard Zon (Children’s Hospital/Harvard Medical School) [11]
9. Michael Zody (Broad Institute) [11]

このうち5位にランクされているDr. von Andrianはかってオフィスが隣同士であり、私が独立してすぐの時にグラントのことで相談にのってもらった。わたしのR01グラントが通ったことを彼に報告にすると、Dr. von Andrianは言った:

Congratulations! Now you can play a game.

クレディセゾン社長林野宏氏が「勝つ人の考え方 負ける人の考え方」で仕事におけるゲーム感覚の重要性を指摘しているように、サイエンスでもビジネスでも卓越したパフォーマンスを発揮し続けるひとはゲーム感覚をもちあわせている。



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元ヤフーのマーケティングディレクター セス・ゴーディン (Seth Godin) のブログ「Is hiding a growth strategy?」より:

wendysアメリカでは食べ物のカロリー表示が義務づけられ、カロリー過剰摂取による肥満を抑制しようとしているが、ハンバーガーチェーンWendy'sのニューヨーク店では、うまく規制をかいくぐってメニューにカロリー表示をしなくて良いようにしている。


porscheニューヨークタイムズに掲載されたポルシェCayenneの広告では、性能とスペックを表す細かなデータを大量に載せているが、燃費に関するデータだけは載せていない。


「消費者に本当に重要なインフォメーションを必死になって隠しても、いずれそれは市場であきらかになり、その企業が成長を続けることは非常に難しい」とセスは言う。


Strength-based アプローチでは、Weakness(es)の克服に過度にエネルギーを注ぐことを良しとしない。さらに、セスの言う企業の成長と同じように、 Weaknessを隠していては人間的成長も遅れてしまう。自分のStrength(s)を中心にキャリアを築くかぎり、Weakness(es)はむしろ人間的魅力の一部となる(不完全さは時として人を惹きつける)。



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実験医学2007年3月号仙石慎太郎・三浦有紀子両氏による「プロフェッショナルとして博士号取得とキャリア設計を考えるマネジメント力開発ガイド」の連載が始まった。従来のアカデミックキャリアやリサーチキャリアとは違ったコンサルタントや政府の政策シンクタンクなどの比較的新しいノンリサーチキャリアパスを紹介されるであろう。コンサルタントついては私も「理系研究者の新しいキャリアとしてのコンサルティング・ファーム」で紹介した。

理系研究者のキャリアパスの選択の幅が広がることはマクロな視点では間違いなく良いことである。これらの新しいキャリアパスについて十分に情報を得ることはもちろん個人のレベルでは非常に重要である。そして個人のレベルでの最終的な質問は「ではどの道を選ぶのが良いか」ということであろう。もちろん答えは「It’s up to you」あなた次第である。また、これと同じぐらい正しい答えは「正しい答えはない(またはひとつではない)」である。The Paradox of Choice: Why More Is Less by Barry Schwartz に述べられているように、「一般には選択肢が広いほど消費者は幸福である(満足度が高い)と考えられているが、実際には選択肢が多いと消費者は選択することに疲れ果て、選択できなくなる。」とくに、正しい答えがない場合や価値観によりベンチマークが異なる場合は選択は非常に難しい。今後は理系研究者はキャリアパスの「選択肢がない」から「選択肢はあるが、選択しきれない」という状況に直面する可能性がある。

ここでは、Food for Thought としてTVドラマ「僕と彼女の生きる道」での小雪の言った台詞を引用してこの問題の答えを模索してみたい。

ドラマ「僕と彼女の生きる道」では、大企業に勤務し仕事一筋で出世にしか興味のない小柳徹朗 (30) (草なぎ剛) に愛想をつかして妻小柳加奈子 (30) (りょう) は娘凜 (7) (美山加恋) をおいて家を出る。徹朗は凜の家庭教師の北島ゆら (29) (小雪) とのふれあいを通して家庭の大切さを認識し、人間性を取り戻していく。そしてある日、家庭のために小さい会社に移り別の仕事をするかどうか迷っている徹朗にゆらはこう言う:

「大切なのはどの道を選ぶかではなく、選んだ道でどう生きるかでしょう。」


ポイント「キャリアパスの選択には普遍的な答えがないので、成功も失敗もない。ある程度悩んだあとは勇気をもってGut Feelingで選択すれるしかない。あとはそのキャリアで高いパフォーマンスを発揮することに集中すればよい。そうすれば、道は開かれる。」


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Challenge 「中年研究者によるホームページ作成」
私のまわりのPIはホームページ作成は専属のアシスタントやウエブデザイナーを雇っている。しかしここは新しいスキルを学ぶ機会と考え自分でやることにした。

Action #1「情報収集と実行 」
大学のIT部門や他のラボのウェブ担当者に相談してみると皆 Adobe Dreamweaver を使っているとのこと。早速 Dreamweaverをインストールしてホームページ作成を開始する。しかし、HTML, CSSなど全く初心者の私にとってはかなりきつい。テュートリアルで学ぼうとするがラーニングカーブは限りなく水平に近い。

Action #2「フィードバックと計画修正 」
ここで我慢強く HTML, CSSなどのコードを勉強する方法もあるが、基本はStrength-based アプローチである。Weaknessの克服に投資するのは得策でない。そこでコードをしらなくても、マック上でWYSIWYG (What You See Is What You Get) 方式でテンプレートを用いてWebデザインできるソフトを検索してみると:

RapidWeaver (Realmac Software)
iWeb (Apple)
Sandvox (Karelia Software)

などにたどり着いた。

この中でテュートリアルの充実、テンプレートの豊富さ、カスタマライゼーションの高さから RapidWeaverを選んだ。

RapidWeaverとBlockとColumnの2つのPluginをまとめて購入しダウンロード。ほぼ30分のテュートリアルムービーで使い方を学んだ後、ほぼ1日でホームページの初版完成。ウエブ担当者やIT部門のスタッフ数人に批評してもらい、修正を加えてほぼ1週間で完成する。

The Shimaoka Lab Homepage
http://www.cbrinstitute.org/labs/shimaoka/index.html

ポイント(こんな小さなことからもいろいろ学べる!)
#1. Action-oriented アプローチ: 準備不足でも恐れず動きだし、失敗の過程で学ぶ (時として高くつくが、Inaction よりはるかによい)。
#2. 基本はStrength-based アプローチである。Weaknessの克服には過度には投資しない。



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あなたは成功をどう定義しますか。

Sir Winston Churchillによると

Success is the ability to go from one failure to another with no loss of enthusiasm.


失敗をおそれて挑戦できなくなった時は、このチャーチルの言葉を思い出すようにしている。

皆さんにも、そんな言葉があればぜひ教えてください。





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昨日のエントリーで洋書のハードカバーノンフィクションを Audio Bookで予習したのち、読書すると挫折することなく容易に読み通すことができ、 洋書読破という成功体験を得ることができると書いた。

しかし、人生には予期せぬことが起こるものであり、 Audio Bookで予習しても読書途中で挫折したり、時には Audio Bookを最後まで聴き通せない場合さえある。

しかし、こんな時に勇気を与えてくれる考え方を齋藤 孝著「読書力」で学んだ。「読書力」のなかで、「たとえ読書の途中で挫折して1冊全部読み通すことができなくても、一部でも読んだ分だけ自分の教養になるので気にすることはない」というような趣旨のことを齋藤氏は書いている。

「3分の2読み残してしまった」と後悔し落ち込み洋書を敬遠するより (inaction)、「3分の1読んだ分確実に教養がついた。よし、次の本に行くぞ」とポジティブに考えるべきだ。

とにかく、洋書を読もうと思ったことに意味がある。決心して購入しただけでも進歩である (action #1) 。1ページでも読めばその分だけ成長できる (action #2)。

ポイント: Action >>>> Inaction



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30歳を超えて留学する理系研究者の成功のカギは、日本で培った人間力を生かすことであると「中年日本人男性研究者のためのサバイバル英語学習術」で書いた。人間力の基礎に重要なのが読書である。私見であるが、留学が2年以内なら紀伊国屋ニューヨークなどで購入した和書を読んでいれば問題ないが、3年以上になるようであれば洋書のノンフィクションを読みたい。300ページをこえるハードカバーを読み切るのは簡単ではないが、読み切った時の充実感は大きく、成功体験として確固とした自信につながる。

もちろん洋書一冊を数ヶ月かけて読んでもよいが、最初はジャンプスタートで素早く成功体験をして、ポジティブフィードバックのループを作ることができれば、大げさでなく人生がすばらしものに思えてくる。

ジャンプスタートの方法として私が使う方法は、まず Audible.com などでAudio Book (mp3 file)を購入 (ダウンロード) しiPodで聴き通し、全体の内容を把握した上で本を読む方法である。 Audio Bookであらすじをつかみめば、本はぐっと読みやすくなり、挫折する確率がかなり減るし、細かなニュアンスを読書で楽しむことができる。 私は洋書はノンフィクションしか読まないので、 Audio Bookでオチがわかって困ることはない。ほんとに良い本は一回聴いて、一回読んだぐらいで飽きることはない。

たいていの Audio Book は6~10時間程度なので、通勤時間やスポーツジムの時間を利用すれば、1週間で聴き通せる。その後洋書に向かえば一日1~2章づつ (20~30ページ) ずつ読んで行けば2週間で読み切ることができるので、洋書月1冊は無理なく達成できる。金銭的にはAudio Book 代10~20ドルが余分にかかるが、他の娯楽やAdult Educationに比べれば格段に経済的である。最初の数冊をこの方法で読み切ることができれば、後は Audio Bookと読書で異なったものを読み(聴き)、守備範囲をどんどん広げて行けばよい。

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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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