アカデミック・キャリアパスで研究者が切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、質の高い論文や原稿を書くためのコツは、何回も書き直すことです。通常は初稿があがった時点で同僚や共同研究者に見せてコメントをもらいたいところですが、ここではあえてそれを薦めません。というのは初稿は通常非常に陳腐なアイデアや表現が詰まっていることが多いからです。

なぜでしょうか。実は、論文を書くという行為はプレインストーミングとよく似ています。ブレインストーミングの仕掛けは「アイデアはどこにあるか:Tim Hurson著 Think Better」で書いたように:

ークリエイティブな素晴らしいアイデアは後半1/3に出てくるークリエイティブな素晴らしいアイデアは頭の奥底に眠っている。しかし、普段はほかの簡単に思いつくような「陳腐なアイデア」で頭がいっぱいで、「素晴らしいアイデア」の出てくる余地がない。したがって、すべきことは「素晴らしいアイデア」を積極的に考え出すことではなく、「素晴らしいアイデア」が自然に出てこられるように多くの「陳腐なアイデア」を頭から追い出すことである。ブレインストーミングで出てくる最初の2/3のアイデアを紙(頭の外)に書くのは、後半1/3のアイデアを導き出すスペースを頭の中に作り出すための仕掛けである。



初稿から第10稿程度までは「陳腐なアイデア」を出し尽くすための創造的破壊のプロセスです。その後、第30稿ぐらいになるとやっと面白いアイデアや切り口、的を射た表現が生まれ始め、さらそれらを壊したり、成熟させたりして第50稿ぐらいで鑑賞に耐えうるような作品になるように思います。

第50稿(時には第100稿)までの過程はいわゆる”産みの苦しみ”をとともなう、時として非効率的で、過酷な精神修養ですが、これが『論文力』をつける絶好のトレーニングであると考えます。この過程で常に人とディスカッションすることは必須ですが、クリティカルポイントである”後半1/3”に達するまでは、原稿を人に渡すべきではありません。

補足ですが、第50稿まで人に見せずに書くというのは個人の『論文力』を高めるよいトレーニングですが、チームプレー(効率よく短時間でチームとして論文発表する)という観点からはいえば、初稿をすぐに何人かに読んでもらいフィードバックをもらい、それらを指標に書き直して行くと方法は、ストレスも少なく好んで用いられます。結論から言えば両方できる必要がありますが、なるべく早いうちに”産みの苦しみ”を通過し、自力でアイデアを生む自信をつけておいた方が良いと思います。


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セス(Seth Gordin)のブログより:

批判するのはあまりにも容易いが、シニカルなだけでは物事は好転しない。
It's too easy to criticize hope And in the end, cynicism is a lousy strategy.



人の発言を、提案を、アイデアを、作品を批判するのは実は難しいことではありません。しかし、ただひたすら批判するだけでは相手はつぶれてしまいます。相手がつぶれても短期的には自分に被害はないでしょうが、長期的には廻り廻って自分にそのネガティビティーがぶりかかってくると私は考えています。ではポジティブになればよいのでしょうか。

私はポジティブよりもう半歩進んで、少しだけクリエイティブに”批判の後には、オルタナティブ(代わりの提案)を忘れずに”を心がけています。これは決して義務ではないですが、オルタナティブのない批判(=cynicism)は戦略的には良いとは言えません。

オルタナティブがないのなら批判も控える。批判したければ(時として批判すること自体が何となく楽しいのは認めますが)必死で相手のために(そして自分のために)オルタナティブを考えましょう。


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ともにプロジェクトに取り組んでいるMITでPh.D.をとった若手の博士の質問力の凄さ

質問せよ、その人が答えられなければ、別のエキスパートを紹介してもらえ。納得する答えにたどり着くまでこれを繰り返せ


について書きました。

彼女の質問するエネルギーは相変わらず強烈で、この木曜と金曜日は午後3時間以上、合計6時間以上マンツーマンで質問に答えることに費やしました。彼女の質問をガイドに私も問題の本質を考え直すためのよい機会を持てたと感じています。よい質問に答え続けることで自分の考えがまとまり(結晶化)し金曜日にオフィスを出るころには、自分の頭の中がかなりスッキリしました。

なかでも、キーとなった質問は「2年で5億円の研究費を与えられれば(金に糸目をつけなければ)、あなたは自分の研究領域で何を(what)どのように(how)研究するか」でした。ほとんどの研究は限られた予算で成果を出すように日々工夫していますが、逆に予算がないことを、最も重要な課題に取り組まない理由にしがちです。そして、そのうち「すべきこと」と「できること」をすり替えてしまうようになります。ですから、「5億円の研究費」で「すべきこと」をとことん考えることは、自分が本当に重要な問題に取り組んでいるのか、(または、本当に重要な問題の方向に向けて進んでいるのか)を改めて考える上で非常によい思考トレーニングになりました。予算の枠をはずして(しかし、期限の枠ははずさず)研究すべき対象と方法を再検討するトレーニングを定期的に持つことは、通常予算の限られたアカデミアの研究者には必要ではないでしょうか。

あともう一つ彼女の質問のスキルで優れたところは、私が質問に答え続けてそのうち、本質に迫る答え(結晶)にたどりついた時には、本当に喜びと感謝に満ちあふれた表情をすることです。頭の中がスッキリし、相手にも感謝されることこそ回答者の最大の贅沢です。

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AはAuthentic (Be Real) 、BはBrief (Be Simple) ....そして、 J はJapan(Be 20/20)



20/20とは”20枚のスライドを一枚20秒のペース”で6分40秒でまとめたコンサイスでクリスピーなパワーポイントプレゼンテーションのフォーマット. Astrid KleinとMark Dythamが2003年に東京で立ち上げたデザイナー/クリエーターのためのミーティング”Pecha Kucha (ペチャクチャ,)”で使われ始める。デザイナーはよくしゃべりプレゼンテーションが長くなりすぎる傾向があったため、20/20のフォーマットを取り入れたらしい。

ーPecha Kucha: Get to the PowerPoint in 20 Slidesー




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フューチャリスト・パネル:「次の30年のライフサイエンスにおける問題とは」と題したシンポジウムに参加してきました。フューチャリストとしてパネルに選ばれたのは:
   フィル・シャープ(MIT/ノーベル賞受賞者)
   ジム・コリンズ(ボストン大学)
   ドリュー・エンディ(MIT)
   アラン・クレン(テンポバイオ)

各フューチャリストの話したことで印象に残ったことは:
ーフィル・シャープー
次の30年はナノテクノロジーがライフサイエンスを牽引するプラットフォームになるだろう。しかし30年前に現在のライフサイエンスの姿を全く予想できなかったのと同じように、今から30年後のライフサイエンスの姿を予想することは出来ないだろう。

ージム・コリンズー
次の30年はバイオロジストとケミストの時代になる。今から30年後にはライフサイエンスの複雑性の、そのわずかしか我々が知り得ないことを我々は知るであろう。

ードリュー・エンディー
次の30年もバイオテクノロジーがライフサイエンスの中心であろう。バイオテクノロジーのオープンソース化が次の30年の課題。その取り組みのひとつが彼のBioBricks Foundation.

ーアラン・クレンー
ライフサイエンスのヘルスケアー(医療)への応用はゆっくりであるが次の30年間に確実に進むので、楽観的であると同時に、忍耐力が要求される。

以上、フューチャリスト・パネルの意見をまとめることは簡単ではありませんが、ライフサイエンスの次の30年とは:
・バイオロジー/エンジニアリング/ケミストリーの融合分野でイノベーションが起こる
・しかし、そのイノベーションが実際に役に立つようにパッケージされるまでには途方もない時間(〜20年)がかかるのでオプティミスチックであると同時に、その間サーバイブするために必要な資金を注入する法的なサポートが必要
・無味な競争によるテクノロジーの囲い込みを防ぐためにバイオテクノロジーのオープンソース化を真剣に検討する必要あり。

などが参考にすべきフューチャリストからのメッセージです。




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いかにアイデアを思いつくかは、研究者やアーティストだけでなく、広い意味でクリエイティブな仕事についているものにとっては永遠の悩みです。研究のアイデアがいつか枯渇するのではないかとか、締め切りまでに新しい企画のアイデアが出てくるだろうかという不安や恐怖を感じたことのある人は多いのではないでしょうか。

この不安/恐怖と戦うために、私が信じていること/好きな考えは「ハードワークすれば必ずアイデアにたどりつける」という信念です。

例えば、コカコーラの元CEO Roberto Goizueta はコカコーラを全米1の企業にしたビジネスパーソンであると同時に、そのCreative Thinkingの実践者でもあったGoizueta氏の言葉”頭が熱くなり、汗をかくまで考え抜く”には共感します。

作家の夢枕獏さんにもインスパイヤーされました。夢枕獏さんは14本の連載をもち、年間原稿用紙1000枚近い原稿を書き、締め切りまでに新しにい原稿のアイデアを出さなければならないという”生みの苦しみ”がいつもある日常を生きているひとです。夢枕獏さんをもってしてもアイデアを簡単に出す方法なんてものはないようで、ラジオ版学問のすすめで聴いた彼のモットーは:

     ”脳が溶けるまで考えるー夢枕獏ー”



だそうです。

この生みの苦しみを恐れない耐性をつけることが、アイデアを生み出すためにすべき大切なトレーニングのように思います





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日本の若者の理系離れがニューヨークタイムズのワールドビジネス欄で取り上げられています:

High-Tech Japanese, Running Out of Engineers
TOKYO ― Japan is running out of engineers.
By MARTIN FACKLER (May 17, 2008)

日本の若者は、自分父親の世代がやってきた”もの作り”のような地味な仕事よりも、アメリカ人がやるように金融や医学などの高収入を得られる職業や、芸術のように純粋にクリエイティブと追い求めるような選択をするようになってきた
young Japanese themselves, the young here are behaving more like Americans: choosing better-paying fields like finance and medicine, or more purely creative careers, like the arts, rather than following their salaryman fathers into the unglamorous world of manufacturing.



この記事では、理系離れとくにエンジニアの不足を問題にしていますが、政府や産業界の対策として以下の3つを行っていると分析しています:
1)エンジニアの仕事をより魅力的なものであると言うイメージ戦略(advertising campaigns intended to make engineering look sexy and cool
2)外国人の登用(import foreign workers)
3)オフショアー(sending jobs to where the engineers are, in Vietnam and India)

1)に関しては米国でも同様のキャンペーンやっていますが、成功しているかどうかは定かではありません

2)に関しては、日本では日本語という言葉の壁があるだげでなく、閉鎖的なシステム(職場環境、昇進、転職)が問題であるため、インドからの優秀なエンジニアはよりオープンなシステムのある米国を好む傾向があるのも当然と考えられます。

しかし、そのオープンなシステムを持つ米国でさえポスト9-11では海外からやってくる優秀なエンジニアやその候補生の減少に大きな危機感をもっています。

もちろん日本人エンジニアの育成は最大の課題ですが、それに加えて今後は国境を越えての優秀なエンジニアの米国との奪い合い合戦が、日本のものつくりの大きな鍵になることは必至でしょう。

追記:関連記事 5/20/2008
GoTheDistance「ハイテクの日本がエンジニアを枯渇させている



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MITでPh.D.をとった若手の博士といっしょにあるプロジェクトにたずさわっているのですが、彼女の質問がとにかくすごいのです。MITで理論的思考法をきちんと勉強しているせいもあるのでしょうが、本質をつくような質問をどんどんしてくるのです。痛いところばかりをついてくるので、数時間のミーティングで私はへとへとになりました。しかし、こちらも何が問題点であるかをあらためて認識することができ、彼女の質問から得るものが数多くありました。

しかし、彼女の本当にすごいところは、私が完全には答えられない質問に関しては、ちゃんと答えられるエキスパートを紹介せよと私に要求するところです。もちろんミーティングの下準備として彼女はかなりの文献や資料を読み込んでいます(フェーズ1)。そしてその中から問題点を洗い出し、質問するのです(フェーズ2)。フェーズ1では知識の習得と目的としますが、フェーズ2では質問することにより人からの”知恵”の習得をめざしているのです。よって私が答えられない場合にはもう一度論文の中の”知識”に戻るのではなく、とにかく人の中の”知恵”を探求するのです

大前研一氏の著書の中で「質問せよ、そうすれば道は開かれる」というようなニュアンスの表現があったかと思いますが、MITの彼女のモットーは;

質問せよ、その人が答えられなければ、別のエキスパートを紹介してもらえ。納得する答えにたどり着くまでこれを繰り返せ



です。

フェーズ1での論文や資料からの情報収集には限界があるので(知恵にたどりつくことが困難)、フェーズ1がある程度なされたと感じたら、あとは積極的に人に質問をぶつけていくというアプローチは効率的で生産的であり、MIT的であるなと関心しました。


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Nature Medicineのエディターブログ Spoonful of Medicineによれば、クリントン大統領時代に国務長官をつとめたマドレーン・オールブライト (Madeline Albright) 氏(写真左)は最近のインタビューで、「新国務長官の仕事はますます複雑になっていく。なぜなら、温暖化、エネルギー、医療など関する政策決定には高度のサイエンス・リテラシーが要求されるからだ」と述べています。

今やサイエンス・リテラシーは政権担当に必要な能力のひとつに数えられるのです。

Albright

(写真クレジット:odwyerpr blog

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ブレインストーミングとは:

新しいアイデアを生み出す仕掛け:「素晴らしいアイデア」が自然に出てこられるように多くの「陳腐なアイデア」を頭から追い出すことである。
      ーアイデアはどこにあるか:Tim Hurson著 Think Better


ブレインストーミングのやり方を上手くまとめたパワーポイントプレゼンテーションを見つけたので紹介します(ダウンロード可)。

ポイントは4つで(41枚目のスライドにあるように):

1)質より量 (Go for the quantity, not quality)

2)批判厳禁 (Absolutely no criticism)

3)おかしなアイデア大歓迎 (Weird ideas are welcome)

4)他人のアイデアをもじってみよ (Transform other's idea)


このスライドショーを見れば10分でとりあえず入門レベルの知識は身に付くのではないでしょうか....





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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務. その後, Harvard 大学医学部への研究留学を期に, 非常に迷った末に医局を離れBoston で独立することに挑戦し, 現在ラボ運営に奮闘する.「実験医学」 に”プロフェッショナル根性論”を執筆中.

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