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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
世界で最もクリエイティブなサイエンティストとサイエンスサヴィーな思想家が集うクラブEdge Foundation, Inc。 2009年のEdge FoundationのAnnual Questionは:

未来を変えるイノベーションとは
WHAT WILL CHANGE EVERYTHING?
"What game-changing scientific ideas and developments do you expect to live to see?"


2009年は漠然と誰もがイノベーションの必要性を感じる年になりそうです。サイエンスがイノベーションをリードしていくことに間違いはありませんが、サイエンスがイノベーションとして社会にインパクトを与えるためには、マネジメントがクリティカルな役割を果たします(池田信夫;ハイエク 知識社会の自由主義)。したがって、サイエンティストとビジネスパーソンがともに”未来を変えるイノベーションとは”と問い続ける必要があるはずです。

未来予測はたいていはずれるものですが、(はずれるからといって意味がないとか、重要でないということではない)100人あまりの各分野のエキスパートの2009年Edge FoundationのAnnual Questionに対するエッセイをこちらから読むことができます。


関連エントリー:The Edge Annual Question ― 2008(あなたの考えが変わったとしたら、それはなぜですか?)(1/2/2008)



テーマ:創造と表現 - ジャンル:学問・文化・芸術

map-6青(オバマ)と赤(マケイン)の二色に塗り分けられた合衆国の地図を見て、赤(マケイン)が若干優勢?とか、3倍面積の大きいモンタナがニューヨークより大統領選に影響力あるかも?とあやまった印象を持つ場合があるかもしれません。



map-2しかし、それぞれの州の大きさを人口で補正すると青(オバマ)優勢や、ニューヨーク>モンタナであることが容易に理解できます (注:追記1)。このように、州や国の領土/領域を様々なパラメーターで補正し描き直したものをカートグラムまたはカルトグラム(Cartogram)と呼びます。参考:Michael T. Gastner and M. E. J. Newman (2004) Diffusion-based method for producing density equalizing maps Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 7499-7504.


例えばここに、よく見る普通の世界地図があります。日本でよく見る世界地図のレイアウトと違って、ここでは、日本は東の端にある小さな島国として描かれていますが.....
normal3

科学研究で見たカートグラムでは、日本は東の大国となります。
map-jpg


さらに科学研究の伸びで見たカートグラムでは、日本、韓国、中国の存在が大きくなります。
growth

このほか収入、教育、職業、医療などの観点からの600以上のカートグラムをworldmapper.orgで見ることができます。

(注)追記1:Seitaさんが、コメントで指摘されていますように、”州単位のカートグラムを見ても誤った印象を得てしまう場合があります。” コメント欄のリンクより”郡単位のカートグラム”をご覧ください。

参考1:米国の報道が非常に偏っている件(報道に関するカートグラム)


参考2:The Atlas of the Real World
by Daniel Dorling, Mark Newman, Anna Barford
本地図




テーマ:頭の体操 - ジャンル:学問・文化・芸術

近況報告です。私のラボは今週、全米で最大のラボラトリービルディングであるThe Center for Life Science Boston (CLSB) に引っ越しをしました。同じ研究所の複数のラボで一つのフロアを占有しているのですが、フロアのプラニングから始めて2年以上かかりました。ラボとオフィスの引っ越しは実質2日で無事終了し、引っ越し祝いにラボでボストン美術館のカフェに出かけました。

CLSBではラボスペースは拡大し、より機能的なレイアウトになり、長年捨てられずにいた古い論文のコピー等の”記念の品々”も処分してオフィスもすっきりしました。次の数週間はラボの再起動で忙しくなりそうです。

CLBS
CLSB

新しいオフィス
CLSB_Office

テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

世界で最もクリエイティブな人たちが集うクラブのひとつEdge Foundation, Inc。 今年の最初のエントリーでEdge FoundationのAnnual Question 2008を取り上げました。

”思想”がひとの考えを変えたとき、それを”哲学”という
”神”がひとの考えを変えたとき、それを”信仰”という
”事実”がひとの考えを変えたとき、それを”科学”という

あなたの考えが変わったとしたら、それはなぜですか?

When thinking changes your mind, that's philosophy.
When God changes your mind, that's faith.
When facts change your mind, that's science.

WHAT HAVE YOU CHANGED YOUR MIND ABOUT? WHY?

The Edge Annual Question ― 2008


edge世界で最もパワフルな思索者(high-powered thinkers)150人にAnnual Question 2008:”あなたの考えが変わったとしたら、それはなぜですか?(WHAT HAVE YOU CHANGED YOUR MIND ABOUT? WHY?)”と問いかけ、その語りを一冊の本にまとめたものが、2009年1月に出版されます。

150人の思索者は、ハーバードのサイコロジーの教授で「バイオレンスという神話」でとりあげたスティーブン・ピンカー、イギリスの動物行動学者で「利己的な遺伝子」で知られるリチャード・ドーキンス、サブプライム危機を予測した本Black Swan」を著した数学者のナシーム・タレブなどそうそうたる顔ぶれ。

来年の1月6日が待ち遠しい。”感想や書評は後ほど....”(しかし、1月はグラントの締め切り前でかなり忙しいかもしれません...)




テーマ:洋書多読 - ジャンル:学問・文化・芸術

ブリュッセルで開催されたECの主催する”トランスレーショナルリサーチに関する重点研究分野”のシンポジウムに参加してきました。レセプションやディナーの席でEC諸国のPIやシニアサイエンティストの方々とアカデミアやグラントのシステムについて意見を交換する機会がありましたので、その中で気に付いたことをメモとして記しておきます。

まず、大まかに言って、研究費は研究者が自らの研究テーマで応募する各国政府からのものと、ECが特定のテーマのプログラム(例えば今回のRIGHTはRNA干渉を利用した疾患治療に向けた研究)に沿って横断的に巨額の資金を配分するものがあるそうです。

ECのプログラムプロジェクトは国境を超えた共同研究になるり、研究申請書の内容だけでなく、むしろ、トラックレコード(論文)や人とのネットワークが重要になるそうです。ECのプログラムプロジェクトは額が大きく、採択されれば研究を一気に進めることができる大きな可能性を持ちます。しかし、多くのプログラムプロジェクトは更新されることなく、評価に関わりなく数年で終わる打ち上げ花火的な性格のものが多いのが大きな問題。このRIGHTも成果を上げているにも関わらず4年で終了し、次のプログラムのテーマは全く別の、神経変成疾患の病態解明と治療に関するものになることが決定しています。

多くの研究者が研究費の少なさと、人材の流動性の低さを問題視していました。米国のシステムと違い、PIとスタッフのサラリーは大学/研究所から支払われるので、グラントが切れても失業する可能性は低いようで、研究者は基本的には安定した職業ですが、その分自由度や流動性は低くなるようです。しかし、これらを問題視しつつも、その中で自分のできることをやって行くという姿勢であり、米国のような過度の競争的研究資金導入による研究者のキャリアの極端な流動化や潜在的不安定化には懸念を示すひとが多いようです。

私の印象では、ECはある程度流動性は高めつつも安定した独自のある程度安定したシステムを目指しており、それに満足できない研究者は米国に行って過度の競争にさらされれば良いという、米国とは同化しない、相補的な研究環境を目指しているように感じられました。


テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

創造性には天才の頭脳の奥底からわき起こるようなものなでしょうか。もしそうなら普通のひとにトレーニングや教育をほどこし、創造性を育てることはとても難しいことのように思えます。

羊土社連載の「プロフェッショナル根性論」最終回のオンラインマテリアルでは:

どうして2つの独立した複数のグループから同じような論文が同時に発表されるのか

グラハム・ベルが不慮の事故で亡くなっていたら,電話は存在しなかったのか


という2つの問いをとおして、「創造性とは何か」について考えてみました。

詳細はどうぞこちらをご覧ください。



Pro-Kon





テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

25人のマッカーサーフェロー(MacArthur Fellows)が今年も発表されました。マッカーサーフェローは"genius grant"とも呼ばれ、大富豪で実業家であったJohn Donald MacArthur (1897-1978)の個人資産を元に設立されたJohn D. and Catherine T. MacArthur Foundationが選ぶ最高にクリエイティブな人物に贈られる権威あるグラントです。

“The MacArthur Fellows Program celebrates extraordinarily creative individuals who inspire new heights in human achievement,”


マッカーサーフェローは歴史と権威があるだけでなく、ある意味ミステリアスでもあり、その選考プロセスは謎に包まれています。フェローは、ある日何のまえぶれもなく、一本の電話がかかってきて受賞を知らされ、50万ドル(約5000万円)の完全に自由に使える(No strings)グラントが授与されるそうです。

2008年の25人のマッカーサーフェローは、バイオリニスト、歴史家、集中治療医、生物学者、コンピューターサイエンティスト、農業経営者などと多岐にわたり、年齢も幅広く30から70歳まで。

クリエイティブの定義は人により、状況により、時代により異なると思いますが、25人のマッカーサーフェローの業績とプロフィールから、(おそらく)米国のエスタブリッシュメントが今考える”最高にクリエイティブな人物”に現代のクリエイティブのヒントを見つけ出すことができるのではないでしょうか。


テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

P⋅F⋅ドラッカー曰く:

奇跡の困った点は、稀にしか起こらないことにあるのではない。あてにできないことにある。(プロフェッショナルの条件)


なるほど....
物事の本質を見抜くドラッカーの眼力にはいつもならが感心させられます。




テーマ:ことば - ジャンル:学問・文化・芸術

パラダイムを変えるような革命的な研究成果は、最初は激しい抵抗と反対に会うものです。今日ハーバードでセミナーをしたマックスプランク研究所のマイク レスは、免疫学のパラダイムを変えるかもしれない研究者のひとり。彼のリンパ活性化のメカニズムに関する仮説は何年もの間、エスタブリッシュメント側の研究者からの強い反対に会っているようですが、彼はあくまでもポジティブです。

マイク?レスによるとパラダイムシフトを引き起こすような革命的研究成果に対するエスタブリッシュメント側の研究者の反応には、3つのフェーズがあるそうです。

フェーズ1(強い否定):君の研究結果など信じない(I do not believe it
フェーズ2(無関心):君の研究結果に興味などない(It is of no interest to me)
フェーズ3(合意と共有):私たちもずっとそう思っていたんだ(We have always known it



フェーズ2と3のギャップが非常に大きいのは、研究者は自分の仮説や研究結果が間違っていたと認めたがらない人種であるためでしょうか(それだけ信念が強い...)。インパクトのある研究には忍耐力が必要で、長い道のりを辛抱強く歩かねばなりません。長い間コンセンサスやサポートが得られない状態でも、フェーズ2まで来たら道半ば以上と感じることができれば、もう少しがんばれるのではないでしょうか。



テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

羊土社の実験医学で連載中の「プロフェッショナル根性論」も第9回となり、あと第10回の最終回を残すのみとなりました。第9回「説得力のあるプレゼンテーション」に関連したウェブ連載「心に残るプレゼンテーション」がアップロードされました。

TED(Technology,Entertainment,Design)は世界トップクラスのクリエイティブでイノベーティブな人材が集いプレゼンテーションする場であり,そこではある意味、世界最上のプレゼンテーションを見ることができる....



ブログで個別に紹介してきましたが、"Art of Persuasion" ともいえる最も説得力のあるTED Talkプレゼンテーション4つをまとめました。4人のプレゼンテーションの達人に共通することは:

演壇をはなれ,全身を使ってメッセージを放っている



ボディーランゲージで、聴衆に語りかけていることです。その点に注目しつつ、どうぞこちらをご覧ください。



プロ根


テーマ:勉強 - ジャンル:学問・文化・芸術

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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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