ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
”若者に留学を勧める大人に知ってほしい大切なこと”について書いた新刊「優雅な留学が最高の復讐である」が9月15日に医歯薬出版株式会社から出版されます。

「なぜ最近の若者は留学しなくなったのか」から始まるおとなの自分探し

8人の留学経験者と「医学の歩み」で対談したシリーズ「教養としての研究留学」では、若者に留学を勧めるには、どのような語り方をすればいいのかを考えさせられました。この対談を契機に様々な観点からの視点を取り入れ、”若者に留学を勧める大人に知ってほしい大切なこと”ついてまとめたのが本書です。

優雅な留学が最高の復讐である表紙


「優雅な留学が最高の復讐である」
目次:

第1章 留学はするな─留学のベタ,ネタ,メタ

第2章 やりたいことのない「普通」のあなたに留学を勧める理由

第3章 留学というプロジェクト

第4章 生存戦略としての留学

第5章 Let It Goの罠と留学

第6章 「グローバル化」という中空構造

第7章 大人が「グローバル人材育成」に貢献できること

第8章 大学教師はじまりの物語

第9章 「脳トレ」としての英語─英語で頭を鍛えて賢く長生きする

第10章 なぜわれわれは若者に留学を勧めるのか

対談編
1) 椛島健治 (京都大医・皮膚科教授) ”不自由さ”のなかで自分を鍛える
2) 藤井直敬 (理研・脳科学総合研究センターチームリーダー) 誰も行かないところに行く”勇気”
3) 色平哲郎 (佐久総合病院・地域医療部・科長) ”山の村”への研究留学
4) 窪田 良 (Acucela Inc・会長社長兼CEO) ”選択”は楽しい
5) 矢倉英隆 (パリ大学ディドロ博士課程) 留学という”断絶”を経験する
6)別役智子(慶応大医・呼吸器内科教授) 研究者のintellectual independency
7) 今井由美子 (秋田大医・実験治療学講座教授) 留学して”日本のマトリックス”を知る
8) 山本雄士 (株式会社ミナケア代表取締役) ”臨床の充実感”を超えてめざすこと

解説:門川俊明(慶応大医・医学教育統括センター教授)
”(島岡先生に惑わされずに)つべこべ言わずに留学に行きなさい”



留学してよかったこと、残念だったこと
本書の序文を医歯薬出版のHPから読むことができますが、私がハーバード大学に13年間留学してよかったことは、

大袈裟に聞こえるかもしれませんが,当時(一九九八年)はスマホもWi-Fiもなく,言葉も通じない異国の地でゼロから生活や仕事を始めるなかで,鮮やかな生(せい)のリアリティーを実感することができ,さらに“成功循環モデル”のグッドサイクル(第2章参照)に便乗することにより,自分の実力の何十倍もの仕事を達成できました.そして長期間海外に滞在することで日本を外からみることを経験し,相対的視点を育むとともに,日本に蔓延する同調圧力としての空気から長いあいだ解放され,いい意味で空気を読まない力を身につけました.



しかし、残念だったことが、

アメリカの“選択の自由という呪縛”に疲れたことです.アメリカではなんでもかんでもたくさんの選択肢があり,主体的に自分で選ぶことで自由を行使することが正しいという価値観が君臨しています.関西で普通の日本式教育を受けて育ったわたしは,自分で選択することがあまり好きではありません.選択するのが面倒臭いと思うし,選択の結果としての責任を負うことにもストレスを感じます.にもかかわらず,在米中は意思の力で多くの重要な選択をし,そのストレスに耐えてきましたが,とても疲れました.



なぜなら私は ”そもそもレストランに入って肉の焼き具合や,付け合せのサイドメニュー,正直まったく味などわからないワインの選択など,本当はしたくないのです.社交のために練習してできるようになりましたが,本心では,どの店に入るかぐらいは自分で決めるが,料理はすべて大将のお任せでお願いしたい”のです。.

ですから、「留学するかどうか」とか「自分の進路やキャリアをどうするか」について、自分で決めてその責任を自分が負うという言説が現実とどこかずれていると感じていました。そして偶然に哲学者ハーバード・フィンガレットが行った孔子の道に関する研究を知りました

西洋ロマン主義の考え方では,人生を道にたとえれば,要所要所に分岐点(分かれ道)があり,人は各分岐点で自由意志により理性的な選択を繰り返しながら,自分の到着点を決定していきます.いまの自分の到達場所は,自らの無数の理性的な選択の結果であるので,責任は自分にあるというのが新自由主義の根底にある考え方です.しかし,フィンガレットによる孔子の道の解釈は,人生という道は“a way without crossroads”であり,分岐点はありません.分岐点はあるにはあるのですが,その分岐点に達したときには,自分が選択できる道はすでに決められているのです.



これは自分の感覚ととてもよくマッチしています。人生の選択をできるだけ理性的に下してほしい、若者に海外留学をできるだけ理性的に勧めたいととことん考えた結果、”悩んだ末に押し切られるように留学の選択をせよ”というメッセージにたどり着いたのです。

選択肢は複数あり,そのうちのひとつを自由意志により積極的に選ぶというのは欺瞞であり,人は重大な選択を迫られ,そのなかで否応なしに選択をするのが自然の姿であるということです.論理的に考えて,人は合理的選択をするというのは幻想です.最近の行動経済学の研究が明らかにしているように,数値で表しきれない価値観に関する選択や判断は理性ではなく,感情により行われます.人は理性的であろうとし,最後まで選択を粘りますが,所詮理性には価値判断をする力はないので,最後は感情に任せるしかないのです.留学するかどうか悩んでいる皆さん,できるだけ理性的であろうとし,とことん悩んでください.しかし,損得勘定で理性的に判断することは端から無理なので,最後は状況に押し切られるような状態に自分を追い込み,感情を起動させ,留学をするという価値判断をしてください.



留学で復讐する
本書のタイトルは私のボストン留学時代の愛読書『優雅な生活が最高の復讐である Living Well Is the Best Revenge(カルヴィン・トムキンズ)』へのオマージュです.

「優雅な生活が最高の復讐である」は辛辣なスペインの諺なのですが,ここで使われている復讐Revengeという言葉の語源は,「自らの正当性を立証する」という意のラテン語vindicareに由来します.したがって本書のタイトルには,留学とは,鮮やかな生(せい)のリアリティーを実感するなかで自分の力を試し,日本を外からみることにより相対的視点を確立することを通して,多少の承認不足では揺るがない「自らの正当性を立証する」優雅で贅沢な機会であるという思いが込められています



若者に留学を勧めたいベテランや中堅の方々も、どうして上司や先輩は留学を勧めるのだろうと不思議に感じている若い方々も、ぜひご一読ください。




スポンサーサイト
理系の研究者の強みを活かして、絵画の基礎知識がなくとも、それなりに楽しく絵画を鑑賞する方法を考えてみました。

オフィスの近辺にミュージアムがあるのはいいものです。ボストンではMuseum of Fine Arts, Bostonがありました。今は三重県立美術館があります。全国をまわっている「藤島武二・岡田三郎助展」がいま三重県立美術館にきています。藤島武二と岡田三郎助とは:

日本の近代洋画の基礎を築いた藤島武二(1867-1943)と岡田三郎助(1869-1939)。それぞれ曾山幸彦の画塾で洋画を学び、時期を異にしてヨーロッパへ留学したのち、東京美術学校の教授として活躍。1912年には本郷洋画研究所を設立し後進の指導に努めるなど、明治末から昭和戦前期にかけて、同世代の洋画家としてともに切磋琢磨し、日本洋画の発展に大きく貢献しました。



藤島武二・岡田三郎助展とは:

共通点の多い二人の経歴・画業を振り返りながら、それぞれの目指した方向が彼らの活躍した時代に、どのように反映されていったのかを探ろうとするものです。



このように2人の画家の絵を同時に一つの展覧会でみせるというフォーマットは、ボストンではあまりありませんでした。今回、藤島武二・岡田三郎助展で気づいたのですが、比較するペアーが適切であれば、この2人の画家の作品を比較しながら鑑賞するというフォーマットは、絵画初心者にはとても教育的なのです。

最近読んだ安宅和人さんの「イシューからはじめよ」では、

”分析の本質とは比較である”



と述べていますが、大いに納得できる部分があります。少なくとも、比較から始めることが最も手軽ですし、おそらく何らかの形で比較を持ち込む以外に分析する方法はないと思います。

これと同様に絵画を自分の主観に頼って鑑賞するよりも、藤島武二と岡田三郎助の作品を比較することで、専門家のガイドがなくとも、作風についての参照点が自然に設定され、漠然と鑑賞するよりはずっと深い”分析”ができて、絵画を鑑賞するという行為夫を能動的に楽しめました。おそらくこの展覧会の企画者&キュレーターのもくろみが大当たりしたのでしょう。

藤島武二と岡田三郎助の作品の比較は、理系研究者にはお奨めの”分析的絵画鑑賞”を実践・トレーニングするよい場です。

Fujishima1

8月26日に京都大学大学院・医学研究科の広田先生、椛島先生、陣上先生らのお招きで、キャリアセミナーで講演しました。その様子は広田先生椛島先生のブログで報告いただいています。またYoutubeにもアップされるかもしれません。

聴衆の方々との事前の打ち合わせなどまったくなかったのですが、私が話したかった重要な論点に直結する非常に良い質問が多数発せられましたので、充実したディスカッションになったと感じています。やはりコミュニケーション力とは話し手と受け手の双方の力のかけ算なのですね。

京大でのトークに関する最近の自分(@BostonIDI)のツイート:

京大でのキャリア・トーク

京大のトークでは聴衆からの数々のいい質問のおかげで、”ブラックスワン”、”留学という大きな物語の終焉”、”Scientific vs Promotional drive”など多くの重要な論点を話すことができました。感謝!



京大スタバにて

京大トークのあとは広田グループ・椛島グループの方々とディナーへ。論文の書き方やモチベーションの保ち方等で意見交換。その後、有志6人でスタバで2次会。キャリアにおける「”意味”と”強度”」について語る。



研究者論壇

”研究者論壇”とは「研究するという営み」に関して広く自由に議論するアカデミックな場。専門、業績、職種に関係なく発言する社交の場。研究者の活躍する領域の地平線を拡大するために発言できる論客を育てる。



13年ぶりに医師として臨床に復帰させていただきました。ハーバードでPIとして自分の研究室を始めたときには、もう臨床には戻らないだろうとと考えていました。当時のブログには「医者をやめる」ことについて書いています。

医者をやめる(2)


私も含め多くの医師(元医師)にとっては医者である(あった)ということは、とてつもなく大きなアイデンティティーのよりどころである。医師をやめたいと口では言いつつもアイデンティティーを失う恐怖に打ち勝つことは簡単ではない。

また、社会人になって最初に確立した職業観(これもアイデンティティに関係するが)の刷り込みは非常に強い(洗脳に近いかもしれない)。リプログラミングは難しく、結局ほかのことをやっても最初の職業にもどってくることが往々にしてある。



医者をやめる:キャリア・チェンジとプロフェッショナルのサイコロジー

「変化」に対する恐怖を克服し、前に進むための「一時的な」逃げ道はよいでしょう。しかし、まず「腐っても鯛」という仮定がまちがっています。専門知識や技術が急速に変化している現在、医者のような技術専門職では患者様に満足してもらえるパフォーマンスを発揮するためには「腐っても鯛」ではなく、「腐ったらだめ」なのです。医者には戻れるでしょうが、自分も他人も納得させるプロのパフォーマーには戻れないでしょう



ようするに、「いったん医者をやめて長い時間が経てば、自分のエゴで臨床に戻りたいと思うことはあっても、一流にはなれないから、患者様に迷惑をかけるだけなので、そんな無謀なことは慎むように」と当時は考えていました。しかしながら、そのエゴを抑えきれず臨床に一時的であるとはゆえ復帰しました。それほどまでに医師とくに、麻酔科医・集中治療医は奥深く、魅力的な仕事なのです。Dr.コトー診療所のコトー先生の「(大学病院を離れ、ひとり離島の診療所に逃げるように移るほどのトラウマを受けても)不思議に医者をやめようとは一度も思わなかった」というセリフを忘れることができません。また、23年のブランクの後に研究者から臨床医に転職した笹井先生のエピソードにも勇気づけられました。

消化器外科で五年間のトレーニングを受けた後、臨床から離れ二十三年間、大学と製薬企業研究所で基礎研究をしてきました。企業の役職定年も近くなり、第二の人生を考えたとき、学生の頃抱いていた「僻地医療に携わりたい」という思いに駆られるようになりました



また臨床復帰に関してはやはり人間関係を重視しました。自分より年上だが能力の低い人に仕事を教えるのは、どこの世界でも楽しい仕事ではありません。臨床のブランクを埋めるために年下の先生に教えてもらわなければなりません。私はアメリカでの実力重視で、年齢に関係なくファースト・ネームで呼び合う関係になれてきたので、年下の先生に教えてもらうのは問題がないのですが、相手に気をつかわせて、ご迷惑がかかることを申し訳なく思います。やはり最後は医局にお世話になりました。私が研修医の時にオーベンとして指導していただいた先生が部長を務める病院に勤務させていただくようにしていただきました。医者の世界でも卒業年次は重要で、先輩・後輩の関係はずっとそのままです。何歳になっても、先輩には教えを請いやすいし、後輩には気をつかわず教えやすいものなのです。

しかし単にエゴだけで臨床に復帰したわけではありません。研究者としての戦略もあるのです。私はハーバードで優秀な医師であると同時に優秀な研究者やリーダーであるパワフルなPhysician/Scientistを多く見てきました。例えば私の所属していたボストン小児病院は常に全米で1位の小児病院の座を長い間キープしていますが、その組織を率いるCEOのDr. James Mandellは超多忙であるにもかかわらず、エフォートの数%は常に患者様に直接関わることに割いています。時間配分さえ適切であれば、臨床と研究やマネージメントは両立し、臨床から得られるモチベーションやインスピレーションは、研究に非常に強力なドライブ(推進力)を与えてくれると考えています。


6月末日までは大阪成人病センター麻酔科・副部長を専任させていただきましたが、7月より三重大学教授専任となりました。成人病センター退職に際し、麻酔科部長の谷上先生には素晴らしいメッセージを、麻酔科スタッフの皆様には送別会での美味しい夕食を、手術室看護師・スタッフの皆様からは美しい花束等を、ICUの看護師の方々からは温かい言葉をいただきました。ありがとうございました。



テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

ハーバードから三重大に移動するにあたり、最も大きな問題のひとつが、現地で雇用した米国人スタッフの行き先を見つけることでした。(先日は一人をのこしてすべての行き先が決まったと書きましたが、最後の一人もボストンの大手製薬会社のスタッフ研究者としてのポジションを得ることがでたという知らせを今日受け取りました。) ハーバードの知り合いのラボに紹介出来る例もありますが、アカデミアやコーポレートへのキャリア・アップを強く望む者もいます。その場合には個人的なネットワークを利用して、出来るだけ強力に推薦しますが、現在の米国の雇用は冷え込んでおり、簡単ではありませんでした。

アカデミアの場合は推薦状をメールで送ることが多いのですが(「研究者の英語術」の第5章「用紙2枚分の説得力のある強い推薦状を書く」など見ていただければ幸いです)、コーポレートの場合には、レターを書く代わりに、電話で人事担当者と20分程度直接話すことがほとんどでした。前もって電話の時間が指定できるので、英文で推薦する要点をまとめた”カンペ”を用意して、電話会議に挑みます。大抵は被推薦者の能力・性格・人となり・実績などに関してオープンエンドな質問をされます。具体例をあげて被推薦者の長所を強調するという点は推薦状を書く場合と同じですが、電話ではポジティブなトーンでゆっくりと大きな声で話すことが大切です。

キラー・クエスチョンは「被推薦者の短所は何か」です。うっかりのせられて、いろいろ語るのは御法度です(もし、被推薦者がジョブ・オファーされることを強く望むのなら)。「思い浮かばない」と言い張るのもおそらくありですが、「Too organized」(ちゃんとしすぎるところがある)など、短所と言いつつも、うまく長所をアピールするのがいいのではないでしょうか。


7月より三重大学大学院・医学系研究科・分子病態学講座の教授として赴任します。血管生物学の分野で多大な業績をあげてこられた鈴木宏治教授・副学長(現・鈴鹿医療科学大学・薬学部教授)の伝統ある研究室を引き継ぐことを、非常に光栄に感じています。私が赴任までの間、三重大でラボを運営してくれている助教の岡本先生と秘書の池田さんのすばらしい協力を得て、インパクトのあるいい仕事が日本でも出来ることを予感しています。

先日、ハーバードで盛大な送別会を開いていただき、研究所長のフレッド・アルト教授や恩師のティム・スプリンガー教授をはじめ、ハーバード大、フォーサイス研究所、マサチューセッツ工科大の多くの先生方に祝福していただきました。ハーバードのラボメンバーには多大な迷惑とストレスをかけましたが、多くの方々の援助をいただき、ラボは発展的に解消し、アカデミアまたはコーポレートへと一人を除き全員の行き先がきまりました。

また、大阪大学・眞下教授や大阪府立成人病センター・谷上部長らのご理解を得て、短期間ながら大阪府立成人病センター病院で、麻酔科医として13年ぶりに臨床に携わる機会を与えていただきました。ここでは臨床医として周術期患者の全身管理を担当することで、直に医療に貢献できる喜びを感じています。本当に麻酔科医でよかった。

これからは「ハーバード大学医学部留学・独立日記」の第二部として、「三重大医学部編」と題して、発信していきます。

pinkDriveアル・ゴアの元スピーチライターでベストセラー作家のダニエル・ピンクの最新刊は「Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us 」。「Drive」はモチベーション(動機付け)の心理学についてのノン・フィクションです。

「Drive」の肝は、モチベーションには3つの段階があるということです。

―モチベーション1.0(basic operating system):衣食住を満たすための生物としての基本的欲求に対する動機付け

―モチベーション2.0(the carrot and the stick / reward and punishment):ボーナスまたは罰金による金銭的動機付け

―モチベーション3.0(Internal motivation / mastery):人間的成長、知的興奮、社会への貢献などより高い次元での意味付けを持たすことによる動機付け


「Drive」で著者ピンクが警鐘を鳴らすのは、現在のビジネスのシーンではモチベーション2.0が乱用されているということです。TEDでのプレゼンテーションで著者自身が語っているローソクのパズルのように、問題解決など多少なりともクリエイティビティーを要求するような仕事ではモチベーション3.0が主役であり、もし金銭的報酬(モチベーション2.0)による動機付けを無意識に使えば、全く有効に働かないばかりか、かえって仕事のパフォーマンスを落としてしまう場合があるという事実です。





「Drive」はチーム・リーダーやマネージャーがメンバーにやる気を出させるための基礎知識という観点からも読めますし、また自己啓発書として読むこともできます。自己啓発書として読む場合には「2010年にあなたの人生を変えるたった2つの質問」という関連ムービーも面白いと思います。

Two questions that can change your life from Daniel Pink on Vimeo.




テーマ:創造と表現 - ジャンル:学問・文化・芸術

研究留学ネットの門川さんが、2009年のベスト本の一冊に「研究者の仕事術」を選んでくださいました。

―研究留学ネット:2009年のベスト~本~

よかった本は、

* 研究者の仕事術(紹介記事
* バリの賢者からの教え(紹介記事
* 理系のための人生設計ガイド(紹介記事

この三冊は、2009年の私に強い力を与えてくれました。ありがとう。

あえて、一冊あげるなら、「研究者の仕事術」でしょうか。



自分の書いたものが”人に強い力を与える助け”になった-----私にとって、これほど嬉しいことはありません。

門川さん、ありがとうございます。



参考:門川さんの書評:研究留学ネット:本の紹介「やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術」

追記:研究留学ネット(12/30)2009年のベスト~力になった言葉~

今までの蓄えをうまく使ってあとは楽して逃げ切りたいという、私が“ヘタレ”と呼んでいるマインドセットを、私自身を含め多くの人が心に片隅に持っているのではないでしょうか。

(中略)

研究者がプロフェッショナル/エキスパートを目指す過程では、仕事の最大の報酬とは人間的な成長なのです。成長にともないより大きな仕事に取り組むチャンスが巡ってくるので、決して楽になることはありません。楽しいことも増えますが、同時に苦しいことも増えるのです。これがプロフェッショナル/エキスパートとして働き・生きることの醍醐味なのです。自分自身がそうであったように、環境の変化に直面して足がすくみ、“ヘタレ”な選択をしそうになったときに、本書で紹介した先人の言葉が勇気ある選択をする助けになれば幸いです。

―「研究者の仕事術」前書き―






英文メールの書き方:伝わるメールを書いて,英語ライティング・スキルを高める(羊土社ウェブ連載)の第3回は、メールの件名欄(Subject line)を有効に使いましょうというレッスンです。

件名をつけずに送信したメールの受信・送信を繰り返し「Re: Re: Re:...」という内容のわからない件名のメールがやり取りされる。これは日本語のメールでもよくあることではないでしょうか。よく知っている人物からのメールであれば、内容の察しが付くので、何とかやっていけるかもしれませんが....

仕事上のメールの目的の大部分は次のうちのいづれかです:
1)相手に何らかのアクションを起こさせる(何かを依頼する、質問に答えてもらうなど)
2)相手に何かを知ってもらう(FYI: For Your Information等、知ってもらうだけで結構です。アクションは必要ありません)

とくに(1)の相手に何らかのアクションを起こさせるためには、あなたがどんなアクションを相手に期待しているのかをできる限りクリアに書かなければなりません。とくに、グローバルな場面での英文メールでのコミュニケーションにおいては、表情を読んだり、ボディー・ランゲージを用いたりして、何かをほのめかしたり、何かを察してもらうことを期待する余地はありません。

前回の連載で、「あなたは自分のメールの後半が読まれていない」ので、大事なこと(どんなアクションを相手に期待するのか等)はできるだけメールの頭にもってこなければなりませんと書きました。メールの”真の先頭”、つまりメールを開くまえに目に入るコミュニケーションのスペースが件名欄(Subject line)です。件名欄に、あなたのメールのメイン・メッセージを置くべきなのです。

件名は最初に書くべきでしょか。最後に書くべきでしょうか?
件名にメールの内容のエッセンスを反映させるためには、メール本文を完成させてたあとで、メイン・メッセージをよく反映するような機能的な件名を選ぶべきです。渡辺和昭・ふくだたみこ両氏のポドキャスト「不安解消!社会人の萌えるメール塾」で学んだダジャレですが:


件名は後から書くのが賢明



なのです。もし最初に件名を書いた場合には、本文を完成させた後に、件名をもう一度見直しましょう(revision)。

英文メールでの機能的な件名の付け方などは羊土社のウェブサイトをご覧ください。



YC-V2





マルコム・グラッドウェルの最新刊「What the Dog Saw: And Other Adventures」のなかで学んだ興味深いコンセプトに、リスク・ホメオスタシス(Risk homeostasis)というものがあります。

What-dogドイツでのタクシーでの研究ですが、交通事故のリスクを軽減するために普通のブレーキよりも静止距離の短いアンチロック・ブレーキを導入したのですが、交通事故の頻度は予想に反して、まったくかわらなかったのです。この予想外の結果の原因のをよくよく調査してみると、アンチロック・ブレーキを導入した車のドライバーは、速度を上げたり、急停車を試みたりリスキーな運転をする傾向があったのです。アンチロック・ブレーキにより軽減されたはずのリスクを、べつのリスクを冒すことにより相殺していたというのです。

リスク・ホメオスタシスとはGerald J.S. Wildeが提唱する説であり、上の例が示唆するように、ひとにはあらかじめ定められたリスク総和のレベルがあり、このレベルに沿って行動が規定されている。ある一つのリスクが下がると、別のリスクを冒して(チャレンジして)リスクの総和を定められれべるまであげようと(意識的・無意識的に)行動してしまう。ということだと理解しています。

それでは、新しいことにチャレンジするためのマインドセットを育てるために、私たちがリスク・ホメオスタシス説から学ぶべきことはなんでしょうか。

もし人の行動を規定するあらかじめ定められたリスク総和のレベルがあるのならば、何かチャレンジをするためには(ある部分でのリスクを上げるためには)、別の部分でのリスクを下げる必要があるはずです。

それではチャレンジするマインドセットには何が必要なのでしょうか。チャレンジをするために必要なのは勇気であることは間違いはないでしょう。しかし、一見勇気ある選択(リスクを上げる選択)も、もう少し全体的な視点でみれば別のリスクを下げる賢い選択とセットになっていることも(一般には気づかれにくいが)以外に多いのかもしれません。

リスク・ホメオスタシス説にしたがうと、チャレンジ精神を育てるとは、いかにセキュリティーを高めるかという一見正反対の行動を学ぶことなのかもしれません。

チャレンジ精神とは勇敢なリスク・テイクであると同時に、賢明なリスク・ヘッジでもあるのでしょう。


参考:「交通事故はなぜなくならないか―リスク行動の心理学」(ジェラルド・J.S. ワイルド (著), Gerald J.S. Wilde (原著), 芳賀 繁 (翻訳) )

参考:スティーブン・ピンカーによる「What the Dog Saw: And Other Adventures」の書評(ニューヨーク・タイムズ)








テーマ:ことば - ジャンル:学問・文化・芸術

// HOME //  NEXT
Powered By FC2ブログ. copyright © 2005 ハーバード大学医学部留学・独立日記 第二部 三重大学医学部編 all rights reserved.
プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
月別アーカイブ
ブログ内検索

RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。