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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
ノーベル賞受賞者のRalph Marvin Steinman博士 (January 14, 1943 – September 30, 2011)が、2010年にHeineken Prizeを受賞した後に、自らの研究者としのキャリアパスとモチベーションやDendritic Cell研究の素晴らしさを、わかりやすい英語で語った。

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昨日のエントリーでテニアトッラクのアシスタント・プロフェッサーのポジションへ応募する際の研究計画 (Research Proposal) は、ボスドクの研究テーマの延長ではなくImaginationを働かせた、ユニークでチャレンジングなプロポーサルでなくてはならないと書いた。

さらにもう一つ大切なこととして、研究計画はある程度、既存のファカルティーメンバーとの相補性があり、プロダクティブなコラボレーションができることが望まれる。しかし、トリッキーなところは既存のファカルティーが、新しく来るアシスタント・プロフェッサーからベネフィットを得られるかどうかは選考に非常に重要であるが、逆に新しく来るアシスタント・プロフェッサーが、既存のファカルティーからベネフィットを得られるかどうかは選考基準の上位に来ない場合がある。

選考ではむしろ、独力で新しい分野を切り開き、将来その分野のリーダーになれる人物をトップの大学・研究所では求めている。したがって、「私のラボではコラボレーションを生かしたプロジェクトを推し進める」というような研究計画はよく受け取られない可能性がある。

PIとして長年やってきたファカルティーは皆エゴが強い (エゴが強くないと生き残れない)。彼ら/彼女らはあなたとのコラボレーションで自分の研究にベネフィットを得たいが、あなたには独立してすばらしい研究をして欲しい。(もちろん、多くのファカルティーはメントーとしてリサーチやポリティクスでサポートしてくれるが、最初からそれを当てにしたような態度は見せない方がよい。

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テニアトッラクのアシスタント・プロフェッサーのポジションは、多くはオープンサーチ(全世界公募)であり、英語ができれば国籍は基本的には関係ない。募集の広告がScienceやNatureに掲載されると1つのポジションに対して通常50以上 (しばしば100以上) の応募がある。選考の基準は:

1) 今までの研究業績(発表論文の質)
2) 推薦状
3) 独立してからの研究計画 (どの問題を,どんなアプローチで)



1)業績:論文の数はあるにこしたことはないが、基本的には質勝負である。ファーストオーサーの論文しかカウントされないと考えた方がよい。博士課程の業績よりも、ポスドクの(より最近)の業績が大切である。2~3本のファーストオーサーの論文で、ひとつのストーリーを作り出せれば強い。

2)推薦状:シングルスペースで2枚以上の詳細で強力な推薦状を書いてくれる人物が少なくとも3人以上必要である。通常はポスドク時のボス、博士課程での指導者、ポスドク時の共同研究者などである。推薦状は日本で考えられているよりもはるかに大きなインパクトを持ち、強力でない推薦状 (半ページ程度の形式的な手紙) は、むしろネガティブなインパクトさえもある。

3)独立してからの研究計画:実はこれがポスドクにとって最も難しい。多くの米国のラボでは、ポスドクでの最初の数本の論文は大抵8割方はボスの研究能力と発想に負うところが大きい。トップジャーナルに数本ファーストオーサーとして論文を発表している人でも自分ひとりで魅力的な研究計画を書ける人は少ない。そして、うまく書けたとしても多くのひとがポスドクでの仕事の延長線上の研究をしたいと書く。あるハーバードの教授はこれを、ポスドクの仕事の"unimaginative follow-up"と呼び、痛烈に批判している。

研究計画には Imagination が大切である。

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Ph.D.での仕事が結果的にあまり満足のいくレベルではなく、ポスドクでは全く違ったことをやりたいと考えるひとは少なくない。米国ではポスドクは 独立に向けての武者修行のステップと見なされるので、Ph.D.の時とは異なったラボ (多くの場合、別の大学) で研究をするのが普通である。従って、 Ph.D.と違った分野の研究をするのは全く問題ないし、むしろそうすべきである。しかし、ジョブ・インタビューでは「Ph.D.での仕事があまりおもしろくなかったので、ポスドクではもっとレベルの高いエキサイティングなことをやりたい」と (本心では思っていても) 口に出さない方がいい。

ジョブ・インタビューではどんなことであれネガティブなコメントは避けた方がよい。どのPIもネガティブな人を自分のラボに入れたいとは思わない。実験はうまくいかない時の方が多いので、そんなつらい時期を乗り越えられるポジティブな精神の持ち主を雇いたいと思うのが普通のリーダーであろう。

ラボのある建物に朝10時に入ってから夕方5時に出るまでは、昼食の時間も雑談の時間もすべて公式のジョブ・インタビューである。その間はポジティブに振る舞わなくてはならない (少なくともポジティブに振る舞う努力をしなくてはならない) 。これが学生ではなく、プロフェッショナルとしてのポスドクのとるべき行動である。

どんなに自分のPh.D.の仕事が退屈であると感じても、何か一つ良いところを見つけ、それを誇りを持って話そう。ポスドクで研究分野を変えるのに、自分の過去を否定する必要は全くない。新しいことに挑戦するのに情熱は必要だが、理由はいらない。むしろ、挑戦しない場合に言い訳が必要である。


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ポスドクのジョブインタビューで、非英語圏から特にアジアからの候補者は文化的な違いも影響し、Shyであるとか積極性に欠けるというようなマイナスの印象を与えてしまう行動をしばしば見かけるので、そのひとつを参考に紹介する。

典型的なポスドクのジョブインタビューの1日は次のようなスケジュールである。

10:00―研究室に到着、アシスタント(秘書)が候補者をPI (Tom) のオフィスに案内
10:00―11:00 Tom と1対1で面談 (インタビュー
11:00―11:30 PIが候補者をラボに案内し、研究室でポスドクKenと面談
11:30―12:00 Kenが候補者をセミナー室に案内。プレゼンテーションの準備
12:00―13:00 ラボメンバーの前でプレゼンテーションと質疑応答
13:00―14:00 ポスドクJeoとカフェテリアで昼食を取りつつ歓談
14:00―14:30 ラボに戻り、 Tom のコラボレーターTakaと面談
14:30―15:00 ラボで、大学院生Simoneと面談
15:00―15:30 ラボで、テクニシャンMingと面談
15:30―16:00 ポスドクThomasがカフェでコーヒーを飲みながら面談
16:00―16:30 ラボに戻り、ポスドクMaryと面談
16:30―17:00 Maryが候補者をTom のオフィスに案内し、そこでTomと締め括りの面談 (Wrap-up)


ジョブインタビューの結果は Wrap-upで知らされることもあるが、たいていは後日にEメールで通知される。

この中でもプレゼンテーション (ジョブトーク) は最も大きなウエートを持つジョブインタビューのクライマックスである。プレゼンテーションはたいてい小さなセミナー室で、インフォーマルな形式で机を囲み10人程度の聴衆に対してパワーポイントで行うことが多い。ここでは研究内容ももちろん大切であるが、プレゼンテーションの仕方が、その候補者の応募先のラボに対する情熱やコミットメントを印象づける重要な要素である。

そして犯してはならない重要なミスは、聴衆が机を囲み座っているからといって、自分も座ったままプレゼンテーションしては絶対にならないとういうことである。今まで座ったままプレゼンテーションした候補者を数人見たが、誰もジョブをオファーされていない。

プレゼンテーションとは情熱とコミットメントを示すところである。座っていてはそれらは滅多に伝わらない。さらに、10時から17時まで候補者はずっと評価されていることを忘れてはならない。情熱とコミットメントをボディーランゲージで示すことな簡単ではないが、少なくともそれらを示そうとする努力と誠意は必ず伝わり、相手にも自分にもポジティブなインパクトを与えるはずだ。

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スターバックスから見た、ハーバード大学医学部関連の病院の1つボストン小児病院。病院の正面にあるこのスターバックスで毎朝コーヒーを買うのが、日課です。
Children’s Hospital Boston & Harvard Medical School

今日はポスドクの候補者の面接でした。アメリカでのポスドクの候補者の面接は通常一日がかりです。私のラボでのパターンは、午前10時頃に候補者に来てもらい、オフィスで1時間ほどスモールトークを交えて話をします。その後、候補者をラボに案内し、ラボメンバーの一人と30分から1時間ほど話をしてもらいます(インディビジュアル・インタビュー)。その後セミナールームで、今までの研究内容(普通は博士課程で行った研究内容)を1時間ほどでプレゼンテーションしてもらいます。質疑応答を終えると、昼食を一緒しながら面接は続き、午後から残りのラボメンバー全員とインディビジュアル・インタビューをして、午後5時頃に再び私のオフィスで締めの面接を30分程します。そして、結果は数週間以内にメールで知らせると伝え面接が終了します。合否の決定は、ラボメンバー全員の意見と、推薦状を参考にして行います。
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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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